景気後退局面でもESG ETFの資産は堅調に推移

Read the English version published on June 1, 2020.

本稿はブルームバーグ インテリジェンスのアナリスト、Shaheen Contractor とEric Balchunasが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

大方のスマートベータ型ETFが、2020年1−3月期(第1四半期)の市場の下落局面で資金流入を減少させた一方で、ESGやバリュー型ETFは資産額を維持し、ESGを格好な長期投資とみるBIの見解を裏付けるものとなりました。2020年にはETFの新規上場件数は前年比で倍増するとみられ、競争の激化と手数料引き下げ圧力の高まりの中、低コストでありながら他とは一線を画した戦略を打ち出せるかがETF市場での勝敗を分ける鍵となるかもしれません。アクティブ運用型ETFの本数は増えており、新規ETFは取引開始直後から上昇が見込める可能性があります。

ESG ETFは資金流入の増加によって資産ベースが安定

新型コロナウイルスの影響によるドローダウン(下落率)にもかかわらず、ESGやバリュー型ETFの資産総額は860億ドル超で堅調に推移しています。ESG ETFへは160億ドル以上の資金流入が続き、安定した資産ベースに最も寄与して、相対的にアウトパフォームしました。低コストのETFは成長をけん引し続けると予測されます。ただし、資金流入増の主因の1つに、ブラックロックが自社ESG ETF(iSharesのESG MSCI USA ETFやESGUなど)を自社ポートフォリオモデルに移行していることがあり、市場における実際の需要増を反映していない可能性もあります。

資産額は、各シェアクラスの資産を合計して算出されます。ESG ETFでは、ESG要因を考慮し、ネガティブ・スクリーニングまたはジェンダーなどのテーマに基づいて投資します。

ESG、バリュー型ETFと資産額

資金フローの増加により北米と欧州の格差が解消

ESGとバリュー型ETFではこれまで欧州がリードしてきましたが、北米でも関心が高まり、その格差は縮小が続いています。1−3月期には北米ファンドへの資金フローが初めて欧州ファンドを上回り、北米の資産額は2019年から11%増加する一方、欧州では3%減少しました。どの地域でも競争と手数料引き下げ圧力は高まっています。景気後退の影響も相まって、より小規模で割高な戦略はアウトパフォームして十分な需要を引き付けない限り、市場から追いやられることになりかねません。ファンドの規模が小さいことと米国市場が過密状態にあることが投資家による解約の圧力を高める結果となっています。

市場はかなりの寡占状態となっており、大手のブラックロックやバンガード、インベスコの資産額を合計すると米国市場全体の60%を超え、欧州市場ではブラックロック、UBS、ソシエテ・ジェネラルの3社が70%を占めます。

ESGとバリュー型ETFのファンド所在地別資産額

足元のペースでは新規ETF設定本数が今年倍増する可能性

ESGとバリュー型ETFの設定は1−3月期に加速し、40本のファンドが上場またはリブランディングが実施されました。このペースが続けば、2020年の新規ファンド上場数は2019年からほぼ倍増することになります。低コスト構造の大手運用会社による手数料引き下げが今後も続くと思われ、2020年の新規ファンドの経費率中央値は0.23%が予想されます。2019年はアクティブ運用型ETFと複合テーマ型ETFが複数設定されたことで経費率が0.3%まで押し上げられたことは、小規模な複合テーマ型が直面する課題を浮き彫りにしています。2019年は経費率が急上昇すると同時に、ダイバーシティなどをテーマとした高コスト戦略の解約が相次ぎました。これらETFの手数料率は大半が0.6%を超えていました。市場が低コスト戦略にシフトする中、このような複雑で割高なテーマ型は資金を集めるのに苦戦するかもしれません。

新規ETF本数と経費率中央値(設定年別)

テーマ投資のアクティブ運用型ESG ETF-柔軟性もコストもアップ

足元の市場環境では、新規上場されるアクティブ運用型ETFに取引開始直後の上昇がみられる可能性があります。この2年間でアクティブ運用型ESG ETFの本数は増え続けており、1−3月期には5本が新たに上場されました。これらのETFは比較的柔軟な戦略を採用していますが、その分コストも上昇します。ますます競争が高まる市場で資産運用会社は差別化を図る中、いかに柔軟性を提供できるかが一段と重要になると言えるでしょう。低コスト構造の大手資産運用会社の存在が手数料引き下げ圧力を生じさせており、低コストのユニークな戦略が各社にとって成長の鍵を握ることになるかもしれません。このような新しいテーマ投資戦略は市場拡大の支えとなりうる一方で、分析上の課題を増やし、商品の多様化をさらに進めることなります。

アクティブ運用型ESG ETF戦略を提供する運用会社には、BMOグローバル・アセット・マネジメントやJPモルガンがあります。

アクティブ運用型ESG、バリュー型ETF