Read the English version published on July 30, 2024.
本稿はブルームバーグ・インテリジェンスのシニアアナリストRob Barnettが執筆し、Alessio Mastrandreaが分析作業を担当しました。ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。
世界の風力発電設備による導入量は、2023年の約117ギガワット(GW)に対して24年には初めて約125GWとなり、記録を更新する見通しです。また、2025-26年では2桁の成長ペースを達成できるとブルームバーグ・インテリジェンス(BI)では考えています。今年の増設容量の半分以上は中国国内向けと見込まれ、同国最大の風力発電用タービンメーカーである金風科技(ゴールドウィンド)の売上高はコンセンサスに基づくと10%増加する見通しです。欧州のタービンメーカーであるヴェスタス・ウィンド・システムズの成長予想はやや高めが見込まれており、BIでは、大半の機器メーカーで25-26年の売上高がアナリスト予想を上振れする可能性があると見ています。鉄鋼価格の下落とタービン価格の上昇により、同業グループの利益はヴェスタスを筆頭に、大幅に回復すると思われます。
下半期の三つの鍵:世界の風力発電
重要な成長ドライバー
風力発電銘柄、欧米選挙を巡る懸念で市場全体とエネルギー同業他社をアンダーパフォーム
風力発電関連銘柄は、BIの風力発電テーマバスケットの中央値に位置する企業ベースで24年は約3%下落しました。これに対して、MSCIワールド・エネルギー・インデックスは6%、ブルームバーグのワールド・インデックスは10%それぞれ上昇しています。こうした銘柄のバリュエーション指標は、株価の下落および一部企業の利益見通しの暗さもあり、市場全体の数値を下回っています。
販売ペースの低迷、株価の押し下げ材料に
年初来から風力発電関連銘柄がブルームバーグ世界大型・中型株インデックスをアンダーパフォームしていますが、これは欧州と米国の選挙を巡る懸念に起因していると考えられます。しかし24年の急速な成長が見込まれる中で、1ー6月(上期)における風力タービン需要は、政府の政策支援による後押しもあり好調な滑り出しを見せました。政府のネットゼロ目標の一環として、石炭やその他の化石燃料に対する需要削減努力が進められている一方で、これらの成長ドライバーは、現時点ではあまり強気とは言えない24ー26年のタービン売上高成長率のコンセンサス予想の押し上げ要因になると思われます。
GEベルノバの株価は、IPO(新規株式公開)以降、BIの風力発電テーマバスケットの中央値に位置する銘柄を年初来でアウトパフォームしています。この背景には、同社の今年の収益性が改善するとの期待感があるようです。
BI風力発電テーマバスケットとBIワールド・インデックスの比較
市場全体に対して見劣りする風力発電企業のバリュエーション
風力発電関連銘柄のバリュエーション指標は、市場全体の指標に比べ見劣りする水準にあります。ブルームバーグのワールド・インデックスのEV(企業価値)/EBITDA(利払い・税金・ 減価償却・償却控除前利益)倍率は12倍となっているのに対して、ブルームバーグの風力発電テーマバスケットの中央値に位置する銘柄は9.3倍にとどまっています。ヴェスタスのバリュエーションは同業他社と比較すると割高のように見えますが(EV/EBITDA倍率は約12倍)、過去5年間の平均を約1標準偏差近く下回る水準まで低下しています。現在の水準は主に鉄鋼価格の下落とサプライチェーンの混乱に伴う増益期待の高まりによるものとBIでは考えています。
鉄鋼価格は22年3月のピーク時に比べて約50%下落している一方で、タービンメーカーは過去10年間での最高水準にあるタービン価格を維持しているため、一部の企業では24年のEBITDAがコンセンサス予想を上回る見込みです。
BI風力発電テーマバスケット:EV/EBITDA倍率
バリュエーション指標:風力発電用タービンメーカー同業者
ブレンド12カ月先EV/EBITDA倍率
パフォーマンス上位と下位:BI風力発電テーマバスケット
MRR <GO>機能でみた年初来パフォーマンス(5月31日時点)
風力発電市場の成長活性化に向け、ヴェスタス、金風科技などの競争激化
世界の風力発電の追加導入量は、昨年117GWまで回復した後、24年には125GWを上回るとみられ、米国の「インフレ抑制法」や欧州連合(EU)の「REPowerEU」計画などの優遇措置により、28年には約170GWへと急増する可能性があります。こうしたシナリオが実現すれば、ヴェスタス、金風科技だけでなく、同業他社の受注が大幅増となることも考えられます。
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。