ソブリン債投資の再考

Read the English version published on June 22, 2026.

主要ポイント

  • 財政政策がソブリン債市場で果たす役割が大きくなるにつれ、投資家は債務の持続可能性、資金調達ニーズ、増加が続く発行額を吸収する市場の流動性を評価するために、インフレ率や政策金利以外の材料にも注目するようになっています。
  • 先進国市場と新興国市場を区別する際の境界線も、二者択一的な分類というより、次第に曖昧なものになりつつあります。
  • 投資家は、このような集中リスクに対して、国別上限や、経済規模・財政特性に基づく代替的な加重手法など、いくつかの方法で対応してきました。

本稿は、ブルームバーグのインデックス・クオンツ・リサーチのVikas Jain、およびインデックス・リサーチ責任者のYingjin Ganが執筆しました。

数十年間、ソブリン債券投資(中央政府発行の債券への投資)は2つの前提に基づいていました。1つは、主要先進国市場の国債が事実上リスクフリーであること。もう1つは、特にG10諸国ではソブリンリスクの差が比較的小さく、債務加重型ベンチマークが投資機会の合理的な指標であることでした。

プロダクトについて

しかしながら世界のソブリン債を取り巻く状況は、ここ数年の間に急速に変化しています。 パンデミック後のインフレショックにより、足並みのそろった金融政策、利回りの下落、中央銀行による潤沢な流動性供給を特徴とした時代は過去のものとなっています。今日の投資家は、政策方針が多岐にわたり、債務負担が増大するなか、ファンダメンタルズの格差が一段と鮮明になる環境に直面しています。

多くの点でソブリン債投資は、デュレーションのみに注目するものから、国ごとのリスク、リターン、分散の特性をより幅広く考慮するものへと移行しつつあります。

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40年間続いた市場環境の終焉か

過去30年間の大部分において、インフレ率の低下、グローバル化、金利の下落が、ソブリン債の長期的な強気市場を下支えしてきました。先進国市場全体で利回りが下落したことで、高いリターンと優れた分散効果の両方をもたらしました。

しかし、2021年以降、これらの追い風の多くが反転し始めました。脱グローバル化、サプライチェーンの再構築、地政学的な分断化が、構造的な高インフレの環境の一因となっています。一方で多くの先進国では、比較的底堅い成長にもかかわらず、財政赤字額は高止まりしています。

Government Bond Yields Across Major Developed Markets - 1990 - Present

財政政策がソブリン債市場で果たす役割が大きくなるにつれ、投資家は債務の持続可能性や資金調達ニーズ、増加する発行額を市場が吸収できるか評価するために、インフレ率や政策金利以外の要素にも注目するようになっています。こうした圧力は、各国政府のバランスシートの格差を広げており、先進国市場の国債は同様のリスク特性を持つという従来の前提が疑問視されるようになってきました。

Debt-to-GDP Across Major Developed and Emerging Markets

ぼやける先進国市場と新興国市場の境目

大型新興国の中には、一部の主要先進国市場よりも債務負担が低い国も出てきており、ソブリンリスクの評価基準として、地理的要因の信頼性は低下しています。特に韓国は、先進国市場と新興国市場の双方の特性を併せ持ち、従来型の分類が抱える課題を浮き彫りにしています。

同時に、新興国市場の債務は、過去20年間で大幅な構造的変化を遂げてきました。 現地通貨建ての新興国ソブリン債市場の多くでは、国内投資家基盤の深化、流動性の改善、信頼性の高い金融政策の枠組み、ソブリン債ユニバースの投資適格化など、かつて主に先進国にみられた特徴をもつようになっています。これにより、一部の新興国市場では外貨建て債務への依存度が低下し、通貨構成がますますソブリンリスクの重要な側面となっています。

多くの新興国ソブリン市場が、過去20年間で、現地通貨建ての債券市場の深化、金融政策の信頼性の向上、国内投資家の参加拡大の恩恵を受けてきたことは注目に値します。 IMF国際金融安定性報告書 (2025年10月、第3章)およびBIS四半期報告 (2024年3月)をご参照ください。

一方、先進国市場においては、量的引き締め、発行量の増加、負債構造の変化によって、期間プレミアムが上昇し、ソブリン債デュレーションリスクの見直しにつながっています。

Rolling 3-Year Volatility Difference Between Global and Emerging Markets Local Sovereign Indices

