中国の金融政策ツールキット

本記事はRobin Gangulyが執筆し、ブルームバーグブリーフ・Quick Take の「中国の金融政策ツールキット」に初出掲載されたものです。

中国人民銀行(中央銀行)は、世界第2位の経済大国の動きに臨機応変に対応するため独特でかつてないほど複雑なツールキットを用意している。人民銀はこれまで概ね政策金利を設定することで金融政策を運営してきたが、ここ数年間は企業の借り入れコストを誘導し金利を特定のレンジ内に維持するために様々な手段を活用してきた。人民銀の主要な政策手段は英語の頭字語で表記されるが、中国語の子音がそれら頭字語と一致する四川料理の名前としても知られるようになってきている。以下に一部を紹介する。

公開市場操作(OMO)

これは最も頻繁に使用される手段であり、市中銀行に対し主に短期の貸付を行う。供給される資金の額と満期を迎える資金の規模により、金融システムへのネットベースの注入またはシステムからの吸収となる。貸付期間(満期までの期限)は7日間から数年間まで様々だが、最も一般的なのは1週間、14日間、28日間である。短期金融市場に即刻影響を及ぼし、金利を上下に動かす。2016年2月に人民銀はオペ(公開市場操作)の有効性を高めるため、実施の頻度をそれまでの週に2度から全営業日に増やすことを決めた。オペは、リバースレポ(売り戻し条件付き債券購入)として知られる取引を通じて行われる。リバースレポでは、市中銀行が債券を担保として差し出し人民銀から資金を借り入れ、一定期間後に借入資金の返済を行うことに合意する。人民銀はまた、有価証券の売買のほか、資金吸収の手段であるレポ取引を通じてもオペを行う。

中期貸出制度(MLF)
別名:麻辣粉(マーラーフェン)

2014年9月に導入された制度で、市中銀行が保有する資金の規模と期間を人民銀がコントロールできる余地が政策金利を変動する場合に比べ大きくなる。人民銀は、1月24日に実施したようにバブルを収縮させレバレッジを抑制するためにMLFを通じて貸し出す資金の利率を引き上げることができる。貸出の期間は3カ月、6カ月、12カ月の3種類。

常設貸出制度(SLF)
別名:酸辣粉(スァンラーフェン)

この流動性供給手段は、主に中小規模の金融機関を対象としたものだ。連邦準備制度理事会(FRB)の「割引窓口」、欧州中央銀行(ECB)の「限界貸出ファシリティ」に類似した制度であり、2013年に導入され、貸出期間は過去2年間で1カ月以内に維持されている。

短期流動性オペ(SLO)

同じく2013年に導入されたこのオペは7日以内の期間で資金を供給する手段であり、人民銀が指摘しているように、短期金融市場の一時的な変動に対応することを目的としている。ただ、2016年に公開市場操作が日々行われるようになったことから、SLOの必要性は低下したと考えられる。

担保付き補完貸出(PSL)

これは、貧民街の再開発などといった政府プロジェクトの資金調達を任された主要政策銀行3行に資金を供給するプログラムだ。プログラムの対象となる政策銀行は、農業開発銀行、国家開発銀行、輸出入銀行。

臨時流動性制度(TLF)
別名:甜辣粉(ティエンラーフェン)

人民銀の金融政策ツールの中では最も新しいもので、これまでに1度しか使用されていない。人民銀は1月20日、春節(旧正月)を控えた資金不足を緩和するために大手商業銀行に期間28日の流動性支援を提供したことを発表した。貸出金利は、同様の期間の公開市場操作と同程度とされている。このツールの詳細はこれまでほとんど明らかにされていないが、中国の国営テレビ局中国中央電視台によると、担保は不要である。

預金準備率(RRR)

流動性をコントロールする伝統的手段の一つだ。市中銀行が保有する預金のうち中央銀行に預け入れなければならない預金の比率である同率を変更することにより、金融システムの流動性の量を調整できる。その影響は広範囲に及び、引き下げれば金融機関による貸出が促進されるほか、通貨供給量を増やしたり減らしたりすることもできる。人民銀が最後に預金準備率を引き下げたのは2016年2月で大手銀行の準備率を17%としたが、世界水準で見ると依然最高レベルである。

政策金利

もう一つの伝統的手段で、人民銀は政策金利である期間1年の貸し出しと預金の基準金利を2015年10月以降据え置いている。これらの基準金利は、商業銀行が預金者への預金金利、および法人向けや住宅ローンの貸出金利の水準を決める際のベースとなる。

再貸出

これは、人民銀が正式に中央銀行として設立された1984年にまでさかのぼる金融機関向けのもう一つの貸出ツールである。近年は再貸出がマネタリーベースの供給量に占める割合が低下しており、人民銀は主に農業部門の支援や貧困削減といった構造的課題への対応策としてこれを使用している。

再割引

再割引金利は人民銀が商業銀行を通じて借り手に課す金利である。ブルームバーグがまとめたデータによると、この金利は過去6年間変動していない。

その他…

金融政策の定義からはやや外れるものの、流動性管理のツールが他にも若干ある。その一つは、人民銀が国内の主要金融機関に対し口頭で指示を与える「窓口指導」だ。指示の内容は、国境をまたぐ資金について融資の伸びを特定の要件内にとどめることなど様々だ。このほかには、最良および最初の提示価格を優先するとのルールの下、レポ取引において金融機関が匿名で入札価格を提示することができる「X-Repo」がある。人民銀は2016年12月20日に銀行に対し「X-Repo」(Xは匿名性を意味する)の実施を通達したとされている。