11月13日、ブルームバーグでは欧州第二次金融商品市場指令(MiFID II)目前セミナーを開催しました。新市場秩序のもと、グローバルにビジネスを展開する企業がベストプラクティスを導入し成功を収めるためのソリューションの紹介に続き、最新の規制動向と市場への影響について、金融業界を代表する有識者の方々による活発な意見が交わされました。
MFID II関連セミナーは6月に続き今回で2回目。年明け早々の施行を前に、バイサイドからの参加も半数以上に上り、総計150名近い来場者数が新規制対応への緊張感をあらためて印象付けるものとなりました。
MiFID II、電子取引、膨大なデータ
基調講演では弊社 マーケット ・ストラクチャー APAC責任者 ドリュー・ブリックがMiFID II施行後の新しい市場秩序対応の要件について解説、規制遵守のためには電子データのガバナンスとデータファイナンスのソリューションが必須であるとしました。現在地球上にあるデータの90%は過去2年間に産み出されたものであり、膨大な電子データの「ノイズ」から競合他社に先んじてシグナルを読み取り、方向性を定義し、資本を数値化する能力が鍵であると話しました。
“No LEI, No Trading”
続いて新規制対応のためのソリューションとして、ブルームバーグのマルチアセット最良執行評価、コンプライアンス審査・管理機能および電子取引ワークフローについて弊社担当者より紹介がありました。また日本の会社であっても、欧州の取引相手と取引する場合においては必須となるLEI取得についての説明や、さらにリサーチ管理のソリューションとして、企業レベルでのアクセス管理機能や、リサーチ分析、リサーチレポートの評価、リサーチ予算の管理機能等についてもご紹介しました。
システム面対応、リサーチ価格決定が急務
パネルディスカッションで対応が急務とされたのは、セルサイドではシステム開発を伴う複雑な報告要件への対応や、欧州顧客を中心としたリサーチ価格交渉等でした。また、中長期的な課題として「リサーチプライシングのプロフェッショナルはどこにもいないが、どこかでスタートしなくてはいけない。顧客に価格の適正化を求め、当局とも交渉しながらフレキシブルに1-2年かけて詰めていくしかない」という意見があがりました。
バイサイドからは、欧州発の規制強化でグレーゾーンが多いため、「日本のアセットマネージャーは、システム対応できないと、ヨーロッパからの資金を集めるのが難しくなるかもしれない、」との指摘のほか、現状すべてのブローカーにシステマティックインターナライザー(SI)をどうか確認中で、今後取引先には求めていくかもしれない、とのコメントもありました。
大手が優位になる可能性
次に最良取引執行義務に関しては、上場銘柄がそもそも少ない債券や商品取引においてはベースがあるエクイティと比べると、より困難な問題が山積みで、莫大なコストを考えると生きのびられるのは大手だけではないか、と疑問が投げかけられました。また、リサーチアンバンドリングについて、実際の運用で頭の痛い問題としてあげられたのが、日本や米国当局との規制上のコンフリクトでした。クロスボーダー性が高いリサーチにおいて、投資助言業ライセンスの問題なのか、厳格なファイアーウオールがあればいいのか等、利益相反を始めとした管理上での「そんなに簡単ではない」数多くの課題認識が共有されました。一方、「ブローカーとしてはまず、顧客のニーズにどう答えるかが重要であり、当局とも膝を突き合わせて議論していく必要がある」とのコメントも聞かれました。
さらにリサーチについては、これまでのビジネスモデルが変わり、何を受け取って、何は不要かということをセルとバイサイド双方での「事前合意が必要となる」とし、ただ「このアナリストと30分間電話したい、」というようなリクエストに対して大きな運用会社のみがフルアクセス可能という事態になれば、今後様々な摩擦が予想され、「アンフェアなシステムになる」可能性も指摘されました。
日本はどうするのか
この欧州発の新規制が、今後新しいグローバルスタンダードとなると予想する声も多くでました。施行後は顧客のマインドセットの変化を見据え、戦略的な対応が必要で、グローバルでシームレスな組織としてどう対応するのか、「規制から逃げることは顧客や市場から逃げることになる」ため、ガラパゴス化することなく、「バイサイド、セルサイド、規制当局、スポンサーを含めた合意形成が必要」ということで一致しました。
パネリスト:
シティグループ証券株式会社 市場企画管理部
ディレクター 渡辺 敦也 氏
みずほ証券株式会社 グローバル エクイティ COO
エクイティ 業務部長 今泉 ライアン 氏
ウィズダムツリー・ジャパン株式会社
最高経営責任者 イェスパー・コール氏
三井住友アセットマネジメント株式会社
トレーディング部長 澁谷 理恵 氏
ブルームバーグL.P. マーケット・ストラクチャー
アジアパシフィック責任者 ドリュー・ブリック
モデレーター: ブルームバーグ L.P. マーケット・スペシャリスト 内田 雅晴