金融セクター、テクノロジー開発競争が加速

Read the English version published on September 4, 2020.

この記事はブルームバーグASEAN統括のSteven YankelsonThe Business Timesに寄稿しブルームバーグが使用許諾を得たものです。

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による影響で、金融セクターでは各社が新たに生まれた業務上のさまざまな要素への適応を進める中、テクノロジーの開発競争が加速しています。多くの企業が、膨大なデータから価値ある情報を読み取りデータドリブンの事業を推進できるようコスト効率の高い新しいテクノロジーを導入し始めています。

これまで肥大化したレガシーシステムで運営してきた金融セクターの各社は、競争力を最大化するための手段の再考を迫られています。新たな収益源を確保し、カスタマーサービスを見直し、さらには変化し続ける需要を満たす新商品の開発を可能にするようなテクノロジーが、これまで以上に競争力を決める大きな要因となっています。

ASEAN諸国の金融セクターでは新テクノロジーを導入する機は熟しています。その背景として社会経済的区分における中流階級層の急拡大と、比較的テクノロジーに精通している若い人口の多さが挙げられます。さらにアジア諸国間の資本フローが伸びていることもあり、コスト効率がよく、テクノロジードリブンでの業務の進化においてASEAN諸国がトップに躍り出る大きな機会が生じています。

決別すべきレガシーシステム

考え方を変えることが必要なのは当然ですが、多くの金融機関は依然として自社のITアプローチ、すなわち何十年もかけてその企業のために開発されてきたオペレーティング・システムに依存しています。これらシステムの多くは、金融セクターでの買収・合併を通して各社のレガシーシステムが持つ数々の要素を組み合わせて構築されたものです。

IBMによれば、2017年には世界の上位100行のうち92行が依然としてレガシーのメインフレームとシステムに依存していました。しかし、フィンテックセクター主導の技術革新が続き、デジタル銀行という参入者も現れ、さらにテクノロジーに通じた顧客基盤が拡大する中で、自律的にレガシーシステムを改良するには、それに必要な時間とコスト、リソースが技術革新への高いハードルとなる可能性があります。

自動化への道のり

多くの金融機関では自動化をさらに進めるために、おびただしい数のシステムのデータとプロセスを接続する必要があります。しかし個々のソフトウエアプログラムに必ずしも互換性があるとは限りません。多くの場合、複数のシステムが持つデータの再フォーマットやプロトコルの仲介、あるいはデータの集計を通じて、ある程度のデータ変換作業が必要となります。

ブルームバーグとWBR Insightsが最近実施した、債券取引の自動化に関する調査によれば、平均すると各社で自動取引が全体に占める比率は倍増すると予想されています。各社で自動化プロセスを実装する部署が増えるに従い、システム間の情報フローをモニターすることがリスク管理の鍵を握ることになるでしょう。

自社独特のレガシーシステムを改良するにはコストがかかります。それよりも多くの金融機関はAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を介してスマート分析や中核業務ソリューションの利用する方向に向かっています。最近のJPモルガンの調査によれば、フロントオフィスでは人工知能(AI)や機械学習などのテクノロジーの活用方法を模索しており、例えばトレーダーの58%がそれによって取引判断が改善する可能性があると考えています。

最近のリポートでPwCは、投資活動でもAIの役割が増していると報告しています。ファンド設計のプロセスでは今後テクノロジーが中核的な役割を担うことになると考えられ、特に取引承認や投資家へのハンドオフなどが例として挙げられます。

規制当局も自動化に注目しています。規制当局は、膨大なデータに高度な分析ツールを適用することでさまざまなシナリオを比較し、潜在的な問題が市場全体での大規模な問題に発展する前に対処できるようになります。

金融各社もデータの優先順位を決めて、増え続ける規制当局からのデータ開示要件に従うために透明性を管理する必要があります。

双方の利点を組み合わせる:ハイブリッドのクラウド機能を開発

小規模なヘッジファンドから大規模な資産運用会社まで、金融セクターでは今幅広い金融機関がハイブリッドのクラウド機能を模索しています。これは自社システムを業務委託先がホストする機能と組み合わせ、必要とされる新たな機能を実現するものです。

レガシーシステムで運営している金融機関の場合、複数のシステムを統合して段階的に最善のソリューションを生み出すことが可能です。その際、ホストされたマネージド・サービスのソリューションをさまざまなデスクにまたがってアセットクラス別または地域別で統合できます。

クラウドサービスは金融各社に、コスト削減のチャンスを与えるのみならず、全社的なモニタリングを可能にすることでビジビリティ(可視性)を高め、さらに業務上のアジリティ(状況に応じて的確に素早く行動できる機敏性)を高める機会をも提供します。

プラグ・アンド・プレイのソリューションが答えとなる理由

これら新たなダイナミクスによって、「iPaaS(インテグレーション・プラットフォーム・アズ・ア・サービス)」を通じた、よりコスト効率の高いプラグ・アンド・プレイのソリューションが注目されるようになっています。こうしたソリューションは、さまざまなシステムを連携して自動化できるようにするものです。

このようなニーズに対応するため、ブルームバーグを含む金融セクターの各社はウェブAPIとオープンスタンダードを開発しており、顧客が自社ローカルワークフローの一部として動作するシステムを構築して統合を実現できるようにしています。これらのシステムは詳細な構成が可能であるため、エンドユーザーはAPIを活用してデータを移動・変換することで、取引とバリュエーションのプロセス全体において、既存ワークフローの統合をカスタマイズしたり、新たなワークフローを導入したりできます。またこれらのシステムは、金融機関が変化し続ける規制当局からの要件や報告義務、透明性義務に対応できるように設計されています。

ブルームバーグブルームバーグでは現在、シンガポールの中堅国内証券会社と共同で、小口顧客およびB2B向けに新たな証券取引プラットフォームを開発中です。弊社の取引システム・テクノロジーとコネクティビティを活用すれば、取引ワークフロー全体の自動化が実現します。その結果、この証券会社はアジア地域の複数の国で同プラットフォームを導入できます。

ASEAN地域の金融サービスセクターでは過去、大きな経済ショックをきっかけに変化と革新を起こせることを証明し、新たなソリューションを顧客に提供するためのコスト効率の高い方法を生み出しました。新型コロナウイルスは今回も同セクターの革新力を試し、ニューノーマル(新常態)における長期的な勝ち組と負け組を決定することになるでしょう。テクノロジー支出の浪費を最小限に抑える必要性は今、かつてないほど高まっています。