LIBOR改革に新たな課題

本稿はEdmund LeeとVicky Chengの支援により執筆され、ブルームバーグ プロフェッショナル サービスに掲載されました。英語原文はこちらから。

現存するデリバティブポジションの80%がLIBORをベンチマークとしていると推定されています。LIBOR廃止にともなう移行計画は相互依存性が強く長い期間が必要なため、その準備は複雑な作業となっています。

重要なポイントは、この改革の本質を理解した上で市場の関心を喚起し、移行を支えるシステムを拡充することです。このプロセスについて、規模が大きな先進国市場と比較的小さな地域市場では違いが見られるようです。そしてそれぞれの地域にある企業規模に応じて違いが増幅されています。アジアでは次の2つの点に関心が集まっています。

  • 米国および欧州におけるベンチマーク改革の状況。
  • アジア市場におけるベンチマーク金利の変更とそれに関連する規制、およびアジア各国の規制当局が欧米の指標移行を自国に導入する際の対応の違い。

ブルームバーグは先日アジア各地でフォーラムを開催し、事業会社、バイサイド・セルサイド金融機関、各国規制当局、ISDAなど金融市場関係者の財務部門トップが参加しました。議論の中心はIBOR移行改革の見通しと長期にわたる移行期間がもたらす問題点で、特に以下の3点が懸念の対象でした

  • 流動性リスク
  • ヘッジ会計への影響
  • 国により異なる対応とベンチマークのミスマッチ

流動性リスク

移行の先行きが不透明であることから、幅広い金融商品についてそのリスク管理が問題となっています。フォールバック(代替策)に関心が集まっていますが、現行のベンチマーク金利が廃止される2020年以降についてまだ明確な取り決めはありません。そうした中、代替指標に十分な流動性が備わるかどうかが懸念されています。また、代替指標を参照する商品の流動性や、移行に必要なツールやシステムについて市場参加者の準備が整っているかどうかも懸念されています。

バックテストのデータや将来予測モデルを使って、5年から10年の実績データの蓄積や証拠金モデルの開発を行えば、移行やリスク管理にまつわる問題点の解決に役立つでしょう。市場で一般的な長いデュレーションのエクスポージャーを扱う金融機関は、コンベクシティの調整が必要になる可能性もあります。

ヘッジ会計と損益への影響

既存の金融契約が使用している前提は、契約が更新される際にはもはや成立しなくなっている可能性があります。その見通しがたたない上に、ベンチマーク金利の変更から生じる損失を契約のどちらの当事者が負担するかも決まっていません。

移行期間中の既存契約の取り扱いに関するガイドラインもできていません。多くの二者間契約の改定を効率よく行うために必要な事務処理能力についても多くの金融機関が懸念しています。

例えば年金基金や保険会社は、現在LIBORにリンクしたカーブを使って負債の割引を行っていますが、ヘッジ会計への影響は計り知れないと言います。LIBORが廃止された場合、あるいは複数のIBORベースのベンチマーク金利が使用されることになった場合、負債に関する業界ルールを定めるためには規制当局のガイダンスが必要であると考えています。

通貨による差異

国際スワップ・デリバティブズ協会(ISDA)は、フォールバックの考え方が通貨によって異なる旨を明らかにしており、これをいかに契約に反映させるかは契約当事者が判断すべきとしています。アジア各国の規制当局がベンチマーク金利改革の次のステップを検討する中で、国によってその内容に違いが出るかもしれないという新たな問題が浮上しています。これによりクロスカレンシースワップでミスマッチが発生し、リスク管理実務に影響が出る恐れがあります。例えばHIBORおよびその主要通貨へのリンクについては多くの市場参加者がエクスポージャーを保有していることから、その先行きが注目されています。

各金融機関は規制に依存しない形で自社のワークフローシステムを改修する必要があります。国によりベンチマーク金利の取り扱いに差が出る可能性を十分に考慮した上で、為替リスクヘッジ戦略の再評価が必要です。

ソリューションを練る

アジア市場ではドル調達へのエクスポージャーが非常に大きいことから、間近に迫った欧州および米国のIBOR移行が構造的かつ制度的な問題をもたらします。

全てのステークホルダーと市場参加者に有効なソリューションを構築するためには、情報共有が大変重要な役割を果たします。バイサイドとセルサイドが協力して、ベンチマーク金利移行に対応する戦略を策定することが求められます。

ISDAは、改革を円滑に進めることを目的としてコンサルテーションペーパーを公表し、全ての当事者に対して2018年10月12日までにコメントを提出するよう要請しています。あらゆるステークホルダーから十分なコメントが寄せられない場合には、移行過程が規模の大きい金融機関寄りのものになってしまう恐れがあります。

中央銀行、各国規制当局、大手金融機関がより緊密に連携して、懸念材料をリストアップし、指標改革対応戦略を策定することを望む声が高まっています。グローバル金融機関のアジアオフィスに対しても、地域特有の問題について本社に説明することが望まれます。

さまざまな通貨のフォールバックが検討されている中でベンチマーク金利改革を円滑に進めるためには、強固なデータモデリング、ダイナミックな通貨シナリオ、そしてリスク管理のためのバックテストデータが大変重要です。移行のためのガイドラインがまとまらない中で考えられるシナリオを描きリスク軽減を図るためには、さまざまな市場やアセットクラスをカバーする分析と、それを強化するために必要なデータやツールを提供するサードパーティーのソリューションが求められています。

担保付翌日物調達金利(SOFR)とその分析に関しては、ブルームバーグターミナル上でSOFR<GO>と入力してください。