Read the English version published on November 12, 2025.
主要ポイント
- AIに伴う電力需要の増加を背景に、公益事業や再生可能エネルギーへのプライベートエクイティ(PE)投資は過去最高水準を記録、取引総額は1500億ドルを超える見込みです。
- データセンター事業者は、ネットゼロのコミットメントや新たな規制を背景に、クリーンエネルギーへの移行を進めています。
- ブルームバーグ・クリーンエネルギー指数のリターンは今年31%上昇し、ブルームバーグ米国大型株価格リターン指数は15%、ブルームバーグ・マグニフィセント7インデックスは20%のリターンとなっています。
背景
トランプ米大統領は、今年9月に開催された国連総会において世界各国首脳を前にした演説で再びグリーンエネルギーを批判し、再生可能エネルギーを「ジョーク」、気候変動を「でっち上げ」で「世界に仕掛けられた史上最大の詐欺」と呼びました。
トランプ氏は1月の政権発足以来、連邦政府所有地でのプロジェクト終了や風力発電設備の開発中止、許認可の取り消しを試みており、新たな再生可能エネルギー開発の承認取得を難しくしています。さらにトランプ氏は、主要な税制優遇措置を段階的に廃止し、これらのインセンティブへのアクセスを制限する法案の制定も推進しています。
トランプ氏は、太陽光発電や風力発電は不安定かつ高コストと批判し、天然ガスや石炭といった化石燃料からの電力生産の拡大を求めています。 ただし、グリーンエネルギープロジェクトへの批判が続く中でも、AI関連の取り組みに必要なデータセンターによりエネルギー需要は増加しています。米国が引き続き世界最大のデータセンター市場として君臨する中、今後10年間でデータセンターの電力需要は4倍になると見込まれています。
論点
グリーンエネルギープロジェクトを弱体化させようとする試みにもかかわらず、投資家の姿勢に大きな変化はみられません。PEファンドによる電力プロジェクトへの投資は過去最高のペースとなっており、リターンも良好にみえます。
公益事業や再生可能エネルギー関連のPE案件は今年、過去最高を記録した2021年を上回り、1500億ドルを超える見込みです。今年5月にPE大手のブラックストーン・インフラストラクチャーがニューメキシコ州とテキサス州で送配電サービスを手掛けるTXNMエナジーを118億ドルで買収したのに続き、9月にはKKRが9億5000万ドルで仏総合エネルギー企業トタルエナジーズの太陽光発電資産を買収するなど、このモメンタムは続いています。

PEの資金調達活動を見てみると、1-3月(第1四半期)には再生可能エネルギーを投資対象の一つとするファンドが多く立ち上がっていることが示唆されます。カナダの資産運用大手ブルックフィールド・アセット・マネジメントや米KKR、北米のインフラファンド大手ストーンピーク・パートナーズはいずれも、再生可能エネルギー投資を含め200億ドル規模の資金を調達しています。ブルックフィールドのHadley Peer Marshall最高財務責任者(CFO)は、急成長するAIの資金調達には7兆ドル規模の投資が必要だと述べています。
今年に入ってから、クリーンエネルギー投資は大きなリターンをもたらす可能性を提供してきました。ブルームバーグ米国大型株価格リターン指数が15%、ブルームバーグ・マグニフィセント7インデックスが20%上昇する一方で、ブルームバーグ・クリーンエネルギー指数は31%上昇しています。
データセンターからの電力需要が増加する中、事業者は脱炭素化に取り組んでいます。背景にあるのは、ネットゼロのコミットメントや新たな規制です。2024年に締結されたクリーン電力購入契約の43%を大手テック企業が占めており、AIプロジェクトのインフラを提供するデータセンターは、今後もグリーンエネルギーへの移行を進めていくとみられます。
追跡
ブルームバーグのチャート・ライブラリでデータセンターのグリーンエネルギー移行を追跡する方法は以下の通り:
- コマンドラインに「chart library」と入力し、「CHRT – チャート・ライブラリ」を選択
- フィルター欄に「data center」と入力し、「当フレーズと一致」を選択
- 8月18日付けの「Data Center Players Strive For 100% Clean Energy」を選択

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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。