FRTB最終規則、遵守への課題:Part 3

Read the English Version published on October 04, 2019

本稿はGlobal Risk RegulatorのJustin Pugsleyが執筆し、ブルームバーグは使用ライセンスを得ています。

FRTB規制の最終規則が公表され、バトンはバーゼル委員会から各国・地域の規制当局に渡されました。次は各国・地域が規則の法制化を図ります。FRTB規制は複雑ですが明確に規定された規則です。それでも国・地域によって解釈に差が出る可能性があります。

1つの問題は、適用時期に差が出る可能性があることです。

FRTB規制の大部分は2022年1月1日に適用開始となる予定です。関係者によれば、日本や香港などのアジア各国はこの期限を順守できる可能性が高いとみられています。

ブルームバーグの調べでは、2018年第3四半期現在で、マーケットリスクに係るリスクアセット全体の17.1%をモルガン・スタンレーが保有しています。次いで、ゴールドマン・サックスが12.3%、バークレイズが9.4%、ドイツ銀行およびJPモルガンが8.9%、クレディ・スイスが6.4%となっています。

しかし米国については、現在の規制緩和の流れもあり、規制の内容と適用時期についてはやや不明確な点があります。これは、G-SIBs(グローバルなシステム上重要な銀行)よりも中小銀行にとってメリットとなっています。

欧州については、FRTB規制適用期限が、自己資本規制に関するEU規則および指令の実施時期と微妙に重なり合っています。このため、最近開催されたある業界コンファレンスでは、FRTB規制の一部についてその適用が2025年まで先延ばしとなる可能性も示唆されました。

時間稼ぎ

2022年の適用期限が厳しすぎると考える一部の銀行は、特に欧州での対応が遅れている現状に鑑み、時間稼ぎのために各国・地域の規制当局に延期を強く要請するでしょう。

Vermegで規制報告戦略ヘッドを務めるJames Phillips氏は、FRTB規制の適用についてさまざまな報道が飛び交い混乱が生じていると述べています。当初は所要自己資本額の報告のみで実際の資本賦課実施はその後になるといった報道や、2020年からは標準的手法(SA)のみが適用され、内部モデル手法(IMA)の適用は2022年からになるといった報道がなされています。

「適用期限が2025年まで延期される可能性もあります。その一方で、各国・地域の適用時期の違いにより裁定機会が発生する可能性があります。それも所要自己資本額の報告に関してではなく、実際の資本賦課そのものに関してです」とPhillips氏は述べています。

英Accentureでリスク管理の責任者を務めるPeter Beardshaw氏も、各国・地域のFRTB規制適用期限に数カ月ではなく1年以上のずれが生じた場合には裁定機会が発生する可能性があることを認めています。しかし、そう簡単に起きることではないと考えています。

「グローバルに展開する投資銀行のことを考えると、各国・地域で同一の規制が適用されることが望ましいのは明らかです。規制上の裁定機会がもたらすメリットが、国・地域で異なる規制が適用されることにより発生するオペレーショナルリスクを上回ることはないと考えています」

銀行にとって難しいのは、他行に先駆けてFRTB規制が適用された場合に競争上不利になる可能性があるという点です。このため、各規制当局は適用期限について足並みを揃える努力をするだろうとBeardshaw氏はみています。

自己資本への影響

最終規則に基づくマーケットリスクに係る所要自己資本額は、バーゼル2.5に基づく所要自己資本額と比較して加重平均で約22%増加するとバーゼル委では試算しています。しかし、一部の銀行からは試算があまりにも楽観的すぎると異議を唱える声が上がっています。

しかし、バーゼル委は、2016年の規則文書に基づく所要自己資本額は約40%増であったとしています。従って、今回の変更によって多くの銀行に所要自己資本削減効果がもたらされましたが、G-SIBsについてはその効果はほとんどありませんでした。

バーゼル委によれば、マーケットリスクに係るリスクアセットがリスクアセット全体に占める比率は約5%と低めにとどまっています。しかし、一部のG-SIBsは規模が大きく複雑なトレーディング勘定を保有しているためリスクアセットの比率が著しく高く、FRTB規制の影響をかなり強く受けています。

ブルームバーグの調べでは、2018年第3四半期現在で、マーケットリスクに係るリスクアセット全体の17.1%をモルガン・スタンレーが保有しています。次いで、ゴールドマン・サックスが12.3%、バークレイズが9.4%、ドイツ銀行およびJPモルガンが8.9%、クレディ・スイスが6.4%となっています。

ある業界関係者はFRTBをこれまでで最も複雑な規制と評し、対応にあたって直面する課題を銀行は決して過小評価すべきでないと警告しています。

また、モデルの承認を得るのに1年、モデルのテストランには最長で1年半を要するので、可及的速やかに準備作業を開始すべきとしています。

早期に準備を開始すれば、予期せぬ結果が生じた場合に当局が早めに対応することができるというメリットもあります。