今すぐ始めるべきLIBOR廃止への備え

Read the English version published on October 31, 2019.

LIBOR廃止に対する
Associated British Ports社の対応

時計の針が午前0時を回り2022年1月1日になると、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)の段階的廃止が始まり、国・地域によってそれぞれ異なるベンチマーク金利に代替されます。この日以降LIBORを参照する契約にどのようなリスクが生じるのか、前例がないために確実なことは何も分かりません。事業会社もこの重要なベンチマーク移行に対応するため周到に準備を進めなければ、多くの混乱が生じるでしょう。LIBORを参照する契約については修正が必要ですが、その難易度は個々の契約が関わる市場によって異なります。

LIBOR切り替え計画を決して先延ばしせず、先手、先手を打って実行していくことが最も堅実な対応方針です。英金融行為規制機構(FCA)のアンドリュー・ベイリー長官がLIBORからの移行に言及したスピーチを行った時から、契約の参照金利をその他のベンチマークに切り替える作業の残り時間を示す時計の針が回り始めました。LIBORを参照する金融契約を多く有する企業は、今後の展開を慎重に見極めていく必要があります。

LIBOR移行への対応には周到な準備が必要です。そのためにはまず時間をかけて移行計画を検討し、発生する可能性があるあらゆるシナリオを十分に検討する必要があります。次に、LIBORからSonia(ポンド翌日物平均金利)など新ベンチマークへの移行について具体的に検討する必要があります。2019年7月、Associated British Ports社は、LIBORにリンクした6500万ポンドの変動利付債の参照金利を、社債権者の合意を得てSoniaに切り替えました。社債の参照金利を切り替えたのはこれが初のケースです。同社は、LIBORからの移行を可及的速やかに行うことが大変重要であることをよく理解していて、十分な時間をかけて計画を立て準備を進めてきました。

Associated British Ports社のグループトレジャラーであるShaun Kennedy氏は次のように述べています。「何も準備ができていないまま2022年を迎えることは避けたいと考えていました。これは多くの金融商品にあてはまることですが、特に残存期間が長いLIBORリンク契約については何もしないことが大きなリスクと考えました。そこで、2017年の夏から1年かけて移行計画を立てるとともに、発生しうるあらゆるシナリオを慎重に検討しました。その後、LIBORから新ベンチマークであるSoniaへの移行実施について取締役会に申請し、承認を得ました。これは決して簡単なプロセスではなく、さまざまな課題に対処するため懸命に取り組みました。そして最後に、社債要項を変更する交渉に入りました。中でも、前決めのLIBORと後決めのSoniaの間で生じるプライシングの差を社債の残存期間にわたって補償するための調整が大変でした。公正かつ透明性が高い形で切り替えを行えば発行体も投資家も満足がいく結果を出すことができることの証しとして、当社の事例を参考にしていただければ幸いです」

「数十億ドルに上る契約を一度に切り替えることは明らかにできません。そこで、時間をかけて慎重にリスクを管理する必要があります。例えば、2018年に当社が初めて切り替えを行ったデリバティブ契約は、LIBOR・Soniaのベーシスリスクをヘッジするカウンターパーティが銀行1行であったために1日で完了しました。しかしそれ以外の金融商品の中には、複雑で数多くの変更が必要となるためより多くの作業を必要とするものもあります」

もう1つの鍵は、関連するすべてのシステムが契約変更に対応できるよう準備を整えることです。「LIBORをベースとしていた当社の財務管理システムを新ベンチマークに対応させるためには、システムの全面的な見直しが必要でした」と、Kennedy氏は付け加えました。実際、システムの管理・更新は大変重要です。多くの財務管理システムはLIBