アジアのバイサイド:2030年への軌道

Read the English version published on January 4, 2022.

APACバイサイドフォーラム2021では、ビジネスリーダー、ブルームバーグのソートリーダー、APACバイサイド・カウンシルのメンバーなど世界各地から一流の専門家が集結しました。7つのセッションにわたり活発に議論を交わしながらトレンドを分析し、2030年までのバイサイドの方向性を描きました。

本イベントは2021年10月26日、27日、28日の3日間にわたりオンラインで開催されました。アジア太平洋をはじめ、世界各地から1000人を超える金融業界関係者の皆さまにご参加いただきました。

第1日目(10月26日)のメインイベントは「2030年までのバイサイド」(Buy-side to 2030)でした。パネルディスカッション・談話・対談では活発な議論が交わされ、「データとテクノロジー」、「サステナビリティとグリーンファイナンス」、「地理的・人口統計的な観点から見える投資機会」の3つの主要テーマを掘り下げました。以下はディスカッションの詳細です。

データとテクノロジー

今回のフォーラムでは、新しく適切で安全性の高いデータソースを見つけること、そうしたデータを活用できる技術ツールおよび人材を確保することの重要性が広く認識されました。

現時点、さらに将来にわたる主要課題として、使用するオルタナティブ・データソースまたは非構造化データソースの特定、投資プロセスにおけるデータソースの価値の定量化、データを扱う人材の確保、効果的なデータクレンジングと標準化が浮上しました。

友邦保険控股(AIAグループ)のチーフ投資オフィサー、Mark Konyn氏は次のように発言しました。「投資プロセスの一環として必要な情報を得るために、これまで以上に広く網を張り巡らせると、必然的に従来のデータセットから離れることになります。増え続ける非構造化データを含めることが求められ、データの処理・分析方法に大きな負担がかかっています」

パネリストは「データの問題」に対するさまざまな戦略や対応を確認し、万能な解決法はないということで意見が一致しました。

多くの企業は膨大な非構造化データを部分的に分析するためのAIアプリケーションを検討し、トップクラスのデータアナリストの採用に注力しています。クラウド、オンプレミス、およびハイブリッドのデータホスティングはすべて効果的な運用モデルで、次世代テクノロジーが最も重要であることが認識されました。また、クオンツとファンダメンタルを融合した「クオンタメンタル投資」が主流になるとの予想で、サイバーセキュリティーへのさらなる配慮が必要になるとされました。

サステナビリティとグリーンファイナンス

2050年までにの二酸化炭素排出量ネットゼロを達成すべく世界中が注目し取り組む中、ESG投資は官民を問わず中心的な話題となるでしょう。

過去2年間で、各国政府のネットゼロ目標達成に向けた誓約が飛躍的に増加しました。2020年初では、世界の二酸化炭素排出量の4分の1ほどしかカバーされていませんでしたが、2021年11月には80%近くまで上昇しました。

ブルームバーグ会長のピーター・T・グラウアーはフォーラムの開会の辞で次のように述べました。「ブルームバーグは、サステナブル金融は経済・企業・社会にとって信頼できるものだと考えています。次世代の投資家はポートフォリオにもっと多くのものを求めていて、自分の投資が本当の意味で変化をもたらすことを期待しています」

「つい最近まで、ESGやサステナブル投資はパフォーマンスのトレードオフと同義でした。しかし、ここ数年でこれが180度変化したのは明らかです。つまり、ESG投資によるリターンやパフォーマンスの向上が期待できるということです」とMPower Partnersのゼネラル・パートナー、キャシー松井氏は述べました。

さらに、松井氏は単なるコンプライアンス活動以上のものになりつつあるESGの重要性を強調しました。持続可能かつ拡張性のある成長を実現するには、グッドガバナンス(「良い統治」)の原則から性別多様性や気候変動への関心まで、ESGが企業の中核的な経営戦略に完全に統合されている必要があります。