先進国市場と新興国市場の境界線も、曖昧になりつつあります。新興市場国の中には、特定の財政指標で、先進国の一部より良好なものもあります。一方で、より総合的なソブリン債評価では、市場の厚み、制度的枠組み、政治構造の違いも考慮することが求められています。

ソブリン債ベンチマークは、債務加重型のままで良いのか

従来のソブリン債のベンチマークでは、主に債務残高によってウエート付けされており、債務残高が最も高い国が、ベンチマークのポートフォリオで最大の構成比率を占めるようになっています。 同アプローチは、先進国市場のソブリン債が比較的均質であるとみなされていた時代には、理にかなっていました。 しかし、財政状況の差が拡大し、ソブリンファンダメンタルズの違いがますます広がる中で、債務残高は、もはや各国の重要性やレジリエンスを計る最も効果的な指標ではなくなっている可能性があります。

投資家は、このような集中リスクに対して、国別上限や、経済規模・財政特性に基づく代替的な加重手法など、いくつかの方法で対応してきました。

GDP加重型ソブリン指数は、借入額ではなく、経済規模に応じて投資額を配分するため、各国の世界経済への貢献度をより直感的に反映することができます。 なお、ブルームバーグのGDP加重型指数の詳細な手法は、こちらからご覧いただけます。

財務健全度加重型の手法は一歩進んで、債務の持続可能性や財政収支、金利負担の動向を測定する指標を取り入れています。これにより、投資家は、発行額のみではなく、基礎的なファンダメンタルズに基づいて、ソブリン発行体を見極めやすくなります。なお、ブルームバーグの財務健全度加重型指数の詳細な手法は、こちらからご覧いただけます。

こうした違いは、長期的に指数のパフォーマンスに大きな違いをもたらす可能性があります。

Historical Performance of Alternatively Weighted Sovereign Indices

パフォーマンスの差の大部分は、日本から中国への配分シフトを反映しています。両市場におけるソブリン債リターンの差が期間中大幅に広がったことが背景にあります。

Allocations Under Various Weighting Approaches

これらの手法は、ソブリンリスクを排除することを目的としたものではありません。 むしろ、構造的な債務国のバイアスを低減し、ソブリン信用力とマクロ経済のレジリエンスを左右する要因の変化を、より正確に反映したポートフォリオを構築することを目指しています。

ソブリン債配分への新しい枠組み

おそらく、最も重要な変化は概念的な部分でしょう。市場参加者は、ソブリン債がどれも一様に安全な資産であるという前提を見直していく可能性があります。市場も財政力、インフレの動向、政策の信頼性、通貨の安定性、制度の質の差を反映しているように見受けられます。

このような環境では、分散投資は地理的なものだけに留まらない可能性があります。異なる財政状況の推移、金融政策の枠組み、各国バランスシートへのエクスポージャーも分散投資の要因となると思われます。

市場参加者は、該当国が先進国か新興国かを問うのではなく、その国の財政状況の推移、制度的な信頼性、政策枠組みが、いかにソブリン債ポートフォリオ構築の役に立つのかを考慮するでしょう。ソブリンリスクの差別化が進むにつれ、ベンチマークの構築と国別の割り当ては、デュレーション管理の有用な補完手段になり得ます。

債券指数の精度とカスタマイズ

ベンチマークの精緻な構築は、ソブリン債投資家が、債務加重型ベンチマークを再評価する際のエクスポージャーを、変化する財政状況や政策、分散投資に適合させる上で大いに役立つと思われます。

ポートフォリオ構築の目標がより明確になるにつれ、精度の高いベンチマークのエクスポージャー定義がますます重要になっています。

ブルームバーグの債券インデックスは、エクスポージャーを迅速かつ正確にカスタマイズできるツールとしてご利用いただけます。ブルームバーグターミナルの統合データと分析機能を活用することで、特定の投資目的に沿ったアセットクラスの組み合わせ、制約の適用、手法の変更の適用が可能となります。

詳細については、ブルームバーグ債券インデックスをご覧ください。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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BISLは、英国およびウェールズにおいて登録番号08934023で登録され、所在地は 3 Queen Victoria Street, London, England, EC4N 4TQです。BISLは、ベンチマーク管理者として金融行動監視機構(FCA)により承認・規制されています。

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