ベンチマークのカバレッジを超短期債券に拡大

Read the English version published on August 2, 2024.

この記事は、ブルームバーグのクオンツ・リサーチャー、Amine Khanjarが執筆しました。

ブルームバーグの旗艦債券インデックス群は、過去を通じて、組入債券の償還期限が1年を切った時点で直ちに売却扱いとしてきました。これら超短期の債券はほとんど金利変動の影響を受けず、迅速な現金へのアクセスを求める保守的な投資家にとって、一般的に魅力的な投資選択肢だと捉えられています。これらの債券の過去のリターンを検証すると、傾斜が上向きの「典型的」イールドカーブ環境において、マネーマーケットの口座よりは高く、伝統的短期債券よりも低い水準となっています。

より最近の傾向としては、各国中央銀行が22年および23年に積極的に金融引き締めを行い、過去2年間にわたり世界的な逆イールドカーブ状況が続いたことで、投資家は直近の相対的なアウトパフォーマンスと足元の魅力的なリスクリターン・プロファイルを踏まえ、超短期証券にますます目を向けるようになってきました。その結果、ブルームバーグは満期保有債券インデックスと満期0-1年インデックスという2つの新たなインデックスファミリーを立ち上げました。

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満期保有債券インデックス

新たに発表された満期保有(HTM)インデックス内銘柄の組入および売却条件は、証券の満期が1年未満であること以外、その他の旗艦インデックス群と同様です。旗艦債券インデックス群においては、組入銘柄の償還期限が1年未満になるとすぐに売却扱いとしていますが、HTMインデックスは償還期限を迎えるまで銘柄を保有とします。そのため、全体的なデュレーションが短縮されるだけでなく、保有銘柄の変更/取引コストの負担も軽減されます。過去において、特定の1カ月間に旗艦インデックス群から除外された債券銘柄の平均3分の2は、満期が1年未満となった債券でした。

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図表2は、新規設定されたHTM(満期まで保有)インデックス群とそれぞれに対応する旗艦インデックス群との時価、スプレッド、デュレーション、パフォーマンスの違いを、双方の時系列データが存在する期間に限って示したものです。

グローバル国債インデックス(ヘッジあり)HTM版の時価は、2024年6月28日時点で、対応する旗艦グローバル国債インデックスを13%(約4兆ドル、約587兆円)上回りました。デュレーションが9カ月短いことで、過去12年の年間ボラティリティは6%ほど低くなっています。これら2つのインデックスの総合リターンは、サンプルの前半期にはアンダーパフォームしていた期間がありましたが、2021年後半移行はアウトパフォームし、2013年以来ほぼ同じとなっています(-1%)。世界的なインフレ率上昇に対応して各国中銀が金利引き締めに動いたことで、大半の先進国市場では逆イールドカーブの状態となりました。図表3が示す通り、インデックスのHTM版は、その期間中に約2%アウトパフォームしました。

米国とユーロ圏の総合インデックスのHTM版の時価は、2024年6月28日時点で、対応する旗艦インデックスを11%上回りました。それぞれのデュレーションは双方とも6カ月短縮されました。

同様に、サンプル期間全体にわたる総合リターンは、対応する残存期間1年以上インデックスの2016-24年のサンプル期間全体にわたるリターンと比較でき、2022年以来、米国の総合およびユーロ圏総合HTMインデックスはそれぞれ1.4%と1.5%のアウトパフォームとなっています。

満期0-1年債券インデックス

新たに発表された、満期0-1年債券インデックスは、満期まで1年以上という旗艦インデックス群の適正ルールを満たさなくなったために除外された銘柄から構成されています。この新たなインデックスファミリーは毎月リバランスされ、償還期限まで組み入れ債券を「保有」とします。ある時点において、0-1年インデックスの組入銘柄は、満期保有インデックスとそれに対応する満期まで1年以上の旗艦インデックスとの間で異なる銘柄と定義されます。

超短期デュレーション債は、安全性、流動性、リターンの魅力ある組み合わせを提供し、よくバランスのとれたポートフォリオの貴重な組み入れ部分となります。これらはリスクを伴わないわけではありませんが、金利の変動からはほとんど影響を受けず、非常に短期のデュレーションであることから、資本の保全と短期的な金融ニーズの管理を求める投資家にとって魅力ある選択肢を提供します。

図表5は、新たに立ち上げた満期0-1年債券インデックスファミリーの時価、分析、パフォーマンスを示しています。

米国債/クレジット0-1年の時価は現在約3兆ドルとなっています。うち、78%は超短期デュレーションの国債と政府関連債券で、残り22%は投資適格社債です。16年以来の平均年率リターンは2%で、年間ボラティリティーは56ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)です。平均デュレーションは約6カ月となっています。

図表6を見ると、同インデックスのリターンは、予想通り、中銀が設定する実勢短期借入金利と緊密に連動していることがわかります。同インデックスのリターンは、FF金利が約2%だった2016-19年の期間は中程度、コロナ禍に対応して金利がゼロに設定された2020年から2022年初めにかけては横ばいでした。最も最近では、連邦準備制度理事会(FRB)が積極的な金融引き締めに動いたため、同インデックスの平均リターンは約4.3%となりました。

一方、ユーロ圏総合0-1年インデックスの時価は2024年6月28日時点で1.6兆ユーロでした。そのうち66%が超短期デュレーション国債および政府関連債券、33%が投資適格ユーロ社債でした。2013年後半以来の平均年率リターンは33bp、年間ボラティリティーは46bpでした。

図表7は、ユーロ総合0-1年インデックスの似たようなパフォーマンスパターンを示しています。同インデックスのリターンは、ユーロ圏で短期借入金利がマイナスだった2017-22年の期間にはマイナスでした。最も最近では、欧州中央銀行も同様に金融政策を引き締めているため、過去2年間の平均リターンは約2.4%となっています。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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