取引の自動化はトレーダーの支援ツール

Read the English version published on July 1, 2020.

本稿はブルームバーグのトレード・オートメーション&アナリティクスの責任者であるRavi Sawhneyが執筆しました。

ここ数年、金融機関における業務の「自動化」が何を意味するのか、そしてそれが今後の業務にどのような影響を与えるのかに注目が集まっています。機械による業務が増えた職場であっても、人は生き残るだけでなく、繁栄を享受できるという仮説があります。トレーダーの場合、常に複雑で予期せぬ状況に直面していることから、自動化は仕事を奪うものではなく、むしろ相棒となります。

機械がますます複雑な作業をこなすのがあたりまえとして受け入れられるようになる中、機械への責務の移行に伴い、労働者に求められる平均的なスキルセットは自然と増えていきます。

この考え方は、認知心理学者のLisanne Bainbridge博士が、30年以上前に執筆した研究論文「Ironies of Automation (自動化の皮肉)」の中で最初に提案したものですが、これが当時よりも現在により当てはまるのはほぼ間違いないでしょう。Bainbridge博士は論文の中で、あらゆる作業が自動化されたとき、人間のオペレーターの主な業務は、機械が正常に動作しているかを監視し、不具合が発生した際は、その業務を引き受けることになるという考えを提示しています。この論文は工場での作業を念頭に執筆されたものですが、その考え方はトレーディングデスク業務にも通じるものがあります。

自動化に伴う、求められるスキルセットの進化

現在、トレーダーはポートフォリオマネジャーから売買注文を受け取り、ルールに基づいて執行します。これらのルールの中には、会社やデスクによって定義されているもの(ディーラー何社にクオートをリクエストするか、どの価格水準が適切かといった最良執行方針)もあれば、トレーダーのスキルセットに依存するもの(市場環境を見計らった執行のタイミングや、対象銘柄の流動性を考慮したカウンターパーティーの選択など)もあります。

自動取引システムによる執行の増加に伴い、トレーダーに必要なスキルは拡大します。トレーダーの任務は、自動執行から除外した取引の執行にとどまりません。自動化の導入が必要なデスクで、新しいテクノロジーを管理し、より深い分析スキルを身につけて、自動取引システムのパフォーマンスを効果的に検証し、ルールの改善が行えるようなる必要があります。

米リサーチ会社WBR Insightsが最近実施した、米国のトレーディング責任者100人を対象とした調査で、自動化を進める一番の動機は「効率性を高めることでコストを管理したい」であることが分かりました。実際、高度に自動化が進んだトレーディングデスクでは、自動取引システムがポートフォリオマネジャーから受信した注文を、トレーダーが事前設定したルールに基づいて自動執行しています。

こうした状況では、トレーダーは自動取引システムが「期待通り」に動作しているかどうかを常に監視する必要があります。自動化の効果を定期的にレビューし、適切な注文が選択され自動執行されているかどうかを検証する必要があります。また、最適なディーラーが選択されているか、さらに、自分が期待する執行率を達成するための執行許容範囲は適切に設定されているかといった点の確認も重要です。つまり目標を最適化するために、ルールを見直し、更新する、という周期的なプロセスが存在します。

自動取引システムの中には、処理できない明らかなシナリオが発生したときに、事前にプログラムされた警告を表示するものもあります。しかし、これらのシステムは、依然として人間のトレーダーによる監視や、問題解決に大きく依存し、トレーダーは自動取引システムが生成するリアルタイムの情報を処理して微妙なネガティブパターンを見いだしたり、異常な動きを早期に発見したりする必要があります。また、トレーダーが執行プロセスをシステムから引き継ぎ、執行が正常に行われるように万全を期す必要が生じる場合もあるでしょう。

テクノロジーと自動システムの機能拡張

監視ツールの効果は、そのアウトプットを検証するトレーダーの能力によって決まります。取引の監視に当たるトレーダーは、取引ライフサイクルのプロセスと仕組みを深く理解し、最短で問題を解決できる方法を判断する必要があります。このことは、トレーダーが高度なスキルを身につける必要があり、新しいテクノロジーはトレーダーの業務フローを支援し効率性を高める、という考えをさらに裏付けるものです。

これまでテクノロジーを提供する側は、自動化が人間のトレーダーの職を奪うのではなく、支援するという原則を常に推進してきました。自動システムを用いるトレーダーは、テクノロジーを使いこなすスキルと変化の激しい市場を乗り切るトレーディング能力の両方を兼ね備える必要があります。

ブルームバーグのルール・ビルダー・ソリューションは、世界中の債券、株式、および先物のトレーディングデスクに自動取引機能を提供し、トレーダーが生産的かつ一貫した取引を遂行し、最良執行方針を達成できるよう支援します。

債券取引の場合、ルール・ビルダーのコ・パイロット機能により、トレーダーはディーラーの選択から執行まで、さまざまなタスクの自動化を分割して管理することができます。さらに、トレーダーは執行タスクのフォールアウトルールの定義が可能で、限られた時間枠内に特定の条件が満たされない場合、速やかにライブの相対取引へと切り替え、取引執行を引き継ぐことができます。

執行デスクの自動化が進むにつれ、その環境で活躍するトレーダーに求められるスキルセットもまた進化、洗練されてきています。

Bainbridge博士が研究論文で強調しているように、これらのスキルを開発し、向上を図り続けるには、自動化の導入そのものよりも、これまで以上のテクノロジーに関する知恵や創意工夫といったものが必要になるかもしれません。