【端末活用術】⽇本のベーシス取引に混乱も、⽇銀の政策転換への賭け続く

Read the English version published on June 27, 2022.

本稿はブルームバーグのマーケット・スペシャリスト Ardha V K、中込安政、Luca Bianchi、Wendy TanおよびMasaki Kondoが執筆し、 英語版がブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。契約者様は、こちらから全文をお読みいただけます。

背景

日本銀行は国債を空売りする投資家との戦いをひとまず制したようですが、政策転換についての臆測は当分払拭(ふっしょく)されそうにありません。

6月中旬に日銀が10年国債利回りの上限を0.25%に抑えるために歴史的介入を行ったことで、投資家は手じまいを余儀なくされ、レバレッジ投資家の間で 一般的なベーシス取引(原資産の現物債と先物の裁定取引)に混乱が生じました。ポジション手じまいを急いだ投資家には大きな損失が出ましたが、日銀の超ハト派姿勢からの政策転換にいまだ賭けていることがオプション市場から見て取れます。

課題

ブルームバーグのチャート機能を使って、債券市場を分析します。

日本国債先物のチーペスト銘柄を確認

JBA <Comdty> DLV <GO>を実行し、日本国債先物のチーペスト銘柄を確認

6月の日銀政策決定会合での主な意見によると、一部の理事は賃上げを後押しするために金融緩和を継続する必要性を指摘しました。日銀が発表した1-3月の資金循環統計によると、2022年3月末時点の日銀の国債保有比率は全体の48.2%で、前期改定値の48%から上昇しています。ブルームバーグのチャートツールJBA Comdty HCTD <GO>を使って、インプライドレポレートの推移を確認します。

インプライドレポレートとは、受け渡し適格債を買って先物を売るロングベーシスと呼ばれる取引の売買から得られる実効レートを指すものですが、先物を売却し、チーペスト(受け渡し適格最割安)銘柄の10年現物債を購入する投資家には、7月4日午後4時56分時点で1.33%の損失が出る見込みです。同時に、この値はリバースポジションを取り、これは先物買いチーペスト銘柄売りを行う投資家が得られる利益を意味します。

6月、この取引に混乱が生じました。ブルームバーグのチャートツールを使って、投資家の損益の推移を詳細に確認できます。

インプライドレポレートの推移を確認

JBA Comdty HCTD <GO>を実行し、インプライドレポレートの推移を確認

チーペスト銘柄を売り、先物を買って利益を得ようとしていた投資家は、日銀による歴史的介入で大きな混乱に直面しました。日銀が市場から国債を吸い上げたことでチーペスト銘柄のプールが不足し、ショートベーシス取引を困難にしたのです。

日銀がチーペスト銘柄の国債を無制限に購入し、投機筋が手を引いたことで先物市場は幾分回復しました。それでも、インプライドレポレートは急落前の水準から大きくかい離しており、日銀と投資家の攻防戦はまだ終結していないことを示唆しています。「インプライドレポ」のチェックを外し、「グロスベーシス」にチェックを入れると、緑色のグロスベーシス線は、ピークこそ過ぎたものの高止まりの状態で、チーペスト銘柄が先物に比べてまだ割高であることが分かります。

この縮小は先物市場にのみ顕在化したわけではなく、スワップ先物に対するスプレッドにも市場の混乱が見られました。

フォワード金利スワップと先物のフォワードイールドの差を追跡

IVSP <GO>を実行し、フォワード金利スワップと先物のフォワードイールドの差を追跡

追跡

インボイススプレッドとは、フォワード金利スワップと、債券の期近先物のフォワードイールドの差を意味します。この取引は、投資家が利回り差の拡大・縮小にポジションを取る方法で、基本的に先物市場とスワップ市場の相対リスクを利用するものです。

フォワードイールド(白線)は満期の近いフォワードスワップレートを上回る水準まで上昇しました。インボイススプレッド(紫線)がマイナス圏に到達するのは珍しい現象で、先物市場でポジション手じまいが殺到し、約12ベーシスポイント急落しました。フォワードイールドは6月15日、日銀が10年国債利回りの上限とする0.25%をはるかに超える水準まで急上昇しました。

次に、オプション市場での投資家のポジションを確認します。

日本国債のオプション・ボラティリティー・サーフェスを確認

JBA Comdty OVDV <GO>を実行し、日本国債のオプション・ボラティリティー・サーフェスを確認

インプライドボラティリティーが高いのは、12月満期およびその他期先物の低デルタプットオプションとなっています。オプション市場は、政策の転換による金利の急上昇(国債先物価格は急落)のリスクにいまだ備えているようです。

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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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