データ・スポットライト:地理的リスクの集中度など

Read the English version published on August 13, 2024.

データ・スポットライトへようこそ。このシリーズではデータライセンスを介してdata.bloomberg.comで提供されている8000以上のエンタープライズ・データセットから得られたインサイトを紹介します。

今回は、エネルギーに焦点を当てた投資ポートフォリオを構築する際に、地理位置情報データを使用してリスク評価する方法を取り上げます。 また、投資家が投資アイデアを生み出すために、ブルームバーグのセンチメント・スコアを活用する方法についても見ていきます。

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1. エネルギー施設の位置データを用いた分散ポートフォリオの構築

テーマ別投資ではマクロレベルの動向に焦点を当て、それを中心にポートフォリオを構築します。 しかし、この戦略では投資家は特定の地域に地理的リスクなどの高い集中リスクを負う可能性があります。本稿では潜在的なリスクを軽減するために、地理的な多様性を評価します。

テーマ別投資の枠組みの中でリスク管理と長期的リターンの最大化を実現するために、地理的な多様性を取り入れることは極めて重要です。 図1は、投資家が良好な地理的分散を実現するために、二つの企業の施設間の距離に注意を払う必要がある理由を示しています。この典型的な例でみると、同じ地域(この場合ドイツ)に施設が集中しているため、資産が同じ地理的リスク要因にさらされることにます。

この分析では、ブルームバーグNEF(BNEF)エネルギー物的資産プロダクトを使用しています。このプロダクトは、約13万カ所の水素、風力、太陽光、蓄電池資産の地理的位置情報を特定し、さまざまなテーマの企業の生産施設情報を提供しています。

ここで説明のために、クリーン水素分野の大型企業(時価総額1000億ドル超)に投資するポートフォリオ・マネジャーが、このデータを利用して潜在的な地理的リスクの集中度を迅速に理解する方法を考えてみましょう。分散ポートフォリオを構築するには、同じ地域に過度に集中するリスクを回避するために、ユニバース内のすべての企業が保有するクリーン水素資産間の距離を考慮する必要があります。

そのために、投資マネジャーはこうした資産間の距離をすべて測定し、これらの資産の位置情報に基づいて企業間の距離に合致するリスクマトリックスとともに標準的な最大分散アルゴリズムを適用します。その結果、特定の地理的分散に基づいた最適なポートフォリオを見いだすことができます。図2は、最適なポートフォリオ構成の概要と、同じユニバースの企業(時価総額1000億ドル以上のクリーン水素分野の生産者)の時価総額で加重したポートフォリオと比較した、2年間のリスク・リターン特性を示しています。

テーマ:クリーンエネルギー投資
役割:ポートフォリオマネジャー、アナリスト、ストラテジスト、サステナビリティ投資家
ブルームバーグ・データセット:BNEFエネルギー物理的資産

2. 企業の施設に影響を与える気候変動リスクの検知

エネルギー施設の地理的位置データは、個々の企業に関連するリスク評価にも使用できます。BNEFエネルギー物理的資産プロダクトには、生産、消費、輸送、貯蔵資産の位置情報が含まれています。

例えば図1は、持続可能エネルギーの発電および配電サービスを提供する米ネクステラ・エナジーの物的資産の種類と稼働状況の内訳を示しています。計画中の三つのクリーン水素プロジェクトのうち、二つは製造プロジェクト、一つは消費プロジェクトであり、再生可能エネルギーと原子力発電、あるいはバイオマスや化石燃料と炭素回収・貯留技術を組み合わせることで、温室効果ガス排出量がゼロまたは少ないクリーン水素を製造または使用しています。

BNEFエネルギー物的資産データは、物理的リスクの分析や競争力のある地理的分析を行い、企業がエネルギー施設を建設または操業している場所を追跡する際に、お客さまにサポート情報を提供します。

ネクステラ・エナジーを例にとると、単に米国の強風リスクハザードマップを重ね合わせることで、同社が極めてリスクの高い地域に計画中または稼働中の資産を保有しているかどうかを分析できます。BIの計算では、計画中または稼働中の資産の約10%は、リスクスコアが90を超える地域に位置しています。これは特に重要な情報で、悪天候が同社の業務に支障をきたす可能性を示しています(図2)。

テーマ:リスク管理
役割:ポートフォリオマネジャー、ESGアナリスト、リスクマネジャー、企業
ブルームバーグ・データセット:BNEFエネルギー物的資産

3. 株式市場に対するセンチメントのバックテスト

ニュース記事は、特定の資産に対する投資家の信頼感を示す代替情報としてしばしば使用されます。ブルームバーグの「企業センチメントと市場動向ニュース」データセットは、高度な自然言語処理技術を採用してこの投資家の信頼感をリアルタイムで推定して数値化することで、投資家は膨大な量の非構造化テキストデータを定量的なシグナルとして抽出し、取引の意思決定に役立てることができます。

このようなシグナルの裏付けとなる利点を簡単に評価する一つの方法は、指数のセンチメントデータを使用してパフォーマンスのバックテストを実行することです。 この戦略はシンプルで、毎日、ユニバース内のすべての企業に関連するセンチメントを平均化し、そのセンチメントの値(高、中、低)に基づいて三つの銘柄バスケットを作成します。

ここでのテーマは、センチメントの値が高い銘柄のバスケットは、低いバスケットよりも良好なパフォーマンスを示し、ロング・ショート戦略の機会を生み出すというものです。このバックテストの詳細は以下の通りです。

ユニバース:S&Pトロント60指数(カナダ株式)

対象期間:2016-2023年

加重スキーム:均等加重

リバランス期間:毎日

戦略:オープン・ツー・オープン(米国東部標準時午後8時にセンチメントファイルを受信し、翌日の寄り付きでポジションを建て、翌日の寄り付きでリバランスを実施)

カナダ株の指数を選択した理由は、典型的な米国大型株ユニバースに含まれる銘柄以外にも当プロダクトが十分なカバレッジがあることを示すためです。グラフ1が示す通り、S&Pトロント60指数の構成企業60社について、毎年数万件のニュース記事が入手できます。

チャート2は、「高スコア」グループの高いパフォーマンスを示し、評価対象期間で3.5倍のリターンを生み出していることがわかります。これは、同期間でほぼ倍増した実際の指数のリターンを大幅に上回るものです。

三分割した各分位は、それぞれがロングオンリーの独自の小型ポートフォリオと考えることができるため、この戦略をマーケットニュートラル(市場中立型)に展開するには、「高スコア」グループをロングし、「低スコア」グループをショートすることになります。このようにしてパフォーマンスの格差からリターンを生み出すことができます。

ブルームバーグの「企業センチメントと市場動向ニュース」データセットは、詳細かつ包括的なインサイトを定量的な取引戦略に提供する有益なツールです。さらに、本ブログの分析は生のセンチメントスコアに基づいて実施したため、より複雑な戦略を展開できる可能性を示唆しており、新たにユニークな結果を生み出すこともできるでしょう。

テーマ:クオンツトレーディング、アルファ創出
役割:クオンツリサーチ、トレーダー
ブルームバーグ・データセット:企業センチメントと市場動向ニュース

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