カーボンオフセット価格、2029年までに3000%上昇の可能性も

Read the English version published on March 2, 2022.

この記事はブルームバーグ市場担当のJagteshwar SinghとTiffanie Tanが執筆しました。英語版はブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。

背景

2021年11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で出された結論は、排出ガス実質ゼロの世界 が近い将来に到来することを各国政府や投資家に告げるものでした。

約200カ国が署名したグラスゴー気候合意は、石炭使用量を根本的に削減し、化石燃料への補助金を廃止し、炭素排出量の削減を各国政府に約束させるものです。

この合意には産業界と消費者の根本的な変革がないのに意欲的すぎるとの意見が多い一方で、これが出発点だとする見方もあります。国や企業がカーボンオフセット・クレジットを購入することで自身の炭素排出量(カーボン)をオフセット(相殺)を模索する中で、排出権価格は今後も重要な意味を持ち続けるでしょう。

課題

カーボンクレジットを取引する市場は、気候変動に対して各国に責任を負わせる世界的な規制の取り組みに大きく左右されます。

ブルームバーグNEFでは、カーボンオフセット(検証済みの気候温暖化ガス削減を、別の場所で発生した排出量と相殺するために使用すること)に関するさまざまな規制シナリオに基づき、将来の市場価格を予想しています。

リサーチの結果、民間主導の自主的な取り組みによる「ボランタリー市場」のシナリオではカーボンクレジットは供給過剰になり、カーボンクレジット価格の上昇には長い時間がかかる見通しが示されました。その一方で、炭素を人工的に除去・回収する「カーボンリムーバル」からのクレジットのみが許可されるというシナリオでは、2029年までにカーボン価格が3000%に達するという価格高騰を引き起こす可能性があります。

COP26気候変動サミットを契機に、世界的に炭素排出量の削減の動きが活発化しています。しかし、炭素削減プロジェクトの規制はまだ新しい概念であり、「グリーンウォッシング」(うわべだけ環境に配慮しているかのように取り繕うこと)という問題も発生しています。実際に大気中から炭素を除去しているプロジェクトはごく一部であり、国によって規則も異なるだけでなく、多くの場合、炭素排出は公的機関によって規制されていません。

ブルームバーグNEFアナリストは、2022年の市場見通しで、「カーボンオフセット価格が大幅に上昇して、早ければ2030年には1900億ドル規模の市場が形成される可能性がある。だがその他のシナリオでは、今後20年ほどは価格がほぼ横ばいにとどまり、価格上昇が妨げらられる可能性が高い」と述べています。

ニューヨーク・マーカンタイル取引所のデータによると、2022年1月限のグローバル排出権オフセットCBL先物の1月25日の終値は1トン当たり7.53ドル、2025年7月限の終値は1トン当たり8.89ドルでした。この先物カーブは、期近の価格より期先の価格の方が高い「コンタンゴ」になっています。カーブは6カ月前より上方にシフトしており、2025年後半には先物価格は1トン当たり9ドルを超えることが示唆されています。

ブルームバーグNEFでは、カーボンオフセット取引が今後どのように規制されるかによって異なる3つの基本シナリオを準備しています。

ボランタリー市場:このシナリオでは、森林破壊の防止、森林再生の促進、炭素を排出しない調理用加熱機器の販売などの取り組みによってカーボンクレジットの供給が拡大し、「持続不可能なほど安価」になると予想しています。もし規制されなければ、供給は大きく伸びる一方、価格は長期にわたりゆっくりと上昇し、2050年には1トン当たり47ドルになると予想されます。カーボンクレジット購入者にとっては価格は低いほうが望ましくても、デベロッパー、銀行、ブローカーなど他の投資家には市場を支えるインセンティブがほとんど見い出せないでしょう。

カーボンリムーバル:このシナリオでは価格は最も上昇する見通しです。企業は各自の持続可能性目標の達成に向けて、炭素を除去することにより生じたクレジットの購入のみが認められますが、そのようなクレジットの供給量は制限されます。その結果、2029年にかけて価格は2975%上昇して1トン当たり224ドルに達した後、2050年には1トン当たり120ドルに落ち着くと予想されています。このような制度が導入されれば、世界が脱炭素化を目指す中、あらゆるレベルの生産財行動が変わっていくと考えられます。

ハイブリッド:最後のこのシナリオは上述の2つのシナリオを組み合わせたもので、2030年までに除去・回収のみのシナリオによる価格高騰が起こると想定し、その後は時間の経過とともに価格が落ち着きを取り戻すというものです。3つのシナリオ設定のカーボンオフセットの需要は同じであり、最終的には供給側が重要な役割を果たすことになります。

カーボン取引市場を追跡

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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。