LIBOR廃止への準備を進める金融機関、一部期限の延長期待も

Read the English version, published on October 9, 2020.

本稿はAlexandra Harrisが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)による混乱が市場を揺さぶるなか、多くの金融機関がLIBOR(ロンドン銀行間取引金利)廃止に向けたスケジュールの延期を希望または期待していることが、ここ数カ月に実施されたアンケート調査で分かりました。ただし大半の金融機関は、問題のLIBOR廃止が予定される2021年末に向けて順調に準備を進めている模様です。

経営コンサルティング会社Sia Partnersが70社以上の市場参加者を対象に実施したアンケート調査によれば、回答者の大半がLIBOR移行に向けて設定された、いくつかの期限の延期を希望していると回答しました。LIBORは現在、数兆ドルに上る金融商品のベンチマークとして使用されています。延期の可能性がある分野として挙げられたものの1つは、清算機関LCHクリアネットで10月に予定されたスワップ取引の割引方法の変更です。一方で、LIBORを来年末に完全に廃止する計画に関しては、延期を希望するとした回答者は全体の4分の1未満でした。

Sia Partnersの Bradley Ziffオペレーティング・パートナーとChris Zachodzkiマネジャーは「この結果で問題の複雑さが浮き彫りになった。金融機関は期限を守るために労力を費やしてきており、もっと猶予が与えられるなら構わないと思うだろうが、組織内では異なる見方もあるかもしれない」と述べています。

2021年末のLIBOR廃止期限に向けて、監督当局はスケジュールを変更していません。米国のLIBOR移行を監督するために米連邦準備制度理事会(FRB)の下に設置された米代替参照金利委員会(ARRC)は、LIBOR運営機関である英金融行為規制機構(FCA)による何らかの異なる発表がない限り、LIBORは来年6月までに廃止されることを市場参加者は想定すべきとしています。

ARRCは、ドル市場におけるLIBORの代替金利として生み出されたSOFR(担保付翌日物調達金利)導入を推進する中、先月、米国でのLIBOR移行に向けた工程表を市場参加者向けの包括的な推奨事項の一環で発表しました。

調査によると、回答者の大半は、課題はあるものの運用面でも技術面でも順調に対応が進んでいると回答しました。ただし、比較的小規模な数社は移行スケジュールは「厳しく、対応が難しい」としています。米国外の銀行およびシステム上重要なグローバル金融機関のうち、LIBOR廃止日に何らかの猶予がほしいと回答したのは約15%でした。

この調査回答者の過半数は、政策立案者が、リスクフリーレートのコンポーネント(例えば、信用力に反応するスプレッドやフォワードルッキングな期間構造など)の開発を検討するのであれば、一部の企業にとって移行準備に役立つとしています。回答者の4分の1は、これらのコンポーネントのうち1つをLIBOR移行の成功に「不可欠な要因」とみなしました。

調査の回答者には、システム上重要な最大手の銀行から地方の金融機関、資産運用会社、保険会社までさまざまなタイプが含まれます。

その他の主な調査結果:

  • 組織の規模や複雑性にかかわらず、回答者の大半は、新型コロナウイルスのパンデミックによって「重大な新しい課題」が生じたとはみていませんでした。回答者は「過去の課題は大半が現在でも課題であるが、対応に残された時間は少なくとも3カ月短くなっている」と述べています。
  • 回答者のいずれの機関タイプでも、LIBOR移行予算に変更はなく、また、ガバナンスと監督を配慮する点にも変化はありませんでした。ただし、比較的小規模な金融機関は例外的に「移行のための一部のワークストリームへの影響の長期化とリソース再配分の長期化」を挙げていました。
  • 顧客やカウンターパーティ関連の対応をめぐる複雑な問題の解決が「最も厄介な課題」とされました。
  • 回答者は、顧客向け新商品の見直しやカスタム化のプロセスを開始しなくてはならないことも含め、課題は山積していると考えています。
  • また、顧客側で実施する運用・システム・インフラ関連の対応について、その進捗を測るための「デューデリジェンス」も期待するほど積極的には実施されていない点も課題として挙げられました。
  • 数多くの顧客タイプにおいて、移行プロセスへの投資に向けた意欲や資金配分の決定が欠如していただけでなく、少数の金融機関では、リスク・エクスポージャーを顧客や文書と関連させて、手仕舞いが必要なLIBOR参照エクスポージャーの全社的なポートフォリオへの影響を検討するプロセスもまだ開始されていませんでした。
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