欧州の銀行、ポストコロナの在宅勤務を本格的に検討

Read the English version, published on October 9, 2020.

この記事はSteven AronsとRuben Munstermanが執筆し、ブルームバーグ・ターミナルに最初に掲載されました。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が収束した後、在宅勤務はいったいどの程度可能になるでしょうか。勤務先が欧州の銀行であれば、思った以上に在宅勤務ができるかもしれません。

長引く在宅勤務の危険性を警告する米金融企業の経営幹部もいますが、欧州では複数の大手銀行がパンデミックで学んだ経験を基にコストを低減し、社員のワークライフ・バランスを改善する方法を真剣に検討し始めています。甚大な混乱に直面した銀行は、オフィスビルの近代化が始まって以来ほぼ初めて、企業文化を変えようとしているのです。

欧州での先駆者はオランダで、同国の大手銀行はパンデミック後も約半数の社員が在宅勤務になると予測しています。イタリアではUniCredit SpAがコロナ禍後も業務の40%を在宅勤務とする計画で、一方スイスのUBS Group AGは、社員の勤務時間の約3分の1が在宅勤務になる可能性があるとみています。

オフィスよ、さらば

Urban Land Instituteのテクノロジー&イノベーション協議会(Technology & Innovation Council)で共同議長を務めるDror Poleg氏は、「これはおそらくオフィスライフにとって1世紀に1度という劇的な変化で、少なくとも大都市が金融地区に高層ビルを建設し始めて以来の変化」とみており、「銀行は常にコスト削減の方法を模索してきましたが、在宅勤務はコスト削減につながるため、それを採用しない手はないでしょう」との見解を示しています。

特に米国銀行に比べて収益力でずっと後れをとってきた欧州銀行にとっては、予想外のチャンスがもたらされています。JPモルガン・チェースやブラックロックなどウォール街の巨大企業は企業文化の喪失を警告していますが、欧州では既にオフィススペースを圧縮し始めている銀行もあります。

最近開催されたブルームバーグのイベントで、米不動産会社CBREの占有者リサーチ責任者Julie Whelan氏は「世界金融危機以来、効率改善に注力してきた銀行や金融機関は、テレワークを拡大することの影響の分析に今まで以上に関心を示すでしょう。テレワークの拡大で効率改善を次のレベルに引き上げられる可能性があるためです」と述べています。

オランダ第2の規模を持つRabobankでは、将来的に社員の在宅勤務時間はおそらく平均40〜50%となり、その程度には「大きな幅があり」、個人の役割に「左右される部分が大きいでしょう」と同社の広報担当Margo van Wijgerden氏は述べています。同行はどのタイプの社員にとってどの形態が最適かをパイロット・グループを使って実験する予定です。

企業文化と生産性

ING Groep NVも同様の将来を見据えています。同社の広報担当Marc Smulders氏は、「将来的には、テレワークが可能な業務分野であれば勤務時間の約50%はテレワークになると予想しています」と述べています。

将来的な在宅勤務の程度に差があったとしても、テレワークに向かう全体的なトレンドは、銀行の経営トップと一般社員の双方が在宅勤務に対する見方を変化させていることによって支えられています。4月と5月にドイツ銀行が行った社員サーベイでは80%近くの社員が少なくとも週に1回は在宅勤務を希望すると回答しています。

テレワークへのシフトにとってテクノロジー投資は欠かせないもので、銀行は社員間や顧客とのデジタルでのコミュニケーションを可能にするための投資を進めています。

ただしオフィスは、特に新入社員にとってやる気や企業文化を維持するという重要な役割を果たすことから、オフィスを完全に廃止しようとする銀行はおそらくないでしょう。JPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)は、テレワークがあまりにも長期間続けばやがては社員の生産性は低下すると警告しています。また、ドイツ銀行のChristian Sewing最高経営責任者(CEO)は月曜にインタビューに答え、新入社員が成長するためには先輩社員とオフィススペースを共有する必要があると述べました。

その一方でドイツ銀行は最近、将来必要なオフィススペースが減ることを見越して、欧州銀行大手としては初めてオフィススペースと経費の削減に着手しました。

在宅勤務を取り入れた新しい勤務状況が現実となれば、オフィス設計も変わる可能性があります。ABN Amro Bank NVの広報担当者によれば、同行はオフィスを個人業務の場でなく、ミーティングやクリエーティブなセッションなど、社員間のコミュニケーションを促進する場に変える方針です。

Urban Land InstituteのPoleg氏は最近のイベントで、「未来のオフィスは場所というよりも、各従業員が手元の業務を遂行するにあたり、さまざまな場所へアクセスするためのネットワークへと変容を遂げるでしょう。例えば、ポッドキャストの録音、顧客への対応、集中した作業、学習、同僚とのコラボレーションといった業務で、その大半は在宅では行われないでしょう」と述べています。