クリーンエネルギーETFの詳細を分析する:BIグリーン&タクソノミー・モデル

Read the English version published on July 11, 2022.

本稿はブルームバーグ・インテリジェンス・ESGリサーチEMEA&APACでディレクターを務めるAdeline Diab、アソシエート・アナリストのNick Scanscartierが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。

ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)には、「クリーンエネルギーETFはどの程度グリーンなのか」という質問が頻繁に寄せられます。新型モデル算出法によれば、こうしたファンドの中で大型かつ多様性が特に高い銘柄は、極めてグリーンということが分かります。迅速な脱炭素化を実現し、EUタクソノミーに最も整合性し、EV/EBITDA倍率は低水準でありながら高いパフォーマンスを生み出しています。これは投資家にとって魅力的な特性で、ロシア・ウクライナ紛争が続く中、欧州連合(EU)がグリーンエネルギー刺激策として2000億ユーロを投入し、エネルギー安全保障や気候変動への懸念に対処している現状を背景に投資妙味が大きいと言えます。

しかし、すべてのクリーンエネルギーETFが等しくグリーンというわけではなく、それこそが課題なのです。本リポートでは、当社が新たに発表した「BIグリーン&タクソノミー・スコアリングモデル」を活用し、投資家がクリーンエネルギーETFのグリーン認証を理解し、より詳細な情報に基づいた投資決定を行えるよう支援します。

クリーンエネルギーETFの選び方:BIグリーン&タクソノミーモデルによる分析

BIグリーン&タクソノミーモデルによると、多様性が最も高い「iシェアーズ・グローバル・クリーンエネルギー(ICLNおよびINRG)」、特化性が最も高い「ファースト・トラスト・グローバル・ウィンド・エナジー(FAN)」、および「インベスコ・ソーラー(TAN)」がクリーンエネルギーETFの上位10銘柄をけん引しています。当社の分析では、ファンドのリターンとBI新型モデル算出法の総合スコアの間には強い相関性があることも明らかになっており、市場の認知度とパフォーマンスの潜在性が高まっていることを強調しています。上位にランクインしたファンドは、ボラティリティーの偏りが競合銘柄に比べて小さく、市場の変化に対応しやすいだけでなく、EV/Ebitdaが低い企業を最も多く保有しており、魅力的なバリュエーションであることを示しています。

算出法:BIグリーン&タクソノミースコアリング・モデルは、ブルームバーグの環境、債務、規制、財務データを活用し、3つの視点(排出量、グリーンボンド、EUタクソノミーの整合性)からファンドの保有状況を調査しています。

BIグリーン&EUタクソノミー・スコアリングモデルの導入

規制当局の監視強化、エネルギー移行、グリーンウォッシングに関する懸念を受け、クリーンエネルギーETFがどの程度グリーンであるかやEUタクソノミーに整合しているかのエクスポージャーを決定することは、分析において重要な要素になる見込みです。EUは以上のようなアジェンダを推進していますが、米証券取引委員会(SEC)が最近、投資家のために気候関連の開示を標準化する動きを見せていることも、この流れを裏付ける強力なシグナルです。BIスコアカードのように、クリーンエネルギー・ファンドの保有銘柄を調査し、排出量、グリーンボンド、EUタクソノミーへの整合性を判断することは、こうした分析への対応を促し、投資家にとって指針を示すことにつながります。

BIはブルームバーグのデータを活用し、ファンドのESGエクスポージャーを明らかにしています。BIモデルの活用方法として、ユーザーの皆さまは保有銘柄を評価しファンドレベルに集約することで、クリーンエネルギーETFの排出量リスクエクスポージャー、グリーンボンド特性、さらにEUタクソノミーへの整合性を比較することができます。

BIグリーン&タクソノミー・モデル:クリーンエネルギーの論証

クリーンエネルギーETFの詳細な検証:BIモデルによるスコアリング

クリーンエネルギーETFは、グリーンおよびEUタクソノミーへの整合性の観点ですべて等しいわけではなく、結果としてリスクや投資妙味の水準が異なってきます。ICLNおよびINRGは、BIスコアカードにおいてグリーンボンドとEUタクソノミーの両スコアで競合ファンドを上回っています。排出量の主要テーマスコアは相対的に低いものの、今後エネルギー転換株式銘柄を組み入れることで改善するとみられます。FANとTANのどちらもスコアカードで他銘柄をリードしており、グリーンおよびEUタクソノミーへの整合性が高いことを示しています。

「インベスコ・ワイルダーヒル・クリーン・エナジー(PBW)」、「ファーストトラスト・ナスダック・クリーン・エッジグリーン・エナジー(QCLN)」、「インベスコ・グローバル・クリーン・エネルギー(PBD)」などのクリーンエネルギーETFは、公共事業へのエクスポージャーが低い、あるいは小型株に偏っているなどのさまざまな特徴を示しています。投資家の目的に応じて、こうした銘柄をさらに精査する必要があります。

BIグリーン&タクソノミー・モデル:全体スコア

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

グリーンETFで環境への配慮とパフォーマンスを同時に達成

クリーンエネルギーETFの主要10銘柄を分析した結果、BIスコアリングモデルの結果とファンドのパフォーマンスには強い相関があることが分かりました。ファンドのスコアと1年リターンとの相関は0.8でした。また、スコアとボラティリティーの間には中程度の逆相関があり、過去1年間で最も良いスコアを獲得したファンドのリターンがより安定していることを示しています。プラスのスコアを獲得したファンド、すなわち「リクソー・MSCIニューエナジー(NRJ)」、「インベスコMSCIサステナブル・フューチャー(PZD)」に加え、前出のICLN、INRG、FANは、最もパフォーマンスの高いファンドであるだけでなく、平均EV/Ebitdaが最も低い銘柄を保有していました。

以上を踏まえると、パフォーマンス上位のファンドは今後もあらゆる面で他銘柄の成績を上回る可能性があります。また、BIモデルによって明らかになった上位ファンドのファンダメンタル・グリーン特性が投資家に認識され始めたことを反映しているのかもしれません。

BIグリーン&タクソノミー・スコアと1年リターン

出所:ブルームバーグ・インテリジェンス

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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