普及見込まれる電気自動車、2040年までに5億3000万台に-QuickTake

この記事はJohn Lippertが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

全世界で、自動車メーカーと各国政府は電気自動車に大きく賭けている。気候変動を抑える計画は、より多くの炭素燃焼を動力とする自動車を道路から排除することに依拠している。予想される変化は巨大だ。ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス(BNEF)の推定では、2040年までに5億3000万台の電気自動車が使用されるようになる見通しである。

ただ1つ問題がある。現時点では、電気自動車は普及するには程遠い状況にある。17年には、全世界の販売台数の約1%を占めるのみだった。良い材料は何だろうか。急速に値下がりしており、1回の充電で走行できる距離が延びている。それでも、今後、現在のガソリンから未来の電気へと移行する旅が、政府の号令ではなく消費者の要望によってどのくらい速く進むかは未知数である。

現状

この移行プロセスを加速させるために、ますます多くの国が内燃エンジンを搭載した新車の販売を終了する目標期限を設定し始めている。ノルウェーの目標は25年だ。フランスと英国は期限を40年に設定している。ドイツと中国、インドも同じような施策を講じることを明らかにしている。中国政府の介入は19年に始まる見通しであり、その時点で、自動車メーカーは徐々に引き上げられる電気自動車の生産目標を満たすか、競合企業からクレジットを買う必要が生じることになる。

自動車メーカーは、このような動きの意味合いを理解しつつある。フォルクスワーゲン(VW)は30年までに同社の全モデルの電気バージョンとそのバッテリーを生産するために、700億ユーロを投資する計画を発表した。ゼネラル・モーターズ(GM)は23年までに20の完全電気式のモデルを開発する計画だ。ボルボは19年に、化石燃料だけで走行する自動車を段階的に廃止し始める予定である。

イーロン・マスク氏が創業した電気自動車メーカーであるテスラは、17年半ばに大量生産に向けて踏み出し、ミッドマーケット向けのセダン「モデル3」初の納車を果たした。長距離用バッテリーにアップグレードして航続距離を延ばした「ロングレンジ」のモデル3は1回の充電で310マイル(約500キロメートル)を走行でき、ラグジュアリータイプ以外の電気自動車で初めてガソリン駆動の自動車に匹敵する航続距離を実現することになる。

背景

米国で生産された最初の実用的な電気自動車がデビューしたのは1891年であった。1900年には、米国の自動車の約3分の1が電気式であった。しかし、安価な石油とヘンリー・フォードのモデルTが出現し、そのコストは同等の電気自動車の価格の約3分の1であったので、内燃エンジンの優位が決定的となった。

それ以来、電気自動車への関心は失速し、再び注目を集め始めたのは、1990年代にカリフォルニア州大気資源局(CARB)が、スモッグ対策として自動車メーカーに対して低排出自動車を提供する義務を段階的に導入し始めたときであった。GMは電気自動車を試験していたが、2000年にトヨタ自動車がガソリンと電気のハイブリッド車であるプリウスを米国に導入した後、この実験を中止した。テスラは、電気自動車の「環境にやさしくヘルシー」というイメージをスピードと高級感というイメージで置き換えることを目指すことで、電気自動車への関心を再び呼び覚ますことに貢献した。

「Long tailpipe(長い排気管)」に関する初期の懸念、すなわち、燃料を発電のために燃やすのだから電気自動車はそれほどクリーンではないという発想は、電源がクリーンになるにつれて沈静化している。ある推定によると、米国内のバッテリー駆動の自動車は、ガソリンで走る自動車と比べて、約3分の1の二酸化炭素(CO2)しか発生させないとされているが、太陽光や風力発電が送電系統に占める割合が増えるにつれて、この数字はさらに低下する見通しである。

論争

長期的には、電気自動車の方が内燃機関の自動車より望ましいと見なされることについて異論は少ない。信頼性もクリーンさもガソリン車より優れているからである。また、バッテリー価格の急落も、そう遠からず電気自動車が低価格になることを意味しており、BNEFによると、早ければ25年にもそれが実現する可能性もある。

それでも、GMのメアリー・バーラ最高経営責任者(CEO)が17年9月に上海での講演で語ったように、自動車会社は中国の生産目標のような指令によって「純然たる消費者の受け入れ」に先行する形で生産を強いられることに懸念を抱いている。

また、メーカーは、同氏が「継続的な共同努力」と呼ぶものも政府との間に求めている。すなわち助成金のことだ。これは巨額になる可能性がある。サンディエゴ地域では、公益企業の後援を受けたメーカーの値引きと州および連邦による優遇措置によって、日産リーフの価格をほとんど3分の2近くも値引きできる。GMはそれでも、シボレー・ボルトを米国内で1台売るたびに9000ドル(約100万円)の損失を出している。環境意識の高いデンマークでさえ、電気自動車の販売は17年の初めに、政府が電気自動車の免税を段階的に撤廃することを発表した後に60%減った。消費者の消極的な姿勢は、ガソリン価格の低さだけでなく、充電スポットの少なさに対する不安も反映している可能性がある。

しかし、電気自動車に追い風となる要因はほかにも存在する。電気自動車を新たな収益源と見なしているカリフォルニアの電力事業者は、充電インフラを拡充する費用を賄うため、総額10億ドルを上回る電気料金の引き上げを申請している。また、自動車メーカーは、今後10年間に自動運転車を大量に導入することを計画しているが、自動運転車は電気エンジンを使用する方が制御しやすい。さらに、中国は、石油への依存を国家安全保障上の重大なリスクと見なしている。

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