Read the English version published on April 28, 2025.
本稿は、ブルームバーグのコモディティ・インデックス・プロダクトマネジャー、Jim Wiederholdが執筆しました。
2025年、金は過去50年間で最高のパフォーマンスを記録する好調な新年のスタートを切りました。貿易政策を巡る不透明感、ドル安、株式市場の脆弱性、安全資産への需要、そして「価値を保つ手段」としての一般的なニーズ―これらすべてが、金の価格を過去最高水準へと押し上げる要因となっています。金は約3000年にわたる取引の歴史を通じて、安全資産および価値の保存手段としての地位を築いてきました。ブルームバーグのマクロストラテジストSimon Whiteも指摘しているように、歴史的な傾向を踏まえると、金価格が今後も上昇を続ける可能性は十分にあると考えられます。足元の金価格の上昇はリテール投資家によって主導されており、2025年4月24日時点で金地金を裏付け資産とする金ETFの運用資産残高は過去最高の3,480億ドルに達しています。
金が2025年の大半を「買われ過ぎ」の水準で推移し、その後価格の上昇が一服するような場面であれば、より広範なコモディティへのエクスポージャーを求める市場参加者にとって、「ブルームバーグ商品指数(BCOM)」や「ブルームバーグ・エンハンスト・ロール・イールド指数(BERY)」のような、分散された構成のインデックスが検討に値するかもしれません。1975年以降、金スポット価格は過去最高値を約250回更新していますが、、そのたびにBCOMトータルリターン指数は、1四半期後の時点に平均5%高、1年後には平均で14%の上昇を記録しています。図表1は、金の高値更新が約2年の期間に集中し、その後は数年、時には数十年にわたる調整局面を経て、再び上昇する傾向をを示しています。今回の局面では、金は約1年半にわたり継続的に高値を更新してきました。

歴史的に、金はインフレヘッジの手段として位置づけられてきました。 しかし近年では、金のインフレ・ベータは、エネルギーや工業用金属を含む広範なコモディティ全体と比べて、はるかに低くなっています。貴金属に比べ、エネルギーや産業用金属を含むコモディティへのエクスポージャーは、インフレの変化に対してより高い感応度を示します。、コモディティ指数がインフレヘッジとして果たす役割については、最近の当社ブログでも考察しています。図表2は、他の安全資産との比較において、金が今年約10%上昇した日本円およびスイス・フランを上回るパフォーマンスを示していることを示しています。債券市場も、年初来では小幅ながらプラス圏で推移しています。この年初来のパフォーマンスが維持されるならば、2025年は金にとって1970年代以来、最高の年となるでしょう。世界金融危機の際には金は31%上昇し、コロナ禍の初年も25%上昇しましたが、今年金はこれを上回る26%の上昇を記録しています。もっとも、ここまでの激しい上昇を受けて、金価格が一時的に調整局面を迎える可能性もあるでしょう。

金は14日間RSI(相対力指数)で見ると「買われ過ぎ」となっています。また、各国中央銀行がこの1年間に地金の備蓄を進めたのに加え、直近ではリテール投資家が物理的な裏付けがある金ETFを購入したため、過剰保有されている可能性も指摘されています。金に対する買い意欲が高まる一方で、一部の投資家は前四半期の半ば以降、金へのエクスポージャーを引き下げている兆しも見られます。年初に金先物で高水準のロングポジションを築いていた投資家の一部は、最近の金価格の上昇により利益確定に動いた可能性があります。株式市場の不安定さを背景に、これらの熟練した先物投資家は、金からBCOMやBERYに見られるような、より分散化されたコモディティへのエクスポージャーへとシフトしているケースもあるようです。BCOM指数先物に加え、新たに設定されたセクター別先物の取引量も増加しています。BCOMエネルギー指数においては、ローンチから1カ月も経たないうちに初回の取引が成立しました。
金が勢いよく上昇した後、市場参加者が次の動きとして銀に注目するのは珍しいことではなく、そこには明確な理由があります。図表3は、過去10年間における金と銀の四半期ごとの平均パフォーマンスを示しています。金は2025年1~3月期(第1四半期)に19%上昇し、過去10年間で最も好調な四半期パフォーマンスを記録しました。第1四半期は金のパフォーマンスが最も良好となる傾向があり、過去10年間では平均で4%上昇しています。銀は金の上昇にやや遅れて動く傾向があり、第2四半期(4~6月)に最も良好なパフォーマンスを示し、平均で4%の上昇となっています。

