デジタルトランスフォーメーション:東京海上日動火災保険様インタビュー

Read the English version published on December 16, 2021.

東京海上日動火災保険株式会社 財務企画部 江田 英行氏 インタビュー

データサイエンスと機械学習によって資産運用業界には革命的な変化がもたらされ、投資家はかつてないほどの深い知見を入手できるようになっています。実用的な知見を提供するには、堅牢なデータサイエンスソリューションを開発するための適切なテクノロジースタックが必要となります。

このほど、東京海上日動火災保険株式会社 財務企画部にて資産運用領域におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進に取り組む江田 英行氏にインタビューを行い、同社がテクノロジーとクオンツ分析が持つアドバンテージをどのように活用しているのかを伺いました。金融市場に特化したターンキーのデータサイエンスプラットフォーム、BQuant Enterpriseをどのように駆使してアジャイルな開発を続け、データを活用し、人と機械とのバランスを保っているのかを中心に、同社のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた道のりについてお話しいただきました。

Q

ブルームバーグ:新しいテクノロジーを使って御社が克服しようとしているものは何でしょうか。

A

東京海上日動火災保険 江田 英行氏 (財務企画部 財務企画グループ アシスタントマネージャー):

東京海上日動火災保険では、テクノロジーをさまざまな方法で駆使して持続可能な成長の実現を目指しており、中期事業計画ではデジタル化の重要性を強調しています。デジタルトランスフォーメーションに関しては、二つの主要な目標があります。一つ目の目標は、業務の生産性の向上です。ご存じの通り、コンピューター―は単純作業を決定的な方法で高速処理するのに適しており、標準的な作業を幅広く自動化できます。例えば、ブルームバーグのアセット&インベストメントマネジャー(AIM)を使えば、トレーディングや取引執行、証券登録業務に関して手作業の多くを省略できます。二つ目の目標は、テクノロジーを活用した意思決定プロセスの強化ということです。

デジタル化や人工知能(AI)によって意思決定プロセスが置き換えられるとは思いませんが、テクノロジーを活用し複雑な金融市場を分析し、それに基づいて提供される独自の知見はよりよい意思決定を下すために役立ちます。しかしこうした目標を達成するためには、二つの大きな課題があります。つまり、柔軟性に富んだアプリケーションの開発環境をどう確立するのか、そしてユーザー中心でユーザードリブンのテクノロジー文化を築くため、社員のモチベーションを高めるにはどうしたらよいか、ということです。

生産性向上のため、今までは既存のパッケージやアプリケーションが使われてきましたが、ユーザーが独自のユーザーフレンドリーなアプリケーションを作成し、PoC(概念実証)を通して改善していく方が重要ではないかと考えています。その意味で、ユーザーが独自のアプリケーションを柔軟な方法で開発できるような環境を整えること、それが課題となるでしょう。

一方、ユーザー中心でユーザードリブンな文化を醸成するためには、社員の間で変化に順応できる考え方が欠かせません。人間というのは変化にあらがう傾向が強いため、単に開発環境を作ったり、新規システムを導入したりというだけでは意味がないのです。社員が将来と変化に対して前向きな文化を醸成することが不可欠です。例えば、社員と将来のビジョンを共有し、それについて話し合える機会を社員に提供する必要があります。

Q

社内開発する代わりにブルームバーグを選んでいただいた理由は何ですか?

A

ブルームバーグのBQuantは、ユーザー中心のアプリケーション開発環境を構築するのに理想的だと考えました。当社独自のポートフォリオデータ以外に、金融市場データや他のオルタナティブデータに単一プラットフォームからアクセスできるということが非常に重要です。当社独自に社内開発環境を作り出すのであれば、金融市場データへのアクセスが困難です。そのため、ブルームバーグのBQuantのようなプラットフォームが魅力的だったのです。

さらに、機械学習能力があるPythonベースでアプリケーションを開発できるという点もプラスでした。また、ブルームバーグBQuantの非常に柔軟な価格設定もありがたい点です。

