⽇銀のETF購⼊計画と市場への影響

本稿は、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のシニア・アナリストRebecca Sinおよびブルームバーグ・エコノミクスの主席エコノミスト増島 雄樹が執筆し、ブルームバーグターミナルに掲載されたものです。(12/22/21)

日本銀行は2022年に上場投資信託(ETF)の購入をこれまでより少額に抑える可能性があります。しかし市場が日銀による買い入れに大きく依存する状態にある中、特に岸田文雄首相が「新しい日本型資本主義」の全面的な実施を進めたり、新型コロナウイルスの変異株がさらに出現したりした場合には、購入額を大幅に減らすのは難しいかもしれません。

株価高騰でETF買い入れは減少へ

日銀が企業や家計のセンチメントを支える目的で10年に開始したETF購入ですが、その年間購入額の上限は12兆円となっています。日本株の回復を受けて、日銀は購入額削減の意向を示唆するようになりました。今年初めに日銀はETFおよび不動産投資信託(REIT)の年間買い入れ額の原則を削除する方向であることを明らかにし、今年の現時点までのETF購入額は1兆円ほどで、これまでよりも大幅に減っています。日銀は10月1日までの1週間で1402億円のETFを買い入れましたが、それ以降はETF購入を実施していません。過去の購入パターンを踏まえると、前場で東証株価指数(TOPIX)の下落率が2%を超えると日銀が後場でETFを買い入れる可能性がありますが、10月1日以降、TOPIXはこの2%安の基準より下げていません。

⽇銀のETFおよびREIT保有残⾼の推移

⽇銀のETFおよびREIT保有残⾼の推移

Source: Bloomberg

日銀がさらにETFを購入する可能性

最近の日銀によるETF購入とそのパターンに基づくブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の試算によれば、日銀のETF購入額は22年に約1兆5000億円にとどまる見通しです。しかしこの試算には、新型コロナウイルスの変異株または岸田首相の「新しい日本型資本主義」のいずれかによる市場への急激なショックが起こる可能性は含まれていません。岸田首相はキャピタルゲイン税の引き上げや自社株買い規制、株式配当課税の見直しにたびたび言及しています。首相がこうした措置のいずれかを達成できるかは不明ですが、これらに反応して株式市場が中期的な下落局面に入った場合は、日銀が22年に2兆-2.5兆円程度のETF購入に動く可能性がある、とBIでは試算しています。

⽇銀のETF・REIT12カ⽉購⼊額推移

⽇銀のETF・REIT12カ⽉購⼊額推移

Source: Bloomberg

日銀によるETF購入の影響

日本で上場しているETF243銘柄の運用資産総額は5500億ドル(62兆円)に上り、日銀はこのETF資産の59%を保有しています。なお、日本で上場しているETFの98%は日本の資産で運用しています。このように日銀のETF保有比率は非常に高く、仮に日銀が保有額を減らそうとしても、それには多大な困難を伴う可能性があります。ETFの発行体は運用資産の減少による打撃を受ける可能性があり、市場センチメント全般への打撃も、はるかに深刻になりえます。

⽇銀によるETF購⼊実績

⽇銀によるETF購⼊実績

Source: Bloomberg

 世界のETF保有残高でアジアのシェアはごく一部

アジアのETF運用資産は依然として世界全体のETF資産のごく小さな部分にすぎず、市場シェアはわずか10%です。日本の運用資産額はアジアでは最大ですが、これは日銀によるところが大きいといえるでしょう。しかし日本のETFは投資先資産が海外に分散されておらず、ETFの発行体は現在の慣行を見直して、より革新的なファンドを設定することでより自律的な投資需要を引き付ける必要があると考えられます。日銀の支援がなくなれば、日本は1995年にアジアで初めてETFを立ち上げた国でありながら、アジアETFランキングにおいて首位の座を失うことになりそうです。

世界のETF保有残⾼の推移

世界のETF保有残⾼の推移

Source: Bloomberg Intelligence

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