Read the English version published on September 23, 2024.
本稿は、ブルームバーグのサステナブルファイナンス・ソリューション担当グローバルヘッドのPatricia Torresとワールド・ベンチマーキング・アライアンスのインベスター・エンゲージメント戦略リードのNikki Gwilliam-Beeharee氏が執筆しました。
温室効果ガス排出量は世界的に増加の一途をたどっており、いくつかの重大的な転換点に近づいています。2023年、ストックホルム・レジリエンス・センターの調査によると、人類が今後何世代にもわたって発展し繁栄し続けるにあたり、惑星としての地球にとって重要な九要素のうち、六つが上限値を超えたとしています。
しかし、エネルギー移行の面において、いくつかのポジティブな転換点に到達しつつあることも指摘されています。例えば、戦略的なリサーチを提供するブルームバーグNEFによると、2023年の実体経済における設備投資活動は、人類史上初めて化石燃料と低炭素供給の均衡点に到達しました。世界最大規模の電力会社も、2017ー2022年の間に、エネルギー構成における風力および太陽光発電の割合をほぼ倍増させました。 ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)が公表した電力会社ベンチマークによると、大手電力会社による太陽光発電は、国際エネルギー機関(IEA)のネットゼロ成長目標を上回り、2030年までに7倍に成長する見通しとなっています。この急激な規模拡大は、再生可能エネルギーの単価の大幅な低下をもたらし、業界および消費者の双方に絶大な恩恵をもたらしています。
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また、企業の気候変動対策におけるリーダーシップが、ポジティブな業績見通しにつながるという証拠も増えつつあります。例えば、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の最近の調査では、CO2排出原単位の低いS&P500種株価指数構成企業は、2024年4-6月(第2四半期)の1株当たり利益(EPS)成長率見通しがより高くなる傾向があるようです。その結果、金融機関も次第にエネルギー移行について、投資リターンを高めるための重要な機会と捉えるようになり、企業の移行計画に関する情報を求めるようなっています。
気候変動目標をデータで評価
現時点で、ブルームバーグが新たに拡張したネットゼロデータセットによると、世界の8000社を超える企業がさまざまな気候変動目標を設定しています。 これらのデータは、投資家にとって低炭素社会へ向けて取り組んでいる企業を把握するのに役立つはずですが、企業が目標を過大設定しているのではという懸念も残ります。さらに一部の企業が目標を撤回しているという報告は、そうした懸念をより増幅させています。
そのため金融機関は、目標に整合した行動を取っている企業を特定し、現実的に脱炭素化を達成するために、何をなすべきかを特定するためのより良質なデータを求めるようになっています。これは金融機関が、企業の目標、移行計画、およびそれら整合した行動、さらに進行状況に対する説明責任を企業がどのように果たしているのかなどについて、企業を包括的に評価することを意味します。
幸い、規制や自主的な枠組みおよび投資家からの要望を受けて、企業による情報開示は年々改善しており、現在はより多くの関連データが利用可能となっています。これらのデータを評価し、ベンチマークとすることで、投資家は企業のエネルギー移行における将来的な道筋を理解し、主導的企業と後続企業を識別するための強力な基盤を築くことができるのです。例えば、ブルームバーグのデータは、EUタクソノミーの整合性を報告している企業の4社に1社が、2022ー2023年で、低炭素化に向けた設備投資の割合を増加させたことを示しています。 これらの企業の半数以上は、既にグリーン収益の割合を増やしており、エネルギー移行によるビジネス機会を収益化しています。
脱炭素社会への移行に向けた転換期
このような傾向は進歩の兆しと言えますが、ネットゼロ目標の信頼性を向上させるためには、企業による一層の努力が求められています。これは、WBAが、世界のCO2排出量の18%を占め、世界で最も影響力のあるアルミニウム、セメント、鉄鋼の91社のパフォーマンスをリポートした最近の重工業ベンチマークを見ても明らかです。これらの企業のうち、毎年、移行計画の進捗状況を報告することにコミットし、利害関係者からの明確なフィードバックのプロセスを設けている企業はわずか12%で、低炭素シナリオとの整合性を維持している企業は8%に過ぎません。ブルームバーグの「移行信頼性評価ツール」からも同様の結論を導き出されており、気候変動目標を設定し、移行計画に関連する指標を報告している鉄鋼メーカーの割合はわずか21%であることが示されています。
「クライメート・ウィークNYC」と国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)(終了済み)においては、気候変動分野において大きな進展が期待されており、気候変動対策資金に焦点が当てられるでしょう。そして投資家コミュニティーが投資機会を的確に捉え、絶えず変化するリスクを把握するための極めて重要な転換期となることが期待されています。
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。