韓国経済を巡る見方は、いま明確な転換点を迎えています。歴史的に語られてきた「ディスカウント」から、成長が期待される「プレミアム」への移行が進んでいます。地政学的変化と人工知能(AI)の活用が進む中で、韓国は資本市場を地域成長を支える中核として位置づけています。
とりわけ日本を含むアジア太平洋地域の投資家にとって、韓国国債(Korean Treasury Bond、KTB)市場の国際化は単なる分散投資にとどまりません。政策当局が「K-Alpha」と呼ぶ、透明性とアクセス性を備えた市場への入り口が広がっています。
構造的転換:「コリア・ディスカウント」を超えて
長年にわたり、規制上の障壁やガバナンスへの懸念を背景に、韓国の株式や債券にはいわゆる「コリア・ディスカウント」があると指摘されてきました。現在、この見方は構造改革と政府の取り組みによって、見直されつつあります。
東京で開催されたブルームバーグ主催セミナーにおいて、韓国の副首相兼企画財政部長官であるク・ユンチョル氏は、従来からの方針転換を示しました。政府の最優先課題は、資本市場を国際水準へ引き上げ、先進国株価指数および世界国債指数(World Government Bond Index:WGBI)への採用を実現することです。

「韓国の株式市場には、もはやディスカウントは存在しません。まもなく、“K”そのものがアルファを意味する時代に入ります。」
— ク・ユンチョル 副首相兼企画財政部長官
この動きは、堅調なファンダメンタルズに支えられています。世界的な不透明感が続く中でも、韓国のGDP成長率は今年2%に達すると見込まれています。また、2025年初頭から2026年2月にかけてKOSPI指数は160%上昇しました。
こうした背景には、「フィジカルAI」(産業分野へのAI応用)への戦略的な取り組みがあります。造船、ロボティクス、半導体分野での活用を通じて、テクノロジー・サプライチェーンにおける競争力の維持を図っています。
市場インフラの高度化:アクセス性と流動性の向上
市場の信頼性は、インフラに支えられています。海外投資家の参加を促進するため、韓国政府は市場インフラ、いわゆる「配管(プラミング)」の整備を進めています。目標は、特にWGBI採用を見据えた外国人投資家にとって障壁の少ない市場を実現することです。
主なオペレーション改革には以下が含まれます。
- 24時間FX取引の実現:2026年7月から、国内FX市場の取引時間を24時間体制に拡大し、KRWの取引を時間帯に関わらず可能にします。
- オムニバス口座の活用:グローバル・カストディアンが管理するオムニバス口座の活用により、実名確認やKYCは、カストディアンレベルで可能となり、事務負担が軽減されています。
- 決済時間の延長:時差による「プレファンディング」の課題に対応するため、債券決済システム(BOK-Wire+およびKSD e-SAFE)の稼働時間を韓国時間20時まで延長しました。
これらの施策により、市場機能は安定しています。地政学的緊張が続く中でも、セカンダリー市場の流動性は維持されており、2026年3月の5兆ウォン規模の30年債発行も、市場で消化されています。
テクノロジーの役割:人の知見と電子化の精度の融合
政策が枠組みを提供する一方で、テクノロジーが市場参加を支えています。電子取引の拡大により、従来の手動で不透明なプロセスから、効率性と透明性を重視した執行環境への移行が進んでいます。
ブルームバーグの電子取引ソリューションは、この変化を支え、既存のオーダー・マネジメント・システム(OMS)と統合された形でKTB取引を可能にします。投資家は、複数ディーラーの利回りを比較しながら「ベスト・エグゼキューション」を実現できます。また、KTB特有の価格精度といったデータ処理も、自動化により対応しています。
同時に、市場の発展においては「人」の関与も必要です。市場関係者や政策当局は、グローバル投資家の意見を取り入れながら制度の改善を進めています。
展望:2026年の戦略的方向性
2026年に向けて、KTB市場はアジア太平洋地域のポートフォリオ構築において重要性を増しています。WGBIへの採用により、500億~700億米ドルの資金流入が見込まれ、長期金利を20~50ベーシスポイント押し下げる可能性があります。
韓国市場はもはや周辺的な投資先ではなく、国際基準に沿った市場として位置づけられています。G7平均を下回る債務残高対GDP比率に加え、技術分野への継続的な投資がその基盤を支えています。
韓国市場は海外投資家に広く開かれています。市場のデジタル化と接続性、国際化が進む中、今この段階で関与する投資家は、今後10年にわたる市場機会を捉える上で優位性を持つ可能性があります。

「韓国市場へのアクセスにおいて、投資家が一切の困難を感じないようにすることが目標です。ご意見やご提案があれば、ぜひお聞かせください。それを最優先課題として取り組みます。」
— イ・ヒョンイル 国際金融局長(韓国企画財政部)