デジタルトランスフォーメーションのためのクラウド戦略構築

アジア太平洋地域の金融機関や企業は今、米中貿易戦争、主要国各国の金利動向、その他短長期の戦略に影響を与える規制の変化への対応を余儀なくされている。さらに一部の日本企業では、働き方改革やマイナス金利の結果として収益がひっ迫している。

このような不安定な環境下にあっては、金融機関はデータ利用、デジタル効率性、スピード面からビジネス戦略をサポートするインフラやコスト削減が必要になってくる。ブルームバーグでエンタープライズソリューション統括責任者である野本良一によれば、現状は、金融機関に対してシステムインフラの抜本的な再構築を促すものだと言う。

クラウドを活用した新たなシステムインフラの構築と多種多様なデータ活用がそのレベルの変化をもたらすことができる。しかし、この恩恵を使いこなしているアジアの企業はまだ少数派だ。先日、ブルームバーグ主催で、アマゾン ウェブサービス ジャパン(AWS)およびPwCあらた有限責任監査法人をゲストスピーカーとして、「金融機関の基盤構築とデータ戦略」と題したイベントが開催された。当日、イベント参加者を対象として行われたライブアンケートにおいて、2022年までに自社のアプリケーションの50%以上がクラウドで実行されると予想した参加者は全体の25%に過ぎなかった。

価値の創造

この割合とは対照的に、アジア太平洋地域の企業はクラウド技術を実によく研究している。東京のセミナーでは、65%の参加者が一部でクラウドを利用していると回答した。しかし、「一部」だけでは、もちろんクラウドの恩恵を手にするのには十分ではなく、せいぜいコストが削減できるくらいだろう。PwCあらた有限責任監査法人の浅水賢祐氏は、「意義のある価値を創造するためには、3つの異なる対応策を並行して講じていく必要がある」という。

  • 各企業が、既存のビジネスモデルの強みやユーザーの求めるもの、ニーズ、ビジネスリスク、競合他社の動きをしっかりと認識し、それを活かした新たなビジネスモデルを検討する
  • データマネジメントの自動化、標準化、ベストプラクティスを利用して、内部プロセスおよび働き方のデジタイゼーションを図る
  • ビジネスを動態化するツールのデジタライゼーションを推進するーたとえばオンラインのみのサービス展開や社内協働ツールを顧客とのやりとりにも採用する等

これらの企業努力には強い変革推進体制(ガバナンス)とモニタリングのフレームワークが必要だ。経営層は変化を積極的に推進かつ擁護し、トップのアプローチを明確化しなければ、会社の方向性が周りから見えなくなりかねない。実際、自社でのデジタルトランスフォーメーションについての質問で、「進行中で、外部に概要を説明できる」と答えた参加者はわずか26.5%に過ぎなかった。「デジタルトランスフォーメーションを推進するために経営者はビジョンを示すべき」と浅水氏は言う。「社内外に対して自らの姿勢を明確に『見える化』してアピールする必要がある。」


変革を推進する

一方で、いかにしっかりと開示されかつ推進されている場合であっても、適切な戦略とサポートがなければ、変革は失敗に終わる可能性がある。ブルームバーグのアジア太平洋地域サービス提供の責任者であるHerman Douglasは、デジタルトランスフォーメーションとクラウド移行の取り組みにおける成功には次の2点が必要だとしている。

  • コンサル的なソリューションプロバイダーとの目標ベースでの企画立案
  • プロジェクトをともに推進する多様で機能横断的な専門家チーム

これは、テクニカルアカウントマネージャ、開発者、コンテンツスペシャリスト、実装スペシャリスト、および高度なトレーニングを受けたサポートエンジニアの役割となる。

また、アジア太平洋地域の現状として、状況の急速な変化が進行中であり、業界での経験、現場での知識、および関係性のあり方がプロジェクトの長期的な成長の可能性が大きく左右する。たとえば、アカウントマネージャと密接に連携して働く多数の地域エンジニアがいれば、クライアントのデータ利用や管理戦略において、地域ごとの微妙なニュアンスの違いを理解するプロセスを加速させることができる。「この瞬発力があれば、物事ははるかに簡単になる。私たちはシナジー効果でともに成長することが可能になり、継続することで素晴らしいイノベーションを起こすことができる」とDouglasは言う。

より速い適応

リアルタイムデータの重要性については強調しすぎることはない。それはスマートイノベーションの構成要素であり、ビジネスのデジタライゼーションの成功へ向けて企業がいかに学習し、適応し、そして反復できているかを意味する。

クラウドソリューションは、このような開発者を最優先するマインドセットをサポートし、安定性や信頼性を犠牲にすることなしにシミュレーション環境、サーバー、データベース等を瞬時にスピンアップできる。低レイテンシーやクラウド技術の高度な信頼性がユースケースとアプリケーションのさらなる拡大につながっている。

アマゾン ウェブサービス ジャパン(AWS) 金融事業開発部の久松博仁氏は、金融・保険領域で「AWSを活用する顧客が加速度的に増えているばかりでなく、適用するシステムの範囲も拡大している」と言い、「社内システムをクラウドに導入することから始まり、現在ではコアビジネスをサポートするシステムに移行しつつある」と述べた。市場データを活用するコア業務システムで、オンプレミスシステムと比較した場合、クラウドに何ら大きな遜色はない。

ブルームバーグのゼロフットプリントのBPIPEのようなソリューションなら、世界中のリアルタイム市場データの配信が可能となる。ブルームバーグエンタープライズ部門クラウド戦略チームのグローバル責任者であるCory Albertによると、この俊敏性に多くのフロントオフィスのリーダーらが強い関心を示し、非常に重要なアプリケーションのミッションにクラウドを採用することを検討始めているという。

このようなデジタルの効率性とスピードを達成するためには、インフラを抜本的に再構築することが必要となってくるが、これは長い目でみれば、アジア太平洋地域の企業に恩恵をもたらすだろう。クラウドトランスフォーメーションは、各企業が変容する市場に対応するため独自の新しい戦略を構築することをサポートし、長期的な競争力を維持するのを助けとなる。