本稿は、ファンダメンタルズ・データ・アナリスト中込安政が執筆し、ブルームバーグターミナルに掲載されたものです。ご契約者様は、こちらから全文をご覧いただけます。(08/02/2022)
背景
米連邦準備制度理事会(FRB)が7月に75ベーシスポイントの利上げに踏み切ったことから、米国の景気後退(リセッション)懸念が深まった結果、長期国債に対する強気シグナルが増大しています。
リセッションに言及するニュース記事が急増し、米長期国債を投資対象とする最大のファンドにとって好材料となっています。年限10年超の米国債に特化した上場投資信託(ETF)を中心に資金が流入している一方で、年限1年以下のETFは資金流出に苦しんでいます。市場のアナリストらは、国債利回りは2023年1-3月(第1四半期)以降に低下し始め、23年中は低下が続くとみています。長期債ETFのコール建玉残高がプット建玉残高を大きく上回っていることも、長期債に対する強気センチメントのシグナルを発しています。
課題
ブルームバーグターミナルの機能を使って、米国債市場を分析します。まず、ニュース・トレンド・チャートでリセッションが注目トピックになっている状況を確認してみます。
NT機能でリセッションに関するニュース記事をモニターしてみると、リセッションに言及している記事数が急増していることが分かります。
NT機能でリセッションに関するニュース記事をモニター (出所:ブルームバーグターミナル)
成長鈍化への懸念が強まる中、リセッションに言及するニュース記事が再び増加しています。19年8月および20年3月の記事数急増は、iシェアーズ 20年超国債ETFの価格高騰と時期が一致しています。ターミナル上でも確認できるリセッションに言及する記事の急増は、長期国債に上昇余地を残しているようです。NT機能では、15万件以上のニュースやソーシャルメディアを情報源として活用し、特定のトピックや企業に関する記事の件数推移を指定期間のチャートに表示して分析することができます。
追跡
次に、BI ETFSGを実行してETFの資金フローを分析してみます。長期国債ETFに買い意欲が戻ってきていることが、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)がモニターする資金フローデータで示されています。BIは400人以上のアナリストを擁するブルームバーグの投資調査部門です。
BI ETFSGを実行してETFの資金フローを分析(出所:ブルームバーグターミナル)
年限10年超の国債(青線)への資金流入は22年に最高水準に到達、年限3年-10年(ピンク色線)の中期国債がそれに続きます。対象的に、年限1年未満の短期国債(白線)からは急速に資金が流出しています。
次に、米国国内総生産(GDP)成長率について、アナリスト予想の変化をモニタリングしてみます。
GP機能で米国GDP予想および成長率の実績値を追跡(出所:ブルームバーグターミナル)
米アトランタ連銀のGDPナウは(英語版配信時のデータである)7月25日時点で、4-6月(第2四半期)に経済が1.65%の縮小を示唆していました。7月28日に公表されたGDP速報値は0.9%のマイナス成長であり、第1四半期も同1.6%減だったことから、定義上、リセッションの条件を満たすことになります。ただし、一般的には全米経済研究所(NBER)が米国のリセッション入りを判断する機関と位置付けられています。FRBの政策担当者は根強いインフレを食い止めるため、7月に再び大幅な利上げに踏み切りました。
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