Read the English version published on March 11, 2021.
本稿はブルームバーグ・インテリジェンスのアナリストJames Seyffartが執筆し、ブルームバーグ ターミナルに掲載されたものです。
当面、米国でパッシブ運用は持続的な成長が続くと思われ、株式投資でアクティブ運用に対するリードを広げ、債券投資でもシェアを拡大して、5年以内にはアクティブ運用の市場シェアを追い抜く可能性があります。このトレンドは弱気相場によって加速していますが、そうした流れを食い止めることができているのは債券のアクティブ投資を行う運用会社です。
米国株式市場でパッシブ運用がリードを広げる
11.6兆ドル規模の米国国内株式ファンド市場ではパッシブ運用が市場シェアをリードしていますが、今後もそのリードの拡大が続くとBIではみています。主にS&P500 種株価指数や米国株式市場指数、その他の総合米国株価指数に連動するファンドの成長によって、パッシブ運用は2018年8月頃にアクティブ運用を上回り、今では約54%の市場シェアを占めます。一般に米国大型株は世界で最も効率的な株式市場とみられていることが、パッシブ運用における支配的なシェアにつながっています。
パッシブ運用の資産規模はそれでも6.2兆ドルと、時価総額が約40.4兆ドルの米国株式市場全体の6分の1未満に過ぎません。
出所:ブルームバーグ・インテリジェンス
海外、グローバル株式市場ではアクティブ運用が優勢
この2年間、パッシブ運用で市場シェアを失ったのは海外・グローバル株式ファンドだけでしたが、海外市場の人気が高まればこのトレンドも反転すると思われます。これまでは海外・グローバル株式市場のパフォーマンスは米国株式市場に対して思わしくなかったことから、投資家の関心や資金の流入も限定的で、パフォーマンスが良好な資産規模の大きいアクティブ投資が優勢となっていました。アーク社(ARK)のアクティブ運用上場投資信託(ETF)もこの国外カテゴリーに入り、多額の資金が流入してパッシブ運用の拡大を抑えています。
米国外の株式ファンドでは、アクティブ運用の資産は2.36兆ドル、それに対してパッシブ運用は1.67兆ドルです。資金流入が止まったと仮定しても、1年間のリターンが一律10%と想定すると、アクティブ運用の名目資産におけるリードは、市場の上昇によって直近の6900億ドルから7600億ドルに拡大します。
出所:ブルームバーグ・インテリジェンス
運用実績は債券運用会社に有利
アクティブ運用が依然として支配的な1つの分野は債券市場で、株式よりも複雑で非効率的な債券市場では一般に、アクティブ投資が高いアルファを提供する可能性があるとみられています。債券運用会社のこれまでの実績を見ると、株式運用会社よりもかなり高い比率でインデックスを上回るリターンを記録しており、データでもそうした見方は一部裏付けられています。しかし、スマートベータ・ファンドの人気が高まり、競争力をつけるにつれて、パッシブ運用のシェアは債券市場でも徐々に拡大すると思われます。パッシブ運用のETFやミューチュアルファンドを使ってポートフォリオをアクティブに運用するアドバイザーが増えていることも、パッシブ運用の追い風となるでしょう。
パッシブ運用債券ETFの最大保有者のなかにはアクティブ運用会社も含まれるため、一部の資産は二重にカウントされている可能性があります。
出所:ブルームバーグ・インテリジェンス
米国ファンドでパッシブ運用が台頭
米国ベースのミューチュアルファンドとETFにおいてパッシブ運用の資産額がアクティブ運用の資産額を上回るのは時間の問題といえます。2015年に資産全体の31.6%に相当する4.1兆ドルだったパッシブ運用資産額は、今では約10兆ドルと42.9%を占めるまでに増加しています。残りの57%(23.3兆ドルのファンド資産全体のうち約13.3兆ドル)は、一任勘定のアクティブ運用ファンドです。
2013年以来、パッシブ運用が米国のファンド資産に占める割合は、価格上昇と資金流入によって年間約2.3ポイントずつ増え、一方でアクティブ運用ファンドからは資金流出が拡大しています。このトレンドが続けば、パッシブ運用はその資産規模で5年以内にアクティブ運用を追い抜くでしょう。
出所:ブルームバーグ・インテリジェンス
米国の上場株式ファンドは50%以上がパッシブ運用
米国の上場株式ファンド資産のうち、50.2%はパッシブ運用(国内53.8%、国外41.5%)です。米国内のファンド市場規模は11.6兆ドルで、米国外市場の4兆ドルを3倍近く上回っています。
出所:ブルームバーグ・インテリジェンス
本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。