本稿は、Joe Eastonが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに最初に掲載されました。(2023年6月26日)
株式市場の予測は難しく、今年上期もそれが証明された。人工知能(AI)がけん引する5兆ドル(約717兆円)規模のテクノロジー株の上昇も、銀行危機が起こることも、ほとんど誰も予想していなかった。
上期は、AI向け半導体で大きなシェアを占める米半導体メーカー、エヌビディアがAIを巡る熱狂の申し子となり、米電気自動車(EV)メーカーのテスラは再び投資家の人気者となった。複数の米地銀が破綻し、クレディ・スイス・グループはライバルのUBSグループに買収された。
株式投資家にとっては、厳しかった2022年を経て、今年前半のリターンは堅調に推移している。一方、日本株は世界を驚かせる上昇を見せて際立った。
米アップルやマイクロソフトといった大型テクノロジー企業がS&P500種株価指数の上昇をおおむね一手に担ってきている。こうした企業は強固なバランスシートと持続的な収入がリセッション(景気後退)の危機にひんしている時に安全な避難場所を提供するという認識により後押しされてきた。
大きく変わっていない状況もある。高水準のインフレと金利上昇は依然として投資家心理を支配するテーマであり、新型コロナウイルスのロックダウン(都市封鎖)に伴う低迷からの経済回復に期待がかかる中国は引き続き注目されている。
バークレイズ・プライベート・バンクのチーフ市場ストラテジスト、ジュリアン・ラファーグ氏は今後半年について、株価は狭いレンジで取引されると予想。インタビューに対し、「金利上昇の影響はじわじわ効いてくる問題だ。今後、時間とともに利益を損なうようになるだろう」と語った。そのため、投資家は次の勝ち組をより懸命に探す必要があるとし、エネルギーと銀行セクターに妙味があると指摘した。
上期の株式市場を彩ったテーマの一部を以下にまとめた。
テスラ株2倍に
テスラ株は昨年65%下落したが、今年は6月半ばまでの13営業日続伸も含め、これまでに2倍余りに上昇。相対力指数(RSI)は買われ過ぎの領域にさらに踏み込み、警戒シグナルも出ている。
米ゼネラル・モーターズ(GM)とフォード・モーターが自社の電気自動車をテスラの急速充電器「スーパーチャージャー」ネットワークに適応させる方針を示したことと、テスラのセダン「モデル3」全種が税額控除最高額の対象となったことなどが好材料となった。
銀行危機
銀行セクターについては大西洋の両岸で混乱が見られた。欧州では苦境に陥ったクレディ・スイスを巡り、政府が介入する形で急きょUBSによる買収がまとめられた。米国では複数の地銀が破綻。うちシルバーゲート・キャピタルとシグネチャー・バンクは暗号資産(仮想通貨)関連業務が打撃となった。
日本株の戻り
東証株価指数(TOPIX)は約33年ぶり高値を付け、日本が気を吐いている。コーポレートガバナンス(企業統治)改善の兆しとともに、インフレ容認が広がりつつあることが株価上昇の一因かもしれない。多くの企業の株式が1株当たり純資産を下回って取引されているなど、市場はまだ著しく割安だ。日本株が米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏に支持されているのも不思議ではない。