さらに付け加えるなら、Pythonは比較的簡単なプログラミング言語です。しかし、マイクロソフトのExcelと違い、誰もがそれを知っているわけではありません。とは言え、幅広いユーザーに、アプリケーションの開発に前向きになってもらう必要があります。ですから当社ユーザーのニーズに基づいて、ブルームバーグが柔軟なトレーニングプログラムを提供してくれることにも感謝しています。最後に、当社はブルームバーグのESGハッカソンに参加しており、新しいアイデアの開発に向けて他社との競争を通してテクノロジーの専門知識に磨きをかけています。当社チームはこのイベントを楽しみながら参加するとともに、そこから多くを学んでいます。この協働を通して当社はスキルを磨き、ブルームバーグBQuantをより効率的かつ効果的に使えるようになっています。

Q

今後ブルームバーグBQuantをどのように活用する予定ですか?何かお考えのアプリケーションはありますか?

A

標準的な作業、つまりパフォーマンスをモニターするツールや強力な分析ツールなどを使う作業を自動化することが目標の一つです。これらのツールは現在Excelで管理されていますが、時間の経過とともに必要に応じてさまざまな機能が追加されるためファイルが極めて複雑になることは想像に難くないでしょう。さらに、さまざまなデータベースに手作業でアクセスする必要があり、ミスにつながったり、非常に時間がかかったりする場合もあります。ブルームバーグBQuantを利用することで、単一のプラットフォームからデータベースにアクセスできるため、作業負担を軽減できるだけでなく質の高い結果を得ることができます。また、東京海上ではブルームバーグBQuantを使ってアプリケーションを構築し、さまざまなエクスペリエンスや知見を交換し、新しいトレーディングのアイデアをぜひ生み出したいと思っています。

例えば、投資判断を行う際、分析の視点はそれぞれのトレーダーによって異なります。従来であれば、こうした分析の視点はそのたびにトレーダーの間で共有され、随時対面のミーティングを開いて考えや知見を深めるため協議していました。しかし新型コロナウイルスの感染やテレワークの普及により、トレーダーが直接知見を共有できる機会が少なくなりました。当社はトレーダーがそれぞれの経験や知見をモデル化できるようにアプリケーションを開発し、ブルームバーグBQuantを使って他のトレーダーとアプリケーションを共有できる機会を提供できるようにしました。その結果、個人の知見や経験が共有され、新たなアプリケーションへと変換されています。これはBQuantの使い方として非常に面白い方法だと思います。今では仮想環境を構築してトレーダーが活発にトレーディングのアイデアを協議し、知見や専門知識を深めることができるのです。

Q

同様のデジタルトランスフォーメーションを考えている他社にどのようなアドバイスがありますか?

A

アドバイスは三つあります。一つ目は、「アジャイルであれ」、ということです。新たなデータやテクノロジーが常に生み出されています。ですから完璧な計画を作り、それに基づいてアプリケーションを開発するのは容易ではありません。かつてないほど柔軟性、俊敏性が求められているのです。アジャイルなアプリケーション開発、そして通常のPDCA(計画・実行・評価・改善)アプローチだけでなく、PoC(概念実証)を通したアプリケーション開発を可能とする企業文化を築くことが重要です。

二つ目のアドバイスは、データアーキテクチャの重要性に関するものです。データは競争力を高める要因になり得ますが、データの活用は容易ではありません。データに容易にアクセスできない場合や、データの質が悪い場合は問題になりかねません。私たちはデータの活用法について注目しがちですが、データを効率的で効果的な方法で活用するにはデータ環境またはアーキテクチャに注意する必要があるのです。

最後のアドバイスは、人間とデジタルとうまくバランスがとれるような計画を作成するということです。コンピューターと人間の強みと弱みを把握して、それぞれの法則を明確化することが必要です。特に、いかにAIが人の意思決定に取って代わるのかということを考えるよりも、いかにAIが人の意思決定プロセスに役立つかを考慮することが重要です。この点は東京海上にとって非常に重要な点ですが、他の投資家の皆さんにとっても重要なのではないかと思います。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。