中国における石炭消費の拡大

Read the English version published on November 02, 2022.

中国、石炭生産量の増加が世界でトップ-排出量削減が阻まれる恐れ

中国は世界最大の石炭消費国ですが、今後もこの傾向は続く見込みです。今年7月時点で世界全体の石炭火力発電所に占める中国の割合は約54%で、さらなる拡大も計画されています。中国が2060年までに目指すネットゼロの目標は、達成が阻まれる恐れがあります。中国の炭鉱開発計画も世界で最も多く、中国で見込まれる排出量増加分は世界のその他各国による合計増加分を上回る可能性があります。

中国が新設石炭発電所の半分を占める

中国は世界最大の石炭消費国としての位置付けが今後も続く見通しです。建設許可が下りている化石燃料発電所による総発電容量は197ギガワットに上り、これは国内で稼働中の総発電容量の18.3%、世界全体の54%に相当します。2021年に稼働を開始した新規石炭火力発電所の発電容量は26.2ギガワットで、世界のその他各国を合わせた新規発電容量を35%上回ります。世界全体の石炭火力発電容量は2021年に2089ギガワットと横ばい推移している上に、石炭火力発電所の閉鎖が加速的に行われている欧州と米国では新規建設は一切計画されていません。EU諸国の大半は2030年までにすべての石炭火力発電所を閉鎖する予定で、例外はポーランド(2036年まで)やドイツ(2038年まで)をはじめとする数カ国のみとなっています。中国における稼働中の石炭火力発電容量は、7月時点で1111ギガワットと、世界全体の51%に相当します。中国は、石炭火力発電所を閉鎖する具体的な期日について一切発表していません。

世界の新規炭鉱開発計画のうち約29%は中国

中国が現在建設中または建設予定の炭鉱数は世界最多で、今後も中国の石炭生産量は増加が見込まれます。米調査団体グローバル・エナジー・モニター(GEM)のデータによれば、2022年1月時点で、中国が開発を予定している新規炭鉱による生産量は5億5900万トンと見積もられ、世界全体の29%を占め、世界最大となります。第2位はオーストラリアで3億2700万トン(シェア17%)、次いでインドが3億2000万トン(シェア16%)、ロシアが3億300万トン(シェア16%)です。一方、2022年1月時点で、世界全体で計画されている新規炭鉱の生産量は19億4000万トンで、1年前から14.6%減少しました。

増加を計画する炭鉱会社上位10社の半分は中国企業

石炭の生産量増強を計画している世界上位10社のうち、5社は中国企業です。中でも中国神華能源は既存の生産量の9.6%に相当する3700万トンの増強を計画しています。その次に中国国内で規模が大きいのは中国中煤能源による拡張計画で、20%増に相当する生産量3100万トンの新規炭鉱開発を提案しています。生産量で世界最大の化石燃料会社、インドのコール・インディアは、提案中の新規探鉱量も世界全体で1億3800万トンと、世界のトップに位置します。

炭鉱開発計画で予想される気候リスクの分析

グローバルなエネルギー・トラッカー予想によれば、中国で計画されている新規炭鉱によって最大5億7600万トンの二酸化炭素が排出される見込みです。これは世界のその他各国による予想排出量の合計を超える量です。しかし、中国の排出量増加率はわずか5%にとどまります。これは、比較対象としている、2019年の中国における二酸化炭素排出量がすでに高いためです。一方、モンゴルが25%、オーストラリアが20%と群を抜いて高く、両国の新規炭鉱による排出に起因する気候リスクは他よりも高いといえます。

本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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