カジノに賭ける日本

本記事はDave McCombsが執筆し、ブルームバーグブリーフ・Quick Take の「カジノにかける日本」に初出掲載されたものです。

カジノを含めた統合型リゾートの整備を政府に促す法律(IR推進法)が2016年12月に成立したが、まだ疑問点は多い。どこにカジノが建設され、全国で何カ所になるのか、どういった企業が経営するのかはっきりするのは、17年に関連法が整備されてからことになりそうだ。

1. 日本初のカジノ、オープンはいつか

20年の東京五輪より前ということはないだろう。野村証券とCLSAは、23年に日本初のカジノがオープンすると予想。大阪府知事は24年までに開業するカジノリゾート施設を望んでいるとジャパンタイムズ紙は報じている。

2. 日本でビッグビジネスになるのか

ブラックジャックのテーブルやスロットマシンを幾つか並べただけの施設ではなく、高級ホテルやエンターテインメント、会議場、ショッピングセンターを備えた大型統合リゾート施設ができれば、雇用と観光産業にとって大きな追い風になる。これはシンガポールが立証済みだ。10年に2カ所のカジノをオープンしたシンがポールは、マカオとラスベガスに次ぐ世界3位のカジノ拠点となった。中国人を中心とする外国人観光客に依存しているマカオやシンガポールとは異なり、日本は人口が多く、1人当たりの所得も高い。

ラスベガス抜きマカオと競い合う規模に
CLSAが日本のカジノ収入を予想 (単位:10億ドル)

3. カジノ収入、日本での規模は

年50億ドル(約5600億円)から250億ドルまでさまざまな予想が示されている。マカオのカジノ収入は昨年、約280億ドルだった。フィッチ・レーティングスは2カ所のカジノリゾート施設ができるというシナリオで、50億-100億ドルと予想。野村証券の黄立舜アナリストは、3カ所のリゾート施設が認可されれば総収入は約100億ドルに達すると見込んでいる。CLSAは、2カ所の都市型統合リゾート施設と地方で10カ所のカジノがオープンするというシナリオに基づき、総収入が最終的に250億ドルに達する可能性があると推計している。

4. 参入狙う企業

世界中のカジノ運営大手がこぞって名乗り出ている。ラスベガス・サンズやメルコリゾート&エンターテインメント、ウィン・リゾーツ、MGMリゾーツ・インターナショナルはマカオやシンガポール、ラスベガスなどでの実績に基づき、提携する日本企業を探す計画を発表。国外のカジノにすでに出資しているパチンコ遊技機・パチスロ遊技機メーカーであるセガサミーホールディングス やコナミホールディングス、ユニバーサルエンターテインメントなどの日本企業が、提携または共同事業者として恩恵にあずかる可能性がある

5. 投資額

メルコのオーナー、ローレンス・ホー氏は、どんな代価を払ってでも日本でのビジネス機会を捉えたいと言明。MGMとサンズはそれぞれ、統合リゾート施設に約100億ドル投資する用意があると表明している。CLSAの試算は、2カ所の都市型統合リゾート施設について設備投資を1カ所につき80億ドル、地方の小規模カジノを1カ所につき20億ドルとの想定を基にしている。

6. 最も有力な候補地は

東京と横浜、大阪が有力候補だ。大都市だというのがその理由だ。CLSAは、まず手始めに東京と大阪、それに地方のリゾート地1カ所でカジノが建設されるとみている。大都市以外に目を向けるカジノ賛成派は、最も必要とされている地域に観光産業と土地開発を呼び込むメリットを指摘する。北海道や仙台、那覇、長崎、宮崎も候補地として挙げられている。

7. なぜこれまで日本にカジノがなかったのか

日本では年270億ドルほどの収入を生み出す人気のパチンコの他に、競馬や競輪、競艇、オートレースといった形の合法ギャンブルがすでに確立している。カジノ反対派の主張は、カジノはギャンブル依存症(パチンコでも大きな問題になっている)を助長するとともに、マネーロンダリング(資金洗浄)や組織犯罪にもつながり得るというものだ。

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