英中銀高官、早急なオフィス勤務復帰は「不可能」との見解:WFHトラッカー

Read the English version published on September 4, 2020.

この記事はブルームバーグ・ニュースによるもので、ブルームバーグ・ターミナルに最初に掲載されました。

イングランド銀行(英中央銀行)は、オフィス勤務の日常が戻る日は近くないとみています。

英中銀の金融安定政策・リスク(FRRS)部門でエグゼクティブ・ディレクターを務めるAlex Brazier氏は水曜の議会公聴会で「実際には多くの人を早急にオフィス勤務に戻すのは不可能」との見解を示しました。公共交通機関での安全な対人距離の確保も課題の1つですが、そもそもソーシャルディスタンスに関する指針に従えば密度の高いオフィス空間は使用はできないことになります。

同氏は、「今後数週間から数カ月の新型コロナをめぐる状況に応じた、より段階的なオフィス復帰になると思われます」と述べています。

こうした制約があるため、今では正常化の兆しも若干見え始めているとはいえ、将来の勤務環境が具体的などのようなものになるのかはまだ議論の余地があります。英国の国家統計局が集計した実験的データによれば、ロンドンでは、8月24日から30日の期間における自動車、歩行者、自転車の数はロックダウン前の水準に戻っています。

今後の勤務形態についての見通しを発表し始めた企業もあり、ここでは金融業界の各社が発表したさまざまなアプローチをご紹介します。

メトロ・バンク:社員アンケートを行った結果、在宅勤務中の社員のうち、週5日のオフィス勤務復帰を希望しているのはわずか4%であることが分かったことから、同行は一部の支店で在宅勤務を認める方針です。

同社のDaniel Frumkin最高経営責任者(CEO)は「在宅勤務を増やす一方で、バックオフィスの社員は、より長期的に店舗以外のさまざまな場所で週2日ほど勤務できるようにしたい。ホットデスキングや協業スペースなど、目的に応じたスペースを再設計するため資金を投じる必要があります」と述べています。同行では、来年までどの社員もオフィス勤務復帰しないとみています。

ゴールドマン・サックス・グループ:投資銀行のゴールドマン・サックスは最近、数百名のシニアスタッフにロンドン・オフィスへの復帰を呼びかけました。8月27日付けのファイナンシャル・ニュース(FN)によれば、同社はオフィス勤務復帰を促すインセンティブとして無料の食事や防具、施設内の保育所などを提供していますが、出社は強制ではなく、同社広報担当者は声明で「引き続き人命を最優先して英国政府の指針に従う」と述べています。

バンク・オブ・ニューヨーク・メロン:BNYメロンは、一部社員を9月にオフィスに復帰させる当初の計画を延期し、大半の社員に対し年末まで在宅勤務を続けるよう指示しました。同社には約4万8000人の社員がいますが、約96%は3月以来、在宅勤務となっています。8月26日に同社広報担当者は少なくとも来年1月までそうした状況が続くことを確認する声明を出しています。

JPモルガン・チェース・アンド・カンパニー:米国ニューヨークを本拠とする同行は、社員にオフィス勤務と在宅勤務を交互に繰り返す勤務体系を認める方針です。同行CEOであるDaniel Pinto氏は6月のインタビューで、社員が常時在宅勤務となる可能性は低いものの、ローテーションを組んで常に約3分の1の社員が在宅勤務している状況が予想されると述べています。

シティ、バークレイズ

シティグループ:同行行は今年の夏に約5%の社員をニューヨーク本社でのオフィス勤務に復帰させましたが、テキサス州とフロリダ州を含め新型コロナウイルス感染者が再び増加している米国の州では同様のオフィス勤務復帰計画を延期しました。最近になって同社は北米従業員に対し、レイバー・デー(9月7日)後に経営陣トップが現地の感染データを見てオフィス再開計画を決定すると伝えています。

バークレイズ:英銀行のバークレイズでは約6万9000人のスタッフが少なくとも9月末まで在宅勤務となっています。同社は各社員のオフィス復帰日を個別に通知する予定で、復帰は10月から数カ月にわたって行われる見通しです。7月のブルームバーグ テレビジョンとのインタビューで、同行CEOのJes Staley 氏は「社員をオフィスに復帰させ物理的な空間で共に働けるようにするのは重要」との見解を示しつつも、健康と安全上の懸念は甚大と強調したうえで、具体的なスケジュールは示しませんでした。

バンク・オブ・アメリカ:全米第2位の規模を持つ同行は、社員に30日前の通知をしたうえで9月7日のレイバー・デーより段階的にオフィス復帰を開始する予定です。このプロセスはおそらく、同社の慎重なアプローチに沿って当初は限定的なものとなるでしょう。復帰手順は役割や部門、場所に基づいて決定されます。出張は経営陣トップの承認を得ない限り9月7日まで禁止され、対面式のイベントも社内外で禁止されています。

シンガポールの銀行

DBSグループ・ホールディングス:シンガポール最大の銀行である同行は現地従業員の約70%が在宅勤務していると述べています。同社の広報担当者は、電子メールの質問に答え、「在宅勤務による生産性への影響は短期的にはみられない一方で、カスタマーエクスペリエンスや実験的試み、革新への長期的な影響は明らかではなく、また、心理的・文化的に在宅勤務が与える影響を見極めることも重要。何が新しいベストプラクティスとなるのかを模索し続けている」と述べています。

オーバーシー・チャイニーズ銀行:シンガポール第2位の規模を持つ同行では、企業セキュリティ統括のFrancisco John Celio氏によれば、オフィス勤務とする社員比率の目標値は定めていません。現在、オフィス勤務している社員は全体の60%弱です。同氏によれば、この数値は同社事業と消費者の活動を支えるために必要なサービスや職務、プロセスならびに新型コロナウイルスによる環境リスク、そして社員の健康状態や家族の状況を考慮した結果とのことです。

ナットウエスト・グループ:英銀行の同行は7月に、2020年の年末まで80%の社員を在宅勤務にすると発表し、それ以前の計画であった9月までのオフィス勤務復帰計画を延期しました。この決定の影響を受ける社員は約5万人です。

シュローダー:ロンドンに本社を置く資産運用会社の同社は8月に「フレキシブルな勤務形態を恒久的に採用する」と発表しました。同社の広報担当者によれば、5000名近い社員にとって必要であれば在宅勤務することが容易となり、出社したり、社内システムにログオンしたりする時間の制約が緩和されるとのことです。この変更は世界中の社員に適用されますが職務によって異なります。

スタンダード・ライフ・アバディーン:エジンバラに本社を置く同社は、今後数カ月間は少数の社員にオフィス勤務を認めるものの、大半の社員は少なくとも今年の年末まで在宅勤務とする計画です。

IGグループ・ホールディングス:取引プラットフォームを提供する同社のCEOであるJon Noble氏による8月26日付けの社内メモによれば、社員は来年までオフィス勤務の必要はなく、この決定は2021年初頭に見直される予定です。出社する社員は一方向システムを使うことになり、職場はデスクや会議室が減って「見た目も感じも違った職場になるでしょう」と同氏は述べています。

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