サーキュラーエコノミーの世界では「調達、製造、利用、そして再利用」

本稿はEmily Chasan の協力を得てEmma Vickersが執筆し、ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。Read the  English version published on Aug. 8, 2019.

調達、製造、利用、廃棄。過去何十年もの間、それが生産と消費の標準的なパターンでした。企業が原材料を調達して製品に変換、それを消費者が購入、最終的には廃棄して廃棄物が生まれます。しかし、気候変動と環境悪化に対する警告の声がこれまでになく高まる中で、人々はこのモデルの持続可能性に疑問を抱くようになってきました。中国、日本、英国を含む多くの政府関係者と経営者が、このリニア(直線的)システム脱却と「調達し、製造し、利用し、そして何度も再利用する」サーキュラーエコノミー(循環経済)への支持を表明しています。

1.リニアエコノミーの問題点は何か?

リニアエコノミーは、非効率でコストがかかり天然資源を枯渇させるシステムです。天然資源の採掘は、それが金であろうと石炭であろうと、生態系を損ない周辺のコミュニティに破壊をもたらします。鉄鉱石から鉄を作るには大量のエネルギーが必要で、その過程で地球温暖化をもたらす二酸化炭素が排出されます。リニアモデルの副産物は廃棄物です。廃棄物はスペースを占有し、時として汚染物質を含むことがあります。また、望ましくない場所に集積されることもあります。いわゆる太平洋ゴミベルトは、世界的なプラスチック汚染の最もよく知られた事例です。しかし、鉄やプラスチックなどの生産物を再利用、再生あるいはリサイクルすることができれば、未利用の価値を引き出すことができます。廃棄物ゼロで新たな資源を全く必要としない完全なサーキュラーエコノミーを実現することはおそらく不可能ですが、システムから最大限の無駄を排除することで、新たな資源の投入を削減することは可能です。

2.リサイクルとの違いは?

サーキュラーエコノミーとリサイクルは似ていますが全く同じではありません。サーキュラーエコノミーという用語は少なくとも1980年代には一部の資源経済学者の著作で使われていました。しかし近年では、リサイクルよりも体系的かつ高い目標を掲げるアプローチを指す言葉として使われています。例えば、プラスチックのボトルをリサイクルするには、品質維持のために新しい材料を交ぜ合わせる必要があります。しかし真のサーキュラーエコノミーでは、新しい資源を全く投入しません。このため無駄な排出、廃棄物が削減され、最終的にはコスト削減につながります。既にサーキュラーエコノミーに近づいている業界もあります。例えば、自動車のほとんどの部品は再利用が可能です。一方で、サーキュラーエコノミーからほど遠い業界もあります。衣服は材料の97%に新しい素材を使用していますし、使用後は73%が焼却または埋め立て処分されています。サーキュラーエコノミーは決して新しい概念ではありません。第2次世界大戦中には無駄を出来るだけなくすことを奨励するために「古いものを修理して使おう(make do and mend)」というスローガンが提唱されました。

3.懐疑的な人はいるか?

はい、います。生産サイクルを完全に自給自足型にすることは事実上不可能です。新資源の投入は必ず必要ですし、廃棄物は必ず発生します。例えば、紙を何度もリサイクルすると品質はどんどん劣化します。また、サーキュラーエコノミーの構築には、製品の設計見直しやリサイクルされた素材への切り替えなどに多額の初期費用がかかる可能性があります。英国では、サーキュラーエコノミーへの移行に必要なコストは国内総生産の約3%になると試算されています。このため、企業が長期的に持続可能なプラクティスの構築ではなく、短期的なその場しのぎに走るのではないかとの懸念も生じています。

4.できることは何か?

よりサーキュラー型のサプライチェーンです。具体的にはリサイクルされた素材への切り替え、製品寿命の延長、寿命を終えた製品のリサイクル率の向上などです。ニュージャージーに本拠を置くテラサイクルは、スイスのネスレなどの消費財メーカーと共同で、アイスクリームなど一般消費財の容器を使用後に回収、再充塡して再利用する「ループ」イニシアチブを発表しました。また、ゼネラルモーターズ、BMW、トヨタ自動車は、電気自動車用バッテリーの中古市場の創設に向けて国際的に協調しています。回収された中古バッテリーは、日本のセブン-イレブンの冷蔵庫や、カメルーンの太陽光エネルギー貯蔵用に使われます。ニューヨークのスタートアップであるレント・ザ・ランウェイは、結婚式やパーティーなどのイベント用にデザイナーズブランドのドレスをレンタルで提供し、1回しか着ないドレスを顧客が買わなくても済むようにしました。レント・ザ・ランウェイの評価額は10億ドルを超えています。

5.政府の取り組み

各国政府は、消費者やメーカーがサーキュラーエコノミーに移行する後押しをしようとしています。ドイツ政府は、環境への影響が少ない製品や修理費用が安価な製品の設計に補助金を提供しています。チリ政府は、すべてのプラスチック製品を再利用可能にすることを目指すと発表しました。またインド政府は、電子機器や白物家電のメーカーに対して寿命に達した製品の「テイクバック(引き取り)」サービス提供を義務付ける法律を2012年に制定しました。これにより50万人の雇用が創出されると期待されています。