Read the English version published on April 12, 2023.
本ブログは、パリ協定整合ベンチマーク(PAB)の人気の高まリを受け、ブルームバーグのサステナブル・インデックス部門が、特に債券投資家向けに特化されたPAB最適化手法について概要をまとめました。最適化手法に関する詳細な研究については、ESGクオンツ戦略に関するブルームバーグの最新資料「Understanding the Bloomberg MSCI Euro Corporate Climate Paris Aligned ESG Select Index(ブルームバーグMSCIユーロ社債気候パリ協定整合ESGセレクトインデックスの概要)|英文」をご覧ください。
パリ協定とパリ協定整合ベンチマーク(PAB)の台頭
2015年12月、気候変動に対する世界的な取り組みにおいて初めてとなる法的枠組み、「パリ協定」が196カ国によって採択されました。パリ協定の目標は、今世紀末までに地球温暖化を1.5℃以下に抑えることです。パリ協定が制定されたこと、そして気候変動への対応を求める機関投資家の声が高まっていることを受け、欧州委員会は技術専門家グループ(TEG)を結成し、投資商品が「パリ協定」や「気候移行」に準拠しているものとして指定されるための最低要件を策定しました。これにより、投資家にパリ協定の目標に沿った投資を行う機会を提供する、パリ協定整合ベンチマーク(PAB)が台頭しました。
パリ協定整合ベンチマークおよび気候移行ベンチマークの最低要件
PABは、2050年までにポートフォリオの排出量をネットゼロにすることを目標に、ポートフォリオに所定の道筋に沿った脱炭素化を求めるものです。PABはその規制の由来から、金融業界で大きな注目を集めています。これは、多くの資産保有機関や資産運用会社が、気候変動に関する分析が不十分であればポートフォリオがリスクの増大にさらされ、脱炭素化移行に向けた世界の動きから生じる機会を逸しかねないと認識していることが背景にあります。
債券投資家向けの最適化PAB手法
一般的に債券インデックスは、社債銘柄の組み入れを定義する明確なルールに基づいて構築されています。PABインデックスについても、ルールベースの手法を用いて温室効果ガス(GHG)排出の軌跡を定義できますが、その一方で難しいのは別の指標も用いて個別銘柄のウエートを決定するということです。最適化手法では、そうした追加的な指標を導入して、求められる脱炭素化の道筋を満たしつつ、各銘柄のウエートを調整できます。
債券投資家は、トラッキングエラーを低く抑えつつもダイナミックなネットゼロへの道筋にも適合しているという、厳格なコントロールにとりわけ大きな関心を寄せています。最適化PAB手法は、リスク管理技術をインデックス構築に組み込み、リスクを管理しながら野心的な目標を達成するものです。これを実現しているのがブルームバーグMSCIユーロ社債気候パリ協定整合ESGセレクトインデックスで、最適化手法を用いることでリスク管理機能がインデックス構築に組み入れられています。
債券インデックスでは、絶対値で計算されたGHG排出量を用いて脱炭素化軌道を設定することが認められています。ただし、この方法では、排出量の多い企業は相対的に保有ウエートが低くなりますが、企業の規模が反映されません。最適化PAB手法を導入することで、GHG絶対排出量とGHG原単位の両方にわたって二重の脱炭素化軌道をインデックスで設定できます。GHG原単位は、GHG排出量を財務指標(この場合はキャッシュを含む企業価値)で割ったものです。そのため、脱炭素化の指標として使用する際に企業規模も反映させることができます
脱炭素化の軌道
また、最適化を行うことで、ESGスコアが親インデックスのESGスコアに比べ15%以上高くなるようにしたり、加重平均グリーン収益やグリーン対化石燃料比率のウエートを親ベンチマークよりも増やしたりもできます。さらに最適化は、回転率、セクター、リスク国、利回り、デュレーションの各種要件に関する一連の目標を包括的に管理するのにも役立ちます。
PABのリスクを管理するために、ブルームバーグ債券マルチファクター・リスクモデルでは、PABインデックスの事前トラッキングエラーを親ベンチマークに対して最小化するように目的関数が設定されています。2023年2月28日時点で、月次トラッキングエラーは5.1ベーシスポイント、年間トラッキングエラーは16.3ベーシスポイントでした。
債券PABと自社目標の整合
パリ協定目標を債券ベンチマークに導入するには多くの手法がありますが、最適化手法は、事前トラッキングエラーに的を絞って管理できる上、その他の多岐にわたる目標も統合できます。
ブルームバーグのサステナブル・インデックス部門は、お客さまと協働して、PABをお客さまの企業独自の各種目標に連携させることに尽力しております。そのため、リスクを管理しつつ、お客さまが望まれる成果を実現できます。これらの手法の詳細については、ESGクオンツ戦略に関するブルームバーグの最新資料「Understanding the Bloomberg MSCI Euro Corporate Climate Paris Aligned ESG Select Index(ブルームバーグMSCIユーロ社債気候パリ協定整合ESGセレクトインデックスの概要)|英文」をご覧ください。