Read the English version published on June 3, 2025.
セルサイドの業務において、ここ数十年でトレーディングフロアほど大きな変化を遂げた分野はほとんどありません。こうした変化の背景を捉えるため、最も大きな変化が生じた「取引の執行手法」に着目して見ていきます。業界はどのように進化し、投資銀行は進行中の進化の過程で、次のステップに向けてどのようなテクノロジーを活用しているのでしょうか。
プロダクトについて
ディールメイキング(取引形成)テクノロジーの台頭
バンキング業務におけるデジタル化は、1980年代から1990年代にかけて飛躍的に進展しました。この期間、投資銀行は口座や取引の管理に電子システムを導入し始め、手作業や紙ベースのプロセスへの依存を減らしました。
2000年代初頭には、デジタル化がさらに進み、取引は電子的な構造へと移行しました。これにより効率性が向上し、より迅速で遠隔での取引が可能となり、相対での取引の必要性が減りました。同期間には、主に以下のような進歩が見られました。
- アルゴリズム取引の台頭により、トレーダーは出来高、価格、時間など幅広い変数に基づいて、事前にプログラムされた指示どおりに取引を行えるようになりました。
- データ主導のデジタル自動化は、取引成立のスピードと取引量を大幅に向上させた一方で、その過程に潜む人的エラーのリスクの軽減にも貢献しました。
自動化の普及に伴い、投資家とそのカウンターパーティは、利用可能なデータ量の増加や常に進化するテクノロジーを、自社の競争優位に活かすための新手法を模索するようになりました。そのような進展の一つに、高頻度取引(HFT)があげられます。それは、高度なデジタルネットワークと高性能コンピューターを活用し、取引所における取引執行の迅速化を促進するものでした。
一方で債券トレーダーも、業務のスピードと効率性を高めるための技術的能力を向上させてきました。しかし、一部の取引は未だ買い手と売り手の個別のやり取りに依存しています。
最近では、その状況が変わりつつあります。人工知能(AI)と高度なソフトウエアの登場で、投資銀行は蓄積が進む過去の取引データのプールの中から、相関性の高い取引を迅速に見つけ出し、クオートの算出が容易にできるようになりました。さらに、特定の基準を満たす流動性の高い取引が自動化できるようになったことで、トレーダーは定型業務から解放されました。その結果、より専門性の高い知識を必要とする、より付加価値の高い取引に集中できるようになりました。
加えてテクノロジーの進化は、セルサイドによる迅速で効率的な取引を可能にし、法令遵守のためのワークフローにも好影響を与えました。2000年代後半の世界的金融危機をきっかけに投資銀行業務を規制する枠組みが拡大する中で、ブルームバーグは、投資銀行が金融規制当局の要件を満たすために必要なデータへのアクセスおよび管理を可能にするソリューションを開発してきました。
新たな段階におけるセルサイド取引の執行
過去20年間の急速な進歩を経て、私たちは再び、テクノロジーがディールメイキング(取引形成・価格提示)を変革させる重要な局面を迎えています。ブルームバーグのセルサイド・エグゼキューション責任者であるDan Tsouは、「テクノロジーは今日、セルサイド取引を新たな段階へと導きました。これは、新たに直面する一連の課題が重なり合った結果です」と述べています。
こうした課題の中でも、Tsouが特に指摘するのは、財務難に備えた資本要件の強化など、ますます複雑化し、頻繁に変更される規制要件です。
それと同時に、バイサイドのトレーダーは業務の多様化を進めており、自動化を活用して効率性の向上を図り、より多くのアセットクラスを取引するようになっています。結果的にセルサイドには、これまで以上に複雑な注文を、迅速かつ大量に約定させるというプレッシャーがかかっています。
「遵守義務を伴う規制変更とリソース面での制約は、裁量的支出の大幅な削減を伴う一方、技術革新によって必要となるプロジェクト数の増加は避けられず、企業はより少ないリソースでより多くの成果を達成することを余儀なくされています」とTsouは述べています。
取引の合理化、正確性の維持
上記の目標を達成するために必要となるレベルにカスタマイズ化を推進し、社内システムと外部データ・モデル間の相互運用性を実現することは容易ではありません。「投資銀行による裁量的支出が抑制される中で、テクノロジーはかつてないほど急速に変化しています。現在投資銀行が直面する課題は、テクノロジー面での収益機会、競争の激化、複雑性、および需要拡大のうねりの中で、いかにして業績拡大に必要な能力を身につけるかということです」とTsouは指摘しています。
これは、投資銀行が執行プロセスを合理化し、取引を加速し、より正確な価格設定を提供できるソリューションを取り入れることで実現することができます。
その意味で、2023年10月にブルームバーグが買収したブロードウェイ・テクノロジーによって、トレーディング・パフォーマンスの向上を支える新たなテクノロジーおよび、ブルームバーグのセルサイド向けプロダクトへのモジュール型アクセスが追加提供されるようになりました。ブルームバーグのセルサイド向けオファーは、コロケーションサービスによるシステムパフォーマンスの高速化および、複合的な取引システム全体にわたる執行ワークフローの合理化の両面で投資銀行に高い柔軟性を提供しています。
同テクノロジーレイヤーは、トレーディング・ソリューションと、APIベースのオープンアーキテクチャによる高い接続性の組み合わせとなっており、投資銀行のテクノロジースタックをさらに将来の変化に対応可能にするための柔軟性と強固な基盤を提供します。
その結果、投資銀行は業務の効率化をさらに進めようとしています。AIに基づくモデルや自動化プロセスを活かすことで、投資銀行は自社の取引データを分析・活用し、将来の取引への活用、より正確な価格設定、モニタリング対象となる市場の拡大、可能な限り低コストでの執行を実現しようとしています。
投資銀行はさらに、自社システム外から得たデータで情報を補完し、競合他社に対する優位性を確保するために、市場やリスクの全体像の把握に努めています。
ブルームバーグ・トレードEMS(TEMS)は、ブルームバーグの従来の「購入して利用する」モデルから、より柔軟な『購入して構築する(Buy-and-Build)』アプローチへの転換を意味します」と、ブルームバーグ・トレードEMS(TEMS)のEMEA責任者であるShabd Swarupは説明しています。「これにより、投資銀行は独自のトレーディング戦略と業務ニーズに合わせて、データ、テクノロジー、インフラをカスタマイズして組み合わせることができます」これらの新機能の中核となるのは、高度なアプリケーション集約およびワークフローエンジンであるThe Tocです。The Tocを活用することで、銀行は独自のデータとモデルを外部の情報源やテクノロジーとシームレスに統合し、集約されたトレーディング環境を構築することができます。
この拡張性が高く高性能な分散コンピューティングプロダクトは、20年以上にわたり大手金融機関をサポートし、独自のアルゴリズムを、より広範なデータセットや分析モデルの統合を可能にしてきました。そして今、ブルームバーグトレードEMS(TEMS)を導入することで、金融機関はThe Tocとブルームバーグの包括的なツールやサービスとの併用により、取引インフラ全体の柔軟性、相互運用性、パフォーマンスを向上させることができます。
現在は債券執行管理に利用されていますが、基盤となるテクノロジーは注文管理やリスク管理など、セルサイドの他の重要な機能にも拡張できるように設計されており、取引ライフサイクル全体にわたるより広範な統合を可能にします。これらのソリューションが市場と共に進化するにつれて、セルサイドチーム全体でさらなる価値を引き出す機会が生まれることでしょう。
ブルームバーグ・トレードEMS(TEMS)の詳細については、こちらをご参照ください。
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。