ESGデータのワンストップショップを目指すブルームバーグ

Read the English version published on November 18, 2021.

独立系データプロバイダー最後の大手、ブルームバーグは、金融業界におけるESG情報の最初のよりどころになることを目標にしています。

ここ数年、ブルームバーグはその膨大な企業データと参照データのプールを活用して、サステナビリティ関連商品を数多く生み出してきました。世界の気候変動と社会的課題に対応するために資本を配分する必要性に迫られる中、ニューヨークを本拠地とするブルームバーグは、今やデータプロバイダーとして投資家の自然の選択になったとみています。

「私たちは、お客さまがESGの観点から必要とする情報をすべて取得し、特定の企業の全体的な事業内容にESGを取り込むことができる、お客さまから選ばれるシステムになりたいと考えています」とブルームバーグ・サステナブル・ファイナンス・ソリューション部門グローバルヘッドのPatricia TorresはA-TeamのESG Insightに語ります。「ブルームバーグでは複数のデータソースからESGスコアとデータを取り込んでいるため、他のデータ要素と組み合わせて統合し、ESGを全体的な視点から見ることができます」

元債券トレーダーの資産家でニューヨーク市長も務めたマイケル・ブルームバーグが創設したブルームバーグは、顧客のワークフローにフィードされる専門のESGデータ商品を数多く生み出しており、約1万2000社に上る企業に関してさまざまな指標や開示スコアを幅広く提供するほか、5万社それぞれの具体的な温室効果ガス排出量推定値も提供しています。

追跡可能なデータ

入手可能なESG情報の大半は非構造化データなので、機械では読み取れません。そこで、世界各地のデータ収集担当者数百名がさまざまなESGリポートを研究し、インサイトを得て、新たな商品を構築しているとTorresは述べます。

「重要なのはデータが良質で説得力があること、そして互換性があり、データの出所まで追跡可能であることです」

Torresによれば、データのトレーサビリティ(追跡可能性)は、ブルームバーグを他社と差別化するUSP(賞品やサービスが持つ独自の強み)の1つで、信頼性を維持し、ユーザーの信頼を確保するための厳格なデータ収集ルールに組み込まれています。

ユーザーにフィードされるすべてのデータには、情報提供社へのリンクが付いています。

「さらに多くの良質なデータが利用可能となって初めて世の中を大きく変えられるのだと私たちは信じています」とTorresは言います。「ですから、不足したデータを予想値で補うことのないようにするのがとても重要なのです。弊社独自のデータには、企業の開示データのみを使用しています」

新しいプロダクト

ファンドマネジャーが追跡したいと思う最も重要なデータ指標の1つは自分が運用するファンドのカーボンフットプリントですが、現在この情報を自己報告している企業はごく少数です。ブルームバーグは、世界5万社以上のスコープ1とスコープ2の温室効果ガス排出量を予想していますが、これは1社当たり800種類のデータポイントに基づいて算出しています。

これには等級分けがされているのですが、これは入手可能な同業他社のデータに基づき、予想値が正確であるとブルームバーグが信頼する度合いを明確に示す、信頼性の格付けです。

ブルームバーグがスコープ3のデータを組み入れるのに時間がかかった理由としては、この情報がさらに入手困難であることと、収集方法が不適切であれば危険なギャップを生む可能性があるためだとTorresは言います。

こうした理由から、スコープ3データは近日中に石油・ガス業界でのみ利用可能となる予定です。

Torresは、「弊社のモデルの信頼を裏付けとなる実績データがすべてのセクターについて十分にあるわけではない」と述べています。

移行スコア

インパクト投資スコアと開示情報の需要は高まる一方で、データの提供社と管理会社は常に緊張感を持って取り組んでいます。ブルームバーグにとってこれは金融機関が求める情報の幅と複雑性に応える新商品を開発する必要があることを意味します。

今年初めには、石油・ガス業界を皮切りに気候変動スコアを発表しました。これはネットゼロに向けた進捗状況を企業各社の公式目標と比較評価するものです。最近、このスコアには金属・鉱業セクターも含まれるよう拡張されました。

気候変動スコアは、ブルームバーグのニュー・エナジー・ファイナンス・リサーチ事業部門であるブルームバーグNEF(BNEF)と、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の分析部門によるインサイトとともに提供されます。

このスコアは、グローバル企業の排出量データの透明性を向上させるという1年がかりの目標を達成したことによるものです。BIのインサイトによるもう一つの成果は、航空、化学品、金属、鉱業、石油、ガス、鉄鋼、公益事業の各業界200社以上の低炭素社会への移行スコアを作成したことです。将来的には対象企業を2000社に増やすことを目指しています。

「これらの業界を選択したのは、最も炭素集約度が高いからです」とTorresは言います。「気候変動危機に関連があるこれらの業界すべてに取り組めば、おそらくカーボンフットプリントが最大の企業の大半に取り組むことになると考えています」

ESGの問題においては、環境要因の情報提供に多くのエネルギーが費やされてきましたが、その一方でブルームバーグは社会およびガバナンス領域における情報の需要に応える準備に追われています。

「お客さまには、ESGは気候だけでなく、環境、社会、ガバナンス3つすべてに関するものだということを理解していただく必要があります」

投資家のアクティビズム

ブルームバーグ男女平等指数(GEI)を使用すると、企業の男女平等の構成について深く掘り下げることができます。この指数は、女性管理職の人数だけでなく、賃金格差の構造、昇進実績、採用戦略、コロナ禍において女性社員を維持するために行った取り組みなども考慮しています。

BIが提供するもう1つの商品は投資家のアクティビズムに関する分析で、今後、水不足や生物多様性などの問題と「他にも私たちが取り組むべきトピック」のリサーチを予定しているとTorresは見込んでいます。

ESGのE(環境)データの収集は比較的簡単ですが、S(社会)とG(ガバナンス)の情報は報告にばらつきがあり、そう簡単にはいかないでしょうとTorresは述べています。

GEIを集計した経験から、このような非構造化データの収集と処理には時間がかかることをブルームバーグでは理解しています。この点について、昨年米国でジョージ・フロイド氏の死をきっかけに強まった人種差別への懸念を例に説明します。

「取締役会の構成についてのより詳細なデータが必要ですが、弊社でもすべて把握しているわけではありません。例えば、取締役会における人種的マイノリティーの人数など、すべてを把握するのは困難です」とTorresは言います。「こうした情報はどれも極めて重要ですが、あいにく世界中のすべての企業が共有しているわけではないのです」

最終的には、世界に必要な変化をもたらすことができる企業へ投資家が資金を投入できるようにするデータが必要です。しかし、考えている以上の目的を果たすことができるとTorresは主張します。

ESGへの取り組みが足りない企業がデータにより強調されることで、パフォーマンスの良くない企業への警告になります。これにより、投資家は企業と向き合い、企業がポートフォリオに残りたければESGのパフォーマンスを改善するよう働きかけることができるのです。

「ESG分野におけるお客さまの今後の正確性は、ご利用になるデータの正確性にかかっています」とTorresは述べます。「不正確な予想値を使っていたら、投資先としてふさわしくない企業に資金および資本を集めることになってしまうでしょう」

本記事はA-Team Insightからの転載です。

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