試される流動性:テクノロジーが支えるセルサイドのレジリエンス

Read the English version published on July 11, 2025.

2025年初めの数カ月間、インフレや貿易への懸念が広がる中、市場ボラティリティが米国債の利回りを押し上げ、価格が下落しました。一方、投資家が米国経済の安定性を見直し、他の通貨への分散投資を進めたことで、ドルが低迷しました。

最近の市場の混乱は、セルサイドのレジリエンスに対する継続的な投資がいかに重要であるかを改めて浮き彫りにしました。銀行などのセルサイドの市場参加者は、膨大なリアルタイムの市場データを収集するテクノロジーシステムを活用することで、ボラティリティの高まりに迅速に対応することができました。本稿では、こうしたテクノロジーがセルサイドに前例のない市場の可視性をもたらすとともに、将来のショックをより的確に乗り越えるためのツールをどのように提供しているのかを考察します。

流動性にかかる圧力

米国市場は2025年初めの数カ月にわたり不安定な状態が続きましたが、4月初旬米国が包括的な関税措置を発表すると、ボラティリティは急拡大しました。4月の市場ボラティリティの急激な上昇は、多くのエコノミストや市場参加者にとって想定外の動きとなりました。

しかし、リアルタイムの市場データを活用することで、銀行はボラティリティの高まりを顧客に事前に注意喚起することができました。また、各行のクオンツモデルは新たな市場環境の変化を捉え、それに応じて迅速に対応しました。

こうした動きは、今後さらなるレジリエンス強化につながることを示唆しています。こうした状況は、銀行の長期的なレジリエンスと備えを確保するうえで、どの領域が重要であるかを浮き彫りにしました。

デモ申し込み

コミュニケーションによる信頼の構築

2025年5月にロンドンで開催されたブルームバーグの「セルサイド・リーダーズ・フォーラム」では、参加者が直近のボラティリティを振り返るとともに、銀行が今後の混乱局面により適切に備えるための方策について議論しました。

顧客に市場状況をリアルタイムで伝えることが、最も効果的な戦略の一つとして挙げられました。「インスタント・ブルームバーグ(IB)」やその他のデータ活用型ソリューションといったAIを活用したメッセージング/チャットシステムにより、トレーダーは市場の変動に応じて情報を途切れさせることなく共有することができました。これにより、カウンターパーティーは市場の状況を迅速に分析し、流動性を評価し、素早く意思決定を行うことが可能になりました。

流動性の状況をほぼリアルタイムで把握できるツールに支えられ、顧客も銀行とほぼ同じスピードで市場動向を理解することが可能となりました。銀行は、フローやリスク、市場横断的な情報、ボラティリティ、取引量などの重要指標を横断的に分析することで、人間のトレーダーとアルゴリズム取引の双方に対し、常に最新の情報を共有し続けました。

そこから導き出された指針は明確でした。それは、人々が適切な意思決定を下しやすい環境を整えることです。

複数システムのデータ連携が支える安定性

オープンなコミュニケーションチャネルは、高品質なデータに支えられることで、その効果を一段と高めます。そして、この点において電子化は、セルサイドにとって欠かせない存在であることが示されています。電子取引は、注文や執行、決済の効率化にとどまらず、取引コストや取引パフォーマンス、価格変動に関する重要なデータの取得を可能にしました。これにより、より精緻なプライシングモデルの構築と、リスク管理体制の強化が進みました。

こうした利点を踏まえ、銀行は過去10年間にわたりデジタルシステムへ積極的に投資してきました。また、データに基づくプロセスにより、マルチアセット戦略を横断したトレーディングデスクの連携が可能となり、市場の状況をあらゆる局面でより包括的に把握できるようになりました。これは、最近の市場混乱局面において、トレーダーが利用可能な流動性を見極めるうえで特に重要な役割を果たしました。

ポートフォリオ業務部門や上場投資信託(ETF)、従来型デスク、アルゴリズム戦略の間での統合に加え、統合されたテクノロジー基盤やプライシング基盤、そして包括的なリスクの可視化を組み合わせることが、極めて重要であることが明らかになりました。異なる流動性層にまたがるエクスポージャーを把握することは、このアプローチの重要な要素です。

電子化のさらなる進展

これまで、取引の電子化(エレクトロニフィケーション)は資産クラスごとに異なるペースで進んできました。株式と外国為替は、デジタルシステムで処理しやすい構造化データへの依存度が高いことから、電子化をけん引してきました。

より複雑で主観的要素を含む非構造化データを必要とする資産、たとえば債券やデリバティブでは、電子化の進展は比較的緩やかでした。この状況は変わりつつあります。

電子化の面では、債券も他の資産クラスに追いつきつつあります。現在、小口取引やバッチ取引の多くは、自動取引ツールによって執行されています。これを支えているのが、ブルームバーグの評価価格サービスBVALや、企業が取引・分析・リスク管理システムに高品質な銘柄単位のストリーミングデータを取り込むことを可能にするリアルタイム市場データフィードB-PIPEといったソリューションです。

しかし、従来型の音声取引であっても、リアルタイムのデータソリューションを活用することで大きな効果を得ることができます。2025年初めの数カ月間に債券市場で流動性の逼迫が見られる中、トレーダーはリアルタイムデータに裏付けられたプライシングやリサーチを基に、より迅速かつ効果的な意思決定を行うことができました。これらのデータの一部は、自然言語処理(NLP)や機械学習といったAI技術を活用して生成されています。これらのテクノロジーは、PDFやメディア報道、さらにはソーシャルメディアなど、従来のシステムでは処理が難しい多様な情報源から散在するデータを横断的に抽出し、整理・集約することが可能です。

個別化が進む未来

電子化が加速する中、セルサイドの業務プロセスの一部は、専門のテクノロジープロバイダーへアウトソースされる動きが広がるとみられます。今後、競争優位に立つのは、顧客ごとの特性だけでなく、それぞれが取引する資産や市場の要件を的確に踏まえた、カスタマイズされたサービスを提供できるプロバイダーです。

電子化の進展スピードは、資産クラスごとだけでなく、組織や部門ごとにも異なります。真に効果を発揮するためには、サードパーティーのプロバイダーがこうした動向を的確に理解し、多様なシステムと円滑に連携できるソリューションを提供することが求められます。

パートナーシップと相互理解、そして方法や業務プロセスに関する透明性の高いコミュニケーションが不可欠です。顧客の業務スタイルや目標に明確に足並みを揃えるプロバイダーこそが、デジタル化が進む将来においてセルサイドを力強く支える存在となるでしょう。

ブルームバーグのセルサイドソリューションの詳細は、こちらをご参照ください。

本稿の内容は、2025年5月にロンドンで開催されたブルームバーグ・セルサイド・リーダーズ・フォーラムにおけるパネルディスカッションおよび特別対談に基づいています。 

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

デモ申し込み