ECB、ベンチマーク短期金利の移行を開始

本稿はLiz Capo McCormickおよびJames Hiraiが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。Read the English version published on October 2, 2019.

不正操作問題に揺れたLIBORからの切り替え作業を各国規制当局が進める中、欧州中央銀行(ECB)は2019年10月2日、新しい短期金利ベンチマークへの移行プロセスを正式にスタートさせました。

新しい指標金利はESTRと呼ばれ、ユーロ圏銀行の翌日物借入コストをベースとするもので、10月1日はマイナス0.549%に設定されたとECBがウェブサイトで発表しました。

世界中で約370兆ドルの金融資産にベンチマークとして使用されているLIBORに対する信頼が不正操作問題によって損なわれた後、英国および米国においてはベンチマーク移行が進む中で、ユーロ圏でもようやく移行プロセスがスタートしました。従来のEuriborおよびEONIAの使用を中止するよう、規制当局が市場参加者に働きかけています。

不正問題で信頼を失ったLIBORからの移行について、ユーロ圏はいろいろな面で他の地域に後れを取っています。既に米国では新たな参照金利にリンクした社債が約1年前から発行されています。また、英国ではポンド翌日物指標金利への移行が金融市場で本格的に始まっています。

しかし幸いなことに、LIBOR切り替えにあたってECBが立てた移行戦略が功を奏して、ESTRへの移行が円滑なものとなる可能性があります。

Societe Generale SAのストラテジストであるAdam Kurpiel氏は次のように述べています。「従来のEONIAがESTRに連動した形で引き続き算出されることから、ESTRへの移行はかなり容易なものとなるでしょう。また、EONIAに使われた全てのインフラをユーロ・マネーマーケット・デリバティブ商品にそのまま使うことができます。従って、担保付翌日物調達金利(SOFR)という全く新しいベンチマーク市場をゼロから立ち上げなければならなかった米国と比べれば、ESTRへの移行はかなり円滑に進むと考えられます」

ECBは新指標金利の公表開始までに長年にわたって準備作業を行ってきました。その一環として、2017年3月から2019年9月までの過去データ(pre-ESTR)も参考値として公表されています。

両指標の公表は以下の通り行われます。

  • ESTRは、毎日ロンドン時間午前7時に前日のレートが公表されます。
  • EONIAは、欧州マネーマーケット協会(EMMI)が新たな算出方法に基づいてロンドン時間午前8時15分頃に公表します。
  • EONIAはESTRに8.5bpを加えた水準に設定されます。
  • EONIAは2022年1月3日に廃止されます。

ESTRに対する市場の関心は高まりつつあります。例えばドイツのL-Bankは初のESTRリンク債の条件決定を今月に予定しています。また、UniCredit SpA によれば、pre-ESTRの1日の平均取引高は約370億ユーロ(400億ドル)で、そのレートはおおむねECBの中銀預金金利を約5bp下回っていました。

関係者が匿名を条件に述べたところによると、欧州投資銀行(EIB)は3年のESTRリンク変動利付債をESTR公表開始日の10月2日に条件決定するもようです

ECBは先月、中銀預金金利を10bp引き下げてマイナス0.50%としましたが、公表されたESTRのレートはこの利下げをフルに反映したもので、Commerzbank AG金利戦略グループのヘッドであるChristoph Rieger氏が予想したマイナス0.55%とほぼ一致していました。

ティアリングの影響は不透明

EONIAは銀行が提示した金利を基にEMMIが算出した貸出金利であるのに対し、ESTRは毎日の実取引に基づく銀行の借入金利で、翌日物取引のレートを取引高で加重したトリム平均として算出されます。カウンターパーティーはユーロ圏の大手銀行約50行で10カ国にまたがっています。

ECBによると、10月1日のフィキシングは、32行の間で行われた432の取引、総額約360億ユーロをベースに行われました。その内最大手5行による取引が54%を占めました。

ECBは2019年9月、銀行間で異なるマイナス金利を適用するティアリング(階層化)と呼ばれる措置の導入を決定しましたが、これがESTRにどう影響するかはまだわかりません。ティアリングは2019年10月30日から実施される予定です。