将来のパフォーマンスを正確に予測することはできませんが、過去の傾向からは、銀が金の動きに遅れて上昇するケースがあることが示唆されています。金から、より手頃な価格の銀へと資金がシフトすれば、今年次に上昇するコモディティは銀が浮上する可能性があります。金の上昇局面において、マクロヘッジファンドはロングエクスポージャーを保有していたとみられます。これらのファンドは通常、方向性に基づいた戦略で取引を行います。CFTCのデータ(図表4)によれば、2023年第4四半期には金先物のネットポジションは中立でしたが、その後一貫して増加し、2024年末には過去20年間で最も大きなネットロング水準に達しました。2025年に入り、一部の市場参加者が利益確定に動いたとみられ、金のネットロングポジションは大幅に減少しています。これに対して、数年連続で供給不足が続いているにもかかわらず、銀のポジションはそれほど積み上がっていない状況です。

金の代替として銀のような特定のコモディティを選択するのは容易ではありません。というのも、銀の需要の大半が産業・再生可能エネルギー分野に依存しており、市場の動向に左右されやすいためです。また銀は、比較的ボラティリティ(価格変動)が大きい資産であることから、BCOMやBERYといった指数を通じて現在のウェート(約4~5%)程度の控えめな比率で保有することで、リスク調整後リターンの改善が期待できる可能性があります。金が急騰後に調整局面を迎えるリスクを考慮すれば、分散型コモディティ指数を活用した、より幅広くバランスの取れたエクスポージャーは、収益改善の手段となり得ます。このような変動の激しい環境下では、市場参加者が確実に利益を確保できる局面でポジションを縮小する傾向があります。金は2025年の年初にかけて大きく上昇しましたが、より分散されたコモディティエクスポージャーに切り替えることで、市場参加者は“希望の兆し”を見出し、今後の市場の不確実性に備える動きも見られるかもしれません。
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。
免責事項
本資料に含まれるデータおよびその他の情報は、例示を唯一の目的としています。金融商品に関する助言ではなく、「現状有姿」の状態で提供され、法的拘束力を有しない事実情報の提供を構成します。ブルームバーグおよびブルームバーグ・インデックスはブルームバーグ・ファイナンス・エル・ピー(以下「BFLP」)の登録商標およびサービスマークです。本インデックスの運営機関であるブルームバーグ・インデックス・サービシーズ・リミテッド(以下「BISL」)を含むBFLPおよびその関連会社、または、本インデックスのライセンサーは、本インデックスに対するすべての所有権を有します。ブルームバーグ・エル・ピー またはその子会社は、BFLP、BISL、およびその子会社にグローバルマーケティング業務および運用支援・サービス業務を提供しています。特定の特徴、機能、商品およびサービスは、高度な投資判断能力のある機関投資家のみを対象としており、法的に認められている場合にのみ提供されます。ブルームバーグ(以下に定義する)は、本資料を承認もしくは推奨するものではなく、本資料に記載されたいかなる情報の正確性もしくは完全性を保証するものではなく、本資料により得られる結果について明示・黙示を問わず何ら保証するものではなく、かつ、法律によって許される最大の限度で、本資料に関連して起因するいかなる傷害もしくは損害についても一切の責任を負いません。本サービスまたはインデックスのいかなる事項も、ブルームバーグによる金融商品の勧誘、投資助言や推奨(すなわち、「売り」、「買い」、「中立」に関する推奨、または特定利益が関与するその他の取引への参入もしくは非参入に関する推奨)を構成するものではなく、そのように解釈されるべきではありません。本インデックスを通じて提供される情報は、投資判断の根拠となる十分な情報とみなされるべきではありません。本インデックスまたは本資料に記載されるすべての情報は中立的なものであり、特定の個人、法人、または団体の利益を勘案したものではありません。登録商標またはサービスマークがこのリストに記載されていない場合も、当該名称、マーク、またはロゴに対するブルームバーグの知的財産権を放棄するものではありません。本資料では、ブルームバーグはBLP、BFLP、BISLおよび/またはその関連会社を含みます。
BISLは、英国およびウェールズにおいて登録番号08934023で登録され、所在地は英国・ロンドン・クイーン・ヴィクトリア・ストリート3番地、EC4N 4TQです。BISLは、ベンチマーク管理者として金融行動監視機構(FCA)により承認・規制されています。
© 2025 Bloomberg.無断複写・複製・転載を禁じます。