最新のヘッジファンドの手法は「クオンタメンタル」

本稿はブルームバーグ ニュースのイワン・レビングストンが執筆, ブルームバーグターミナルに最初に掲載されました。

ファンダメンタル投資とクオンツ投資は、ヘッジファンドにおける水と油の関係で、混ざり合うことはありませんでした。ファンダメンタル投資勢は昔ながらの分析方法で、リサーチと直感に基づいて投資を評価しており、人間が采配を振るっています。クオンツ・マネー・マネジャーは、山のようなデータから隠れたシグナルを探し出して、次々に投資判断を下す高度なコンピューター・アルゴリズムに目を向けています。最近ではその中間の立場が現れています。これを「クオンタメンタル」投資といい、コンピューターと、人間を中心とする意思決定を結び付けたものです。それぞれの要素を集めた以上の効果を発揮するかどうかは、まだはっきりしていません。

  1. クオンタメンタル戦略を採用している投資会社

ラリー・フィンクのブラックロック・インク、スティーブ・コーエンのポイント72アセット・マネジメントLP、ダン・ローブのサード・ポイントLLC、ポール・チューダー・ジョーンズのチューダー・インベストメント・コーポレーションは伝統あるファンダメンタル投資会社ですが、リターンの向上を目指してデータ主導のアプローチを採用あるいは採用を検討しています。

  1. クオンタメンタル投資家とは

本質的には、彼らはクオンツ・ファンドからアイデアを借りているファンダメンタリストです。機械学習技術を開発するためにデータ・サイエンティストを雇う場合もあり、人間による銘柄選択のための情報を提供するために大量のデータセットからトレンドを調べることができます。あるいは、リスク管理を向上させるためにクオンツ分析を用いることもあります。それは、技術の力と今日の大量のデータを活用し、ボトムアップ型の評価における投資家の能力を高めるための手段です。単純だと思われるかもしれませんが、それを採用するのは口で言うほど容易ではありません。

  1. クオンタメンタル投資は、どのようにして広まったのか

クオンツ投資は数十年前に金融業界に登場し、ほとんど注目されていない中、2000年代初頭に勢いを増し始めました。新しいタイプのトレーダーが市場の非効率性を利用して大幅なリターンをあげ、ファンダメンタル投資家は不意をつかれた格好です。資金とマネジャーがヘッジファンド業界に駆け込んだため、ファンダメンタル投資家は同じ種類の投資家に加えてクオンツ・ファンドとの競争にさらされ、リターンが圧迫されました。同時に、コンピューターがさらに強力になり、データストレージのコストが低下しました。多数のコンピューター主導ファンドが設立されて、ルネッサンス・テクノロジーズ、ツー・シグマといった純粋なクオンツ投資会社が羨望に値するリターンをあげました。従来型ファンドは、参入障壁の低下やクオンツ・トレーダーの成功に促されて、プロセスにおいてコンピューター主導投資に遅れを取らずにリターンを上昇させるための方法としてクオンツ投資に手を出しました。

  1. クオンタメンタル ファンドのパフォーマンスについて

これらのハイブリッド投資会社が一貫して高いリターンをあげることができるかどうか、まだ結論は出ていません。チューダーやポイント72のように新しい投資スタイルを試している会社は、このところリターンが低迷しています。ただしヘッジファンド全体が、上昇局面の中、市場を上回るリターンをあげるのに苦労しています。そのため、クオンタメンタル・ファンドのパフォーマンスについて結論を出すのはまだ早過ぎると言えます。

  1. クオンツ投資家と従来型投資家の関係:

クオンツ手法を試している従来型の投資会社は、新しいタイプの従業員の採用や、新たな取引戦略の適用は簡単な作業ではないと認識しています。ファンダメンタル投資家は得意分野を守るでしょうが、リターン獲得のために雇い入れられたクオンツ投資家は、補助的な役割であることを感じて、いら立つかもしれません。2つの異なるカルチャーを混ぜ合わせることで、対立が生じる可能性があります。ポイント72、ブルーマウンテン・キャピタル・マネジメントの両社では、クオンツ・リサーチャーを自らの投資や文化に統合させる途上で、困難に直面しています。

  1. 今後の展開

聞く相手によって答えは違います。ハイブリッド手法の支持者は、機械学習プログラムは、さらに向上するとしても、人間に全体像を捉えてもらい、投資の最終判断を下してもらうことによって恩恵を受ける、と述べています。一方で、トレンド追求型戦略の広がりで、リターンが低下することを懸念している人もいます。今後発見されたり利用されたりする市場アノマリーは限られているので、アノマリーを探している人が増えるに従い、ある会社の発見を、他の会社がより素早く繰り返すようになるため、利益は限定されるということです。

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