温室効果ガス排出量データで「ネットゼロ」目標に向けたレースが加速

Read the English version published on August 24, 2021.

本稿は、ブルームバーグ・エンタープライズ・データ・コンテンツ部門グローバルヘッドのBrad Foster、ブルームバーグ・エンタープライズ・データ部門プロダクトマネジャーのEnrique Neves-Martin、ブルームバーグ・サステナブル・ファイナンス・ソリューション部門グローバルヘッドのPatricia Torresが執筆しました。

世界中のあらゆる業界で、ESG投資とリスク管理の重要な要素として気候変動が注目を浴びるようになっています。投資とリスクの意思決定プロセスを支援するために、アセット・アロケーターや銀行は通常、財務情報、企業構造、サプライチェーン、業種セグメント、競合環境など、それぞれの企業に固有のデータや定性的情報を評価します。一方、気候変動という観点では、アナリストらは業界内だけでなく業種を超えて、炭素排出量削減においてリードしている企業と遅れを取っている企業とを見極めます。

例えば気候変動に関して、米国証券取引委員会(SEC)と気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の主導により、ますます大規模な規制団体が育ちつつあります。現行シナリオはどのようなものであり、気候変動リスクを軽減するために何ができ、炭素排出量の正確な測定と報告はその中でどのように位置付けられるのでしょうか。

投資の観点からの気候変動:GHGの測定とモデル化

気候変動リスクが与える影響は広範囲に及び、影響の種類も多様です。物理的には、海面上昇や異常気象パターンなどの増加により、企業の事業活動そのものが影響を受ける可能性があります。そして移行リスクには、消費者の嗜好の変化に加え、炭素排出量と気候変動リスク軽減を管理する新たな規制の導入などがあります。

GHG(温室効果ガス)排出量を測定・予想することは容易ではありません。定量的な情報の処理につきもののバイアスという問題に加え、データ収集と解釈が困難なためです。そうした問題の解決策の1つは、入手可能なベストデータを基に実証された手法を使って、できる限り現実的で信頼できる予想値を算出するということです。現時点では気候変動に関する報告を行っている企業は比較的少数で、サンプリングバイアスや報告バイアスの可能性は免れません。さらに、業種セクターによって化石燃料、エネルギー生産、エネルギー消費との関連性はそれぞれ本質的に異なります。分析手法は、業界内だけでなく、業界横断的に情報を把握しつつ、ニュアンスを配慮したものであるべきです。また、気候変動データの報告企業と非報告企業は異なるため、モデルパフォーマンスの評価は慎重に行う必要があります。すべての企業に影響を与える他の問題点としては、データの入手可能性(一部データが抜けている可能性もあります)、データの一貫性と信頼性、そして分析に影響する企業の過去の業績などが挙げられます。

炭素と企業に関するESG分析の枠組み

排出量データの精度を高めることで、資産運用会社や銀行はそれぞれの投融資ポートフォリオならびに事業全体における気候変動リスクの程度を測定することが可能となります。自社の排出量を測定し始め、その情報を一貫した方法で開示する企業は、目標を設定し、戦略を絞って実質ゼロ排出目標に向けて注力できるようになるでしょう。必須情報には、業種区分データ、財務データ、所在地、営業指標などがあります。新たな分野でパフォーマンスを評価するのは簡単ではありません。企業のカーボンフットプリントを推定し、排出量ネットゼロを実現するための社内努力の影響を測定できるよう、現実に即した大規模モデルから導き出した柔軟な分布を使用するのが最適の取り組み方法です。

ブルームバーグのアプローチ

データ分析の面では、ブルームバーグは環境・社会・ガバナンス(ESG)データを10年以上扱っており、定量的・定性的情報の両方を処理する方法を開発しています。例えば、ポートフォリオの移行リスクを測定する際の主な課題は、対象企業のカーボンフットプリントにあります。炭素排出量データの現状について最初に問うのは、企業がどれだけの情報を既に把握し、報告しているのかということです。

幅広いカバレッジー世界全体で5万社以上

ブルームバーグでは幅広い企業からESGデータを集めていますが、それでも炭素排出量を報告している企業は2019年時点で全体の約35%とまだそれほど多くはありません。ブルームバーグの予想値は、世界中の5万社を超える企業から成る幅広い業種を対象としています。ブルームバーグのモデルは幅広い企業データを活用し、企業のカーボンフットプリントの予想値を算出します。分布パーセンタイルは、炭素排出量データを開示していない企業を取り扱う際、柔軟性を提供します。また、「予防原則」の導入を可能とし、アナリストは炭素排出量を過小評価するのではなく過大評価して慎重を期しています。

800のデータポイントから構成される堅牢な定量モデル

ブルームバーグは、約800のデータポイントを組み込んだ予想モデルを開発し、モデル化手法を企業のGHG排出量予想に適用しています。このモデルでは、予想排出量は、企業活動と直接的な関係があるスコープ1のGHG排出量と、企業が購入する電力の発電によるスコープ2の排出量の双方を対象とします。

どの予想値にも、比較企業に基づいた独自の分布があり、予想値を算出する上で保守的なアプローチをとれるようになっています。ここでユーザーは結果を精査し、自分のカーボンフットプリント報告書にどの予想値を組み込むか選択できます。

ブルームバーグのGHG信頼スコア

ブルームバーグソリューションのもう1つの要素は「GHG信頼スコア」です。これは特定の企業のGHG排出量予想算出に利用可能なデータポイントの深度と関連度を測定するものです。前述の通り、分布はモデルが決定する比較企業を参照して作成されます。ここでは平均値ではなく、大きなパーセンタイル値を使うことにより、より保守的なアプローチとなっています。信頼スコアは、企業とその同業他社に関して開示されている直近データとヒストリカルデータに基づいた予想値の質を直接確認できます。

モデルを徹底検証

ブルームバーグのモデルは非常に大きな関連データセットを活用して予想値を算出し、徹底的に検証するため、精度と信頼性が重視されるうえ、急速に進化し続けるESG分野でより精度が向上してを提供します。

結論

ネットゼロ経済への移行の道筋を決定し、資金調達する上で、企業、規制当局、金融市場、投資家は重要な役割を果たしています。この一環として、GHG排出量予想値は、業界横断的な気候変動への取り組みを促し、国内外での炭素排出量削減努力の推進力となる情報を提供します。「Think local, act global(足元を考え、地球規模で行動せよ)」という考え方に則って、入手可能な中で最良の情報を収集し、低炭素の未来を支援することは、環境面にとってよいだけでなく、長年にわたり財務上の利益を生み出す可能性もあります。

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