Read the English version published on June 30, 2026.
本稿はブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、Ana Andradeが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。
人工知能(AI)は、世界経済を大きく変えようとしています。政策立案者、宗教指導者、労働者にとって、雇用への影響は最も大きな懸念事項の一つとなっています。国ごとの影響度を把握するために、米国で公開された職業別AI影響度に関する詳しいデータと、国際労働機関(ILO)の雇用データを組み合わせて分析します。
分析の結果、先進国では労働者の27%、分析対象31カ国の1億2000万人以上が、AIの大きな影響を受ける可能性が高いことが分かりました。比較のために見ると、1970年代後半から2008年の世界金融危機までの間に、米国の就業者に占める製造業従事者の割合は20%超から10%まで低下しています。これは、自動化が大きな役割を果たした痛みを伴う構造転換でした。良くも悪くも、AIの影響はこれを上回る可能性があります。
- AIに関してよく聞かれる懸念の一つは、AIが導入された仕事はすべてなくなってしまうのではないかというものです。しかし、テクノロジーがそのように機能することはほとんどありません。むしろ、職務の中の限られた一部の業務に変化をもたらす傾向があり、仕事そのものをなくしてしまうよりも、仕事の内容を変えるケースの方が多いのです
- OpenAIの研究者が発表したタスク単位のAI影響度スコアによると、知的労働は肉体労働に比べてAIの影響を受ける度合いが大幅に高いことが示されています。つまり、各国の職業構成の違いが、AIによる一次的な影響を左右するということです。これらのスコアを基に、AIによる業務の変化に直面する可能性がある労働者の割合を推計します。
- 調査結果から、全般的に先進国の方が新興国よりもAIの影響を受ける度合いが大幅に高いことが分かります。これは、ホワイトカラーの知的労働に従事する労働者の割合が先進国で高いことを反映しています。米国の場合、その割合は26%です。新興市場では割合は10%です。
- これらの数値は、技術革新の影響を最も大きく受ける可能性がある経済を評価するための出発点となります。ただし、この指標からは、AIがどの程度の速さで、どの程度広く普及するかまでは分かりません。また、この指標からは、AIの影響を受ける仕事がAIによって補完されるのか、それともなくなるのかも分かりません。

AIは次の汎用(はんよう)技術になると広く考えられています。AIの活用範囲は今後幅広く広がると見込まれる一方、その影響は経済全体で一様に及ぶわけではありません。変革の規模を把握するため、経済学者は労働市場に注目します。変革が最も明確な形で現れるのが労働市場だからです。
技術革新の影響が及ぶのは、人が担う業務の一部であり、通常は職業そのものではありません。そのため、技術革新の影響を測るには、タスク単位で捉えることが出発点となります。
ここでは、OpenAIの研究者による研究を利用します。この研究では、米国の職業に含まれる1万9,000を超えるタスクにAI影響度スコアを付与しています。ChatGPTなどのインターフェース、あるいはそれらを基盤とするソフトウェアシステムを通じて大規模言語モデル(LLM)を利用することで、タスクの完了時間が半分以上短縮される場合、そのタスクは「AIの影響を受ける」と定義します。
その上で、対応する職業単位でスコアを集計し、少なくとも半分のタスクがAIの影響を受ける場合、その職業を「AIの影響を受ける」と分類します。国際比較を可能にするため、職種名を国際標準職業分類(ISCO-08)に対応させます。

データからは明確な傾向が読み取れます。仕事の内容が複雑で知識集約的であり、一般に高い教育水準が求められる職業(ソフトウエア開発者、翻訳者、アクチュアリーなど)ほど、AIの影響を受けるタスクの割合が高くなっています。
一方、清掃員、食肉加工従事者、大工など、主に反復的な身体労働を担い、通常は高い教育水準を必要としない職業は、その対極に位置しています。
つまり、技術革新が経済全体に及ぼす影響を評価する際、その国の経済を構成する職業の種類が重要になります。

ILOの職業別雇用データにAIスコアを対応づけると、知識集約型の職業が多く、教育水準も高い先進国ほどAIの影響を受けやすく、平均すると労働者の27%がAIによる大きな変化の影響を受ける可能性があることが分かります。この割合が最も高いのはシンガポールで、就業者の約40%がAIによる大きな変化の影響を受ける可能性があります。これにスウェーデンと英国が約30%で続きます。米国の場合、その割合は26%です。
一方、新興市場はAIの影響を比較的受けにくく、AIの影響を受ける可能性がある就業者の割合は平均で10%となっています。最も割合が低いのは、インドとインドネシアで、5%程度です。しかし、大きな影響がないというわけではありません。例えばインドでは、大規模言語モデル(LLM)によるコーディングの加速で大きな変化に直面しているソフトウエア産業が、GDPへの主要な貢献産業の一つとなっています。
AIの雇用への影響だけでは全体像は見えない
影響度の数値は、AIが経済に及ぼす影響を理解するための有用な出発点となります。しかし、それだけでは全体像を十分に説明することはできません。
例えば、AIの影響を受ける労働者について、生産性がAIによって高まるのか、それとも仕事そのものが自動化によって失われるのかは、依然として分かっていません。前者であれば、経済成長が加速し、誰もがより豊かになります。後者であれば、失業率の上昇や格差の拡大という大きなコストを伴うことになります。
さらに、AIの普及がどの程度の速さで、どの程度まで進むのかも依然として不明です。AIの普及のスピードや広がりは、コスト、労働市場政策、規制など、さまざまな要因によって決まります。
AIが経済に及ぼす一次的な影響を評価するうえでは、これらの要因を理解することは、職業構成と同じくらい重要です。
評価手法
この分析では、ChatGPTなどのインターフェース、あるいはそれらを基盤とするソフトウエアシステムを通じて大規模言語モデルを利用した場合に、タスクの完了時間が50%以上短縮されるものを「AIの影響を受ける」と定義するベータ指標を採用しました。2018年米国標準職業分類(SOC2018)の6桁職業分類ごとにスコアを集計し、各タスクを等しい重みで評価します。
欧州委員会が作成した詳細な対応表を用いて、米国SOC2018の923職業分類を、国際標準職業分類(ISCO-08)の436職業分類へ対応づけます。多対一の対応関係は、単純平均によって一つにまとめます。
AIスコアを2桁分類(43の職業)の単位で集計することで、ILOが公表している2桁分類の職業別雇用データと対応づけられるようにします。影響の有無については、二値の定義を採用し、タスクの50%以上がAIの影響を受ける職業を「AIの影響を受ける」と定義します。「AIの影響を受ける」と分類された職業の就業者が、総就業者数に占める割合を算出します。
ILOの雇用データは、すべてを網羅しているわけではありません。中国、カナダ、韓国などの経済大国は、対象に含まれていません。ほとんどの国については、2024年の雇用データを使用していますが、その年の職業別の内訳データが利用できない場合は、最新のデータを使用します。
2桁分類でこの分析を行ったことによって重要な情報が失われていないことを確認するため、より詳細なデータが利用可能な国について同じ分析を実施しました。特に、OpenAI研究者のEloundouらのスコアを、英国SOC2020における4桁職業分類(412職業)と、米国現在人口調査(CPS)の4桁職業分類(568職業)に対応づけました。この手法でも同様の結果が得られました。
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
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