Read the English version published on May 14, 2026.
主要ポイント
- イランでの紛争によって原油価格が上昇しているものの、FRBは2026年に利下げを行う余地があるとみられます。ただし、消費者の購買力にばらつきが見られることが政策判断を複雑にしています。
- AIがソフトウエア業界に大きな影響を与える中、プライベート・クレジットファンドの解約請求が増加し始めています。
- 2026年は、OpenAI、スペースX、アンソロピックといった大型IPOが相次ぎ、インデックスファンドの組み入れ銘柄が入れ替わる年になる可能性があります。
地政学的ショックとAIによる変化が、公開市場とプライベート市場の両方を揺さぶり、投資家心理を試しています。こうした状況下で、投資家はさまざまな資産クラスにおけるリスクと投資機会の評価を見直しています。
ソロス・ファンド・マネジメントのCEO兼最高投資責任者であるDawn Fitzpatrick氏は、3月初旬に開催されたブルームバーグ・インベストに登壇し、公開市場とプライベート市場における現在の市場変動の要因について語るとともに、機関投資家のポートフォリオへの影響に関する見解を示しました。
プロダクトについて
原油高と景気の底堅さ ― FRBは2026年にどうかじ取りするのか
Fitzpatrick氏は、2月に実施された米国による対イラン軍事行動が、地政学的緊張やAIによる混乱によって既に高まっていた不確実性をさらに増大させたと説明しました。紛争は原油市場に影響を及ぼしており、資本環境は逼迫しているものの、同氏は米国経済および世界経済は予想を上回る可能性が高いと述べます。
Fitzpatrick氏は、原油価格の影響を受ける消費者支出は全体の約5%にすぎず、FRBは利上げまたは利下げの判断をする際に、一時的な原油価格上昇をあまり重要視しない傾向があると指摘します。また、「低所得者層は困難に直面している一方で、消費者全体で見ると、依然として底堅さが見られる」とし、こうした状況は政策立案者にとって難しい局面となっています。
「FRBには利下げの余地があり、こうした状況を踏まえれば、利下げに踏み切るのが賢明でしょう。インフレ率は今後も低下傾向をたどると考えます。AIは現時点ではインフレに影響を与えていませんが、将来的には影響を与えることになるでしょう」
Fitzpatrick氏は、原油価格の上昇が3カ月以上続かなければ、FRBは2026年に2回の利下げを行う可能性があると予想しました。また、金利を上下50ベーシスポイント調整しても、AI関連の設備投資(CAPEX)に影響を与える可能性は低いとして、FRBはAIブームの影響に過度に反応すべきではないと示唆しました。
AIがもたらす二極化 ― テック大手が優位に立つ一方でクレジット市場には懸念も
AIが業界構造に変化をもたらし、ソフトウエア株が打撃を受ける中でも、Fitzpatrick氏は依然として投資機会が存在するとみています。上場市場においても、一部のソフトウエア企業は恩恵を受けるだろうと述べています。
一方で、大企業は事業規模の優位性を生かしてテクノロジー分野に多額の資金を投じており、競合他社との差を広げています。その優位性は今後12〜24カ月でより明確になるとみられます。
「AIは、規模が大きく、構造的に大規模投資を行える企業に有利に働くでしょう」
プライベートクレジット市場では、複数のプライベートクレジットファンドで償還請求が増加しており、その背景にはAIの影響を受けやすいソフトウエア企業へのエクスポージャーに対する投資家の懸念があります。
「すべてのファンドが同じというわけではなく、一部のファンドはソフトウエアセクターへのエクスポージャーが過度に高くなっています」とFitzpatrick氏は述べました。また、ソフトウエア分野におけるこうした構造的な評価見直しは妥当なものだと指摘しました。
ブラックストーンが主力プライベートクレジットファンドの7.9%の償還を認めたという報道を受け、Fitzpatrick氏は、こうした懸念が市場全体に浸透するにつれて償還は相次ぐだろうと予測しました。さらに、オルタナティブ資産運用会社は短期的に影響を受ける可能性がある一方で、約束通り投資家へ資金を返還することは、長期的には運用会社への信頼につながるだろうと述べました。
また、上場BDCはおおむね23%のディスカウントで取引されている一方、非上場BDCやインターバルファンドはNAV(純資産価値)で資金を返還しなければならないため、投資家はそれらを解約して上場BDCへ資金を移す可能性があると指摘しました。
「NAVディスカウントが解消されなくても、より高い利回りを得られるでしょう」最終的には、これがプライベートクレジット市場におけるセカンダリー売却の増加につながるとの見方を示しました。
「当社は、裏付けとなるローンポートフォリオの内容を評価したうえで、魅力的だと考える上場BDCへの投資を少しずつ始めています。流動性プレミアムが大きく拡大している局面では流動性を提供することを重視しており、まさに今がそのような局面の一つだと考えています」とFitzpatrick氏は述べます。
「セカンダリー市場でも同様です。そこには大きな投資機会があり、私たちは買い手として積極的に関わりたいと考えています。当社は十分な流動性を確保しており、プライベート市場で一定の調整が生じた際の投資機会を注視しています」
大型IPOラッシュは市場をどう変えるのか
Fitzpatrick氏は、ソロス・ファンド・マネジメントが2021年と2022年にプライベートエクイティへの投資比率を徐々に引き下げた後、2026年にはその配分を見直す可能性があると指摘しました。
「2026年はプライベートエクイティで投資回収が本格化する年になるとの期待がありました」と同氏は述べました。「IPO市場は開かれていますが、本当に質の高い企業に限られます」
Fitzpatrick氏によると、2026年は大型IPOが相次ぐ年になる可能性があり、OpenAI、スペースX、アンソロピックなどが上場を検討しているとの観測もあります。そのうち一社でも実現すれば、史上最大規模のIPOになる可能性があるといいます。
「全体として、発行済み株式の10%程度が市場で流通すれば、IPOによる調達資金は2,500億ドルを超え、2022年以降の米国におけるIPO総額を上回ることになります」と彼女は述べました。
「それによって資本構成が整理され、大規模な投資を行うための資金を資本市場から調達しやすくなるでしょう」
また同氏は、これらの企業が株価指数への組み入れを強く目指すようになると指摘しました。それによってインデックスファンドなどによる新たな買い需要が生まれる一方で、投資家は現在株価指数に組み入れられている他の銘柄を売却する必要があると述べました。
「過去のデータを見ると、IPO市場が大きく活況を呈した後は、一般的に6カ月後の市場全体のバリュエーションは低下しやすい傾向があります」
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。