規制当局や専門家の皆さまには、優れた政策の枠組みとは何かについて議論し、気候問題に関する世界的なベースラインの開示基準に向けた進展を振り返っていただきました。報告の枠組み・基準・情報開示の質のばらつき、財務パフォーマンスや事業戦略へのサステナビリティの影響についての詳細・理解の不足、うわべだけ環境に配慮しているかのように取り繕う「グリーンウォッシング」は、地域のみならず世界規模で解決すべき主要課題として認識されました。

地理的・人口統計的な観点から見える投資機会

第1日目を締めくくる3つ目のテーマは、人口統計の変化、中国の金融市場開放、RCN(リピオクレジットネットワーク)やインドなど中国以外の新興市場の台頭から生み出される投資機会でした。グラウアーはこうした市場トレンドはバイサイドの将来に「桁外れの影響を与え得る」と予想しました。

「今日、民間部門は経済成長の原動力となりうること、そして一般的に民間投資は現在、開発の資金調達において大きな役割を果たしているということは、広く意見の一致するところです」と、アジアインフラ投資銀行の総裁兼理事長の金立群氏は基調演説で述べました。さらに、新興市場への新たな投資意欲が高まっているのは、投資環境がいっそう有利なものになっていることも一因であると認めました。

最近、政府当局が外国人投資家に対する姿勢を和らげ、より成熟した市場が発展しつつあることに加え、現地で優秀な人材が増え、組織が文化や価値をより重視するようになったことから、中国市場が代表的な例として挙げられました。

「新規・既存双方の市場参加者は『グローバル・ローカルモデル』を構築するために資源を投入しています。これはグローバルな専門知識を活かしつつ、そのグローバルな専門知識と連携できる現地の能力を育成するというモデルです」と、ツー・シグマ・アジアパシフィックの最高経営責任者、Kenny Lam氏は対談の中で述べました。またLam氏は、アジア太平洋地域の注目拠点として日本と東南アジアを挙げています。

より充実した生活を送る高齢人口が経済に与える影響を認識し、それに対応する商品・サービスの「長寿金融」は、地域によって進展に差はあるものの、新たな投資機会として特定されました。

「平均寿命は世界各国で延びています。しかし、皆が80代まで生きられるわけではなく、依然として公平性には格差が存在する点には留意すべきでしょう。実際、一部のアフリカ諸国とシンガポール・オーストラリア・日本などの国との間には、いまだに30年の平均寿命の差があります」と、マクリンドル創業者兼プリンシパル、マーク・マクリンドル氏は述べました。

ビナキャピタルのマネージング・ディレクター兼投資責任者、Thu Nguyen氏は、若年層人口が比較的多いベトナムのような国々は、国民の平均寿命が長い国々から学ぶことができ、長寿金融がより急速に発展する可能性が高いだろうと指摘しました。

このたびのフォーラムでは、データとテクノロジー、サステナビリティとグリーンファイナンス、および投資機会は、アジア太平洋地域をはじめ世界各国においてバイサイドの皆さまが関心を寄せる有望かつ重要な分野であり、今後もそうあり続けるだろうという結論に至りました。

関連するオルタナディブ・データおよび非構造化データの定量化・クレンジング・標準化、優秀な人材の獲得、適切なストレージおよびサイバーセキュリティソリューションの整備は、データおよびテクノロジーの分野において引き続き主要課題となりそうです。人材確保、クラウド・オンプレミス・ハイブリッドのデータホスティング、データストレージ・モデル、サイバーセキュリティ、クオンタメンタル投資、AIアプリケーション、次世代テクノロジーは将来に焦点を合わせたソリューションです。

2050年までに二酸化炭素排出量ネットゼロを目指して世界各国での取り組みが進む中、ESG投資は官民双方のセクターで引き続き注目を浴び続けるでしょう。バイサイドでご活躍の皆さまは現在、報告の枠組み・基準・情報開示のばらつき、財務パフォーマンスや事業戦略へのサステナビリティの影響についての不確実性、グリーンウォッシングなど、今日の主要課題に対してソリューションに世界規模の取り組みがなされている、急速に進化を遂げているESG環境で活動しています。

バイサイドが注目すべき投資機会としては、長寿金融、中国・日本および東南アジアの新興市場などが挙げられます。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。