2022年マーケットリスクの旅

本稿はブルームバーグマーケットリスクプロダクトのヘッドであるEugene Sternが執筆しました。

未来について語るときに分かりやすい方法は日付を示すことです。「1984年」や「2001年宇宙の旅」がよい例です。バーゼル銀行監督委員会(BCBS)が2019年1月に公表したドキュメント457「マーケットリスクの最低所要自己資本」も日付を示しています。ただし、それはタイトルではなく冒頭文の中でした。

「本文書では、2022年1月1から最低所要自己資本の第1の柱となるマーケットリスクの最低所要自己資本の改定を提示する。これは、バーゼルIIおよびその後の改訂で規定された現行のマーケットリスク最低所要自己資本を代替するものである」

ご存じの通り、BCBS457はトレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)として知られるマーケットリスク所要資本規制の大幅見直しの最終版です。BCBSはジョージ・オーウェルやアーサークラーク、スタンレー・キューブリックほどの未来派ではありませんが、これまで数年間先延ばしにした適用日を強調しているところに、新基準を必ずその日に実施するという当局の強い思いが伝わってきます。

1月の最終版の内容については、最初のドラフト公表(2016年)以降、2度のFAQ(2017年、2018年)と市中協議(2018年)を経ているため大きな驚きはありません。目新しい点は、標準的手法(SA)のインデックスエクスポージャーに係るルックスルー要件の緩和です。インデックスとその派生商品について、当初のドラフトでは感応度方式(SBM)とデフォルト・リスク・チャージ(DRC)双方に対して構成銘柄のルックスルーが義務付けられていました。これに対し最終文書では、幅広く認知され分散が効いているインデックスに対するエクスポージャーに係るSBMの算出については構成銘柄へのルックスルー適用が必須でなくなり、株式インデックスとクレジットインデックス用のバケットが新設されました。しかし最終的な規則では以下が求められています。

  • 構成要素へのルックスルーが可能であるようにしておくこと
  • SAにおけるDRC構成要素に対するルックスルーについては、信用格付けによるバケット分類を可能とするために義務とする

結果として、金融機関は、構成要素レベルの感応度計算をしないことを選択した場合でも、インデックスエクスポージャーについて構成要素のデータと信用格付けが必要となります。

ルックスルーとSAのリスクウエイトに関する幾つかの変更を除けば、2018年の市中協議文書で示された変更点はおおむね最終文書に取り入れられましたが、内部モデル手法(IMA)については、金融業界からの懸念を反映して以下の2点が調整されました。

モデル化可能判定

季節性や新規発行に対する懸念に対応して、最終規則ではモデル化可能判定テスト(RFET)に使われる実在価格(取引価格または確定気配値)の観測基準が緩和されました。2つの観測時点の間隔が1か月以上のファクターでも、90日間に4つ以上かつ過去1年間に24個以上の実在価格が観測される場合にはモデル化可能となりました。また、あるファクターについて100個以上の実在価格が観測される場合には、たとえ期間が1年未満でもモデル化可能となりました。それでも、IMAを選択して所要自己資本削減を図るためには外部データが必要となる金融機関が多いと考えられ、RFETのハードルは依然として高いままです。

損益要因分析

2018年市中協議文書で示されたトラフィックライトアプローチについて金融機関はおおむね肯定的でしたが、黄ゾーンと赤ゾーンに抵触しすぎるとの懸念がありました。最終規則では、特にコルモゴロフ・スミルノフ検定について、緑ゾーンと黄ゾーンが拡大されました。一方、黄ゾーンのトレーディングデスクに対する資本サーチャージ(実質的にはSAとIMAのインターポレーション)は維持されました。

IMAとSAは、黄ゾーンのキャピタルサーチャージ以外に、資本フロアでもリンクしています。当初の案では、あらゆる金融機関に対してSAを社内全体に適用することが義務付けられ、SA。最終規則でフロアは明示的には言及されていませんが、考え方は残っています。IMAによる所要資本削減効果は一定の比率で制限されており、銀行はIMAによる所要資本削減額を実施コストと比較して検討する必要があります。

さて、2022年問題に戻りましょう。この期限が(一部の国の監督当局が示唆しているように)報告のみで済むのか、実際に資本賦課が必要なのかはまだ不明ですが、いずれにしても金融機関は1月1日までにFRTBに必要なインフラを整備し、監督当局からモデルの承認を得る必要があります。複数の国で業務を行う金融機関にはこれが特に重要となります。モデルの承認に1年、それ以前のデータ生成にもう1年必要とすれば、FRTBの適用方法は2019年中に決める必要があります。新規制を最終的にどう遵守するかについて、正しい情報に基づいた判断を適切な時期に行うために、多くの銀行が今年中に、SAとIMAによる所要自己資本額の推計や比較を始めることになるでしょう。

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