世界のグリーンボンド発行額、過去最高のペースへ加速

Read the English version published on November 7, 2023.

世界のグリーンボンド発行額は主に各国政府による債券発行で急増し、今年は過去最高に達する見込みです。

ブルームバーグがまとめたデータによると、サステナビリティ債として最大のカテゴリーとなるグリーンボンドの発行額は9月に439億ドル(約6兆5600億円)に達しました。今年1-9月の累積発行額は4229億7000万ドルとなりました。

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シティグループのサステナブル債券資本市場部のグローバル統括、Philip Brown氏によると、グリーンボンド市場の中でも、国際機関、各国政府、および政府機関による発行額が年々大幅な伸びを示しています。Brown氏は「今年1―9月における市場全体の成長は主に、公的セクター、特に政府によるところが大きい」と述べています。

発行額が特に増えているのが欧州で、グリーンボンド市場最大の引受業者、BNPパリバによれば、欧州のグリーンボンド発行額は昨年の発行額を33%上回るペースで増えています。これは、気候変動に配慮したグリーンボンド発行額が、同行の年末の予想発行額6000億ドルに今までになく近づいていることを意味します。

また、BNPで米州のサステナブル金融資本市場部門を統括するAnne van Riel氏は、米国のインフレ抑制法によって多額の投資が誘発されたと考えています。そうした投資資金の一部は公社債市場から調達されることになります。

投資家にとって、環境的に持続可能な経済活動の分類枠組みを提供する欧州連合(EU)のタクソノミーも、けん引要因です。

van Riel氏は、「ラベル付けされた銘柄に対する欧州投資家からの需要が急増しています。グリーンラベルの付いた銘柄をESGファンドに組み入れることができますし、ESGファンドの内容は今まで以上に明確になっているためです」と述べた上で、「発行体はその需要を満たすためにグリーンラベルの付いた債券を発行しています」と付け加えています。

さらに年初来、グリーンボンド、サステナブルボンド、ソーシャルボンド、SLB(サステナビリティ・リンク・ボンド)の発行件数は21年の最高記録を更新しています。ブルームバーグがまとめたデータによると、今年1ー9月の累計発行件数は2599件、累計発行額は7299億ドルに達しています。ESG債の最大の発行体は世界銀行グループです。

2022年には社債市場全体が大きな打撃を受けましたが、今年に入って市場は反転しています。van Riel氏によれば、この反発がESG債市場を押し上げています。

米国資産運用会社NuveenでESG、インパクト、グローバル債券部門を統括するStephen Liberatore氏は、「昨年はフローの面で厳しい年となりましたが、サステナブル商品からの資金流出は非サステナブル商品ほどではありませんでした」とし、「今年は非サステナブル商品に比べてサステナブル商品への追加資金流入がみられます」と述べています。

BNPは今後もグリーンボンドの発行は増え続けるとみています。その予想は現実のものとなっており、van Riel氏は「これは氷山の一角にすぎません」と述べています。

その例として再生可能エネルギー、電気自動車の電池製造、将来のすべての新再生可能エネルギーに対応する送電線への投資などを挙げ、「これらは実際に今後も続く大きなトレンドなのです」との見解を示しています。

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