新型コロナウイルスによる感染拡大の影響で経済の先行きが不透明な中、ブルームバーグでは、「2050年日本・世界経済予測~米中関係悪化によるトレンド変化と量子コンピューター技術がもたらす未来~」を開催。
ブルームバーグ・エコノミクスによる「2050年世界予測」をもとにした今後の日本経済・世界経済の先行きと、最近よく耳にするようになった量子コンピューターについて、その技術が拓く未来を関連産業とともに展望しました。
参加者からは「中・長期的な分析を定期的に聞きたい」との声を複数いただいたほか、特定のテーマについて掘り下げた解説へのご要望をいただきました。弊社では、今後も同様の充実したセミナーを展開して参りますのでどうぞお見逃しなく。
スピーカー:ブルームバーグ・エコノミクス 主席エコノミスト 増島 雄樹
今後10年は続く米国のデカップリングの影響
第1部ではブルームバーグの主席エコノミスト増島雄樹が登壇。まず、11月3日に迫る米大統領について、選挙後も勝敗が決定せず長引くリスクについて、また選挙結果の対中政策への影響について分析しました。米国の厳しい対中姿勢が続く米中デカップリング(引き離し)シナリオは、2030年時点で中国の成長率を1ppt押し下げる可能性があるとしています。アジア経済に与えるダメージについては、地域貿易協定(RCEP、CPTPP)の観点から解説。特許申請数の蓄積で測ったハイテク技術の進展については、中国の伸び率が目立つものの、国際的には棲み分けが進んでおり、デカップリングによる全体成長の減速は避けられないと述べました。
また日本に関しては、技術蓄積は大きいが、伸び率が鈍化するとしています。中期的に見た2030年の世界経済については、コロナの感染拡大が沈静化しても、米中デカップリングによる余波のダメージは大きく、コロナ前と比較した経済下振れ幅において新興国(中国を除く)で一番深くなると予測しています。
2050には中国が米国を凌駕
では、長期予測ではどうでしょうか。BEが予測する2050年の世界の構図では、中国が米国を凌駕して覇権を大きく拡大、インドは経済的には第3位に台頭するも、特許等の技術的な観点からは道半ばであり、一方で日本のGDPはドイツにも抜かれるだろうとしています。また、深刻化が懸念される気候変動については、CO2低排出に向けて不規則移行時と順調移行時の2つのシナリオで分析、両者での大きな違いをチャートで示しています。日本の場合の下押し幅はGDPにして2.5%程度と予想、マイナス成長下でその影響は重いとしています。
感染拡大による影響は2割にも満たない
今後の日本経済については、「コロナの感染拡大による影響は2割にも満たない」と述べ、マイナス成長は人口減をはじめとした構造的なものであるとしています。また、ベースはマイナスであっても今後の菅首相の政策の方向性によっては反転可能とし、日本沈没を避けるには量子コンピューターのような技術革新およびサービス分野の改革が鍵となるだろうと分析しました。さらに、避難通貨としての円買いの今後の動きについても、中・長期的な観点から解説。
より詳しい内容はオンデマンドビデオでこちらからご覧いただくか、営業担当、または増島(日本担当主席エコノミスト)までお問い合わせください。
スピーカー:ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)シニアアナリスト若杉政寛
国家機密情報流出リスクで競争激化
第2部では、BIシニアアナリスト若杉政寛が、量子コンピューターの概要、応用分野について解説しました。スーパーコンピューターが人間の能力を超えるのがシンギュラリティーとすれば、その先を行くのが、「0」と「1」を同時に表すことができると量子コンピューターです。従来の方法では1万年かかると言われている計算が、数時間でできてしまうーそうした量子コンピューターの進化で、これまでとは桁違いの計算が現実的なものとなってきています。
また、暗号解読による国家機密情報流出リスクにより、水面下で各国の威信をかけて競争が激化、開発スピードが加速しています。ボストンコンサルティンググループの予想では、市場は10年後から20年後に急拡大、2050年までには45-85兆円の営業利益が見込まれています。下記に示す医薬、金融、交通、エネルギー、暗号などが応用分野として期待されており、今後予想を超えるイノベーションが引き起こされる可能性があります。
量子応用分野は医薬、金融、交通、エネルギー、暗号
- 創薬:開発期間が大幅に短縮
- 金融:正確かつ迅速なプライシングやリスク計算で、競争力に格差が出る可能性。2023年には世界の2割の企業が量子コンピューティングに関与という予想も。
- 化学:量子化学・量子AI(人工知能):リチウム空気電池の材料開発等が期待
- 交通:次世代MaaS(Mobility as a Service)の確立で、渋滞ゼロ、最適なタクシー配車、自動運転
- 生産システム:工場の自動化→自動搬送機、渋滞緩和で生産性改善
- ESG: 二酸化炭素回収・利用・貯蔵(CCUS)技術開発へ。次世代ソーラー発電、次世代2次電池で日本のエネルギー国際競争力向上か
- 暗号:2030年で、現行の2048bitのRSA暗号は終了し、次世代暗号システムへ
2020年現在の技術革新について若杉は、IonQが「誤りのない論理量子ビット」技術で一歩抜きん出ており、3年後はスパコンを超えて量子超越が実現する可能性もあると述べています。ダウ構成銘柄の1つとして最近復活を果たしたハネウェル、そして元々先行していたIBMが後を追いかけており、一方でアマゾンやマイクロソフトでは量子コンピューターをクラウドで提供するサービスを開始、多くのユーザーが実験できる環境が整いつつあるといいます。
日本の関連企業各社については、量子コンピューターをどう活用するかが重要であると述べ、それぞれの課題について分析しました。
詳細はウェビナーをご視聴いただくか、BI若杉までお問い合わせください。