本稿はサプライチェーン・データ・アナリストのBrian Moranが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに掲載されたものです。(3/25/3021)
過去数十年で最悪の干ばつに見舞われている台湾では、貯水量の激減により半導体メーカーが打撃を受けています。世界のテクノロジー業界が気候変動の弊害を避けられないさまが浮き彫りにされた格好です。
貯水率が40%まで低下したことを受け、台湾積体電路製造(TSMC)、マイクロン・テクノロジー、および聯華電子(UMC)の半導体製造工場への給水制限が実施されています。経済部(経済省)水利署は、「長期的な問題」と捉え、集水量の押し上げを目指し今後10年間で57億ドル(約6189億円)を投じる予定です。
企業マップ(CMAP)機能で、干ばつのリスクを抱える世界の工場の位置を特定してみます。さらに、環境・社会・ガバナンス分析(ESG)機能およびサプライチェーン(SPLC)機能で、サプライチェーンにわたる水の使用状況を追跡します。
TSMCの台湾工場と干ばつデータの位置を特定する方法は以下の通りです:
- コマンドラインに「tsmc」と入力し、「2330 TT Equity – 台湾積体電路製造 [TSMC/台湾セミコンダクター](台湾証券取引所)」を選択。再びコマンドラインに「company map」と入力し、「CMAP – 企業マップ」を指定。クイック入力は「2330 TT Equity CMAP」
- マウスのスクロールホイールを使用して台湾を拡大表示
- 赤色のツールバーにある[表示]をクリックし、画面左側のメニューから「干ばつ」を選択。グレーの[マップに追加]ボタンをクリック
- 画面右側のパネルで「干ばつ」の横にある3本線と逆三角形のグレーのドロップダウンメニューをクリック。「下に移動」を選択してマップのレイヤーを調整
- 台湾の各工場にカーソルを移動して、詳細を表示
台湾の南部と中部に位置するTSMCの各工場は、乾季の影響を受けていることが分かります。右下のスペクトラムは3カ月標準化降水指数です。長期平均からの偏差を示し、毎月更新されます。黄色に近づくほど雨量が少なく、青色に近づくほど雨量が多いことを意味します。
TSMCの水使用量および水再利用量に関するデータを確認する方法は以下の通りです:
- TSMCのティッカーを読み込み、コマンドラインに「esg」と入力し、「FA ESG – 企業財務分析:環境・社会・ガバナンス概要」を選択。クイック入力は「2330 TT Equity FA ESG」
- [ESG]タブの[環境]サブタブを選択
- 下へスクロールして「水」のセクションを表示。「水使用量合計」の横にあるチャート・アイコンをクリック
- 画面左側のパネルで下へスクロールし、「水」のセクションで「水再利用量合計」にチェックマークを付ける
TSMCでは、2019年の水使用量全体のうち約68%が再利用されています。過去数年間での水使用量および水再利用量は共に増加しており、半導体製造ではウエハーや工場、循環空気の洗浄に大量の水を必要とします。半導体の高性能化が進む中、必要とする水の量も増えてきています。
TSMCの仕入れ先企業による水使用効率を追跡する方法は以下の通りです:
- TSMCのティッカーを読み込み、コマンドラインに「supply chain」と入力し、「SPLC – サプライチェーン分析」を選択。クイック入力は「 2330 TT Equity SPLC」
- 「表示」で「表」をクリック
- 画面左上の「分析」のドロップダウンメニューをクリックし、「3カ月価格変化%」を選択
- 「項目追加」欄で「water usage」と入力して「水使用効率」を選択。<GO>キーを押す
- さらに、「Water Policy」と入力して「水削減対策」、「BICS Level 3 Industry Name」と入力して「BICSレベル3産業名」をそれぞれ選択し、<GO>キーを押す
- 「水使用効率」の項目ヘッダーをクリックし、水使用効率の高い順に仕入れ先企業を並べ替え
ブルームバーグでは、各企業での水使用量全体のうち排水として廃棄されなかった水量の比率を水使用効率として測定しています。「水削減対策」は、企業が水使用量の削減や製造過程の効率化に向けて何らかの対策を講じているか、また、事業を行う地域に影響する可能性がある水ストレスに配慮しているかを示しています。値が「1」の場合は取り組みが見られ、「0」の場合は取り組みがないことを意味します。
TSMCの仕入れ先企業のうち水使用効率が上位の企業には、化学品メーカーが名を連ねています。世界有数の半導体材料メーカーである日本の信越化学工業と昭和電工の水使用効率は、それぞれ92%と43%。両社とも水に関する対策は導入済みです。本稿執筆時から過去3カ月間の株価は、信越化学工業で7%、昭和電工で44%の上昇が見られました。