気候変動関連株、S&P500をアウトパフォーム

Read the English version published on August 26, 2024.

本稿は、ブルームバーグ・インテリジェンスのシニアアナリスト、Andrew John Stevensonが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに掲載されたものです。

5000億ドルを超える、「クライメイト・エコノミー(気候経済)」対策に重点を置く米国企業の株価は、2024年では19.7%上昇し、S&P500種株価指数(17.7%上昇)をアウトパフォームしています。この傾向は災害関連の損失が過去最高となった1-6月(上期)に続き、今後も継続すると見込まれます。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の「準備と修理」テーマグループに属する、環境ソリューションのプロバイダーのWaste Management とコンサルティングおよびエンジニアリングサービスを手掛けるTetra Techなどは、過去5年にわたりS&P500種株価指数を毎年7.5パーセントポイント上回るパフォーマンスを達成しています。

グローバル経済の進化にともなう戦略を
ブルームバーグの気候変動ソリューション

「準備と修理」のリターン、年初来でS&P500を上回る

BIの「準備と修理」テーマグループに属する、Republic ServicesU-HaulW.W. Graingerなどは、5000億ドルを超える、米国のクライメイト・エコノミー関連のさまざまなニーズ対応に重点を置いており、均等加重、ベータニュートラルベースで、年初から8月19日までの期間においてS&P500種株価指数(構成銘柄の時価総額を加重平均し指数化)をアウトパフォームしています。米国に焦点を当てた大型株および中型株82銘柄も、保険料支出、気候インフラ、災害復旧が引き続き高水準で推移したことから、過去5年間でS&P500種株価指数のパフォーマンスを毎年平均7.5パーセントポイント上回りました(22.25%対14.75%)。

BIの「準備と修理」テーマとS&P500種株価指数とのリターン比較

「準備と修理」テーマ、S&P500均等型指数をアウトパフォーム

BIの「準備と修理」テーマグループも、S&P500均等型指数(RSP)に対して良好なパフォーマンスを示しており、ベータ調整後ベースで過去5年間、同指数を毎年10パーセントポイント上回るパフォーマンスを達成しています(22.25%対12.25%)。近年S&P500種株価指数は、時価総額が高い企業の影響を強く受けていることを踏まえると、投資家にとっては均等加重ベースの比較の方がより適切かもしれません。

BIの「準備と修理」テーマとS&P500均等型指数

「準備と修理」テーマグループの構成セクター

BIの「準備と修理」テーマグループは、クライメイト・エコノミーのさまざまな側面に対して財とサービスを提供する8つの異なるセクターの企業で構成されています。 これらの企業は、 Primorisのような公益事業や自治体にメンテナンスとエンジニアリングを提供する産業サービス企業から、James Hardie Industrials Advanced Drainage Systemsなような建築資材企業、Brown & BrownArthur J. Gallagherなどの保険ブローカーまで多岐にわたります。このテーマグループは非常に多様化されているため、平均ベータ値は1を下回る傾向があります。

BIの「準備と修理」グループ(セクター別)

米国の影響、上期の損失過去最高の7000億ドル超

BIの気候変動トラッカーによると、米国の気候変動関連の影響は1カ月移動平均ベースで7月には7300億ドルに達しました。 これらの影響には、保険対象外の損失(建設費インフレ、損害、停電)、保険対象の損失(純保険料支払い額と保険対象の損害)および政府支出(地方および連邦政府による気候変動関連支出)が含まれます。この経済的な逆風は、18年がハリケーンの非常に盛んなシーズンであったことにより、1兆ドル近くに達しましたが、依然として米国経済における重要な富の移転となっており、米実質国内総生産(GDP)の約3%を占めています。

これらの費用には、今年1-6月(上期)に発生した、激しい暴風雨関連の過去最高となる600億ドルの損害、保険料(2050億ドル)、インフレ抑制法(IRA)およびインフラ法を含む政府支出(1880億ドル)、その他の気候変動関連費用が含まれます。

米国気候変動の影響によるコスト(種類別)

クライメイト・エコノミー、米GDPに占める割合が増加

BIの気候トラッカーによれば、気候変動関連の保険料、インフラ、および災害復旧への支出は、今世紀に入ってから7兆2000億ドル増加しており、その半分は過去7年間で発生しています。00年以降の総額は、米GDP増加額の40%を占めており、気候変動は米経済において最も急成長しているセクターの一つとなっています。例えば、米電力大手PG&Eは送電線を地中に埋設するために300億ドルもの支出を行ってきました。

気候変動関連の支出源には、保険対象の気候関連支出(保険損失と保険料)、保険対象外の気候関連支出(保険対象外損失と気候変動が要因の建設インフレ)および政府による気候関連支出(州・地方の気候関連援助、連邦政府の気候関連年間支出、IRAの気候関連支出)が含まれます。

2000年以降の米GDPの伸び(タイプ別)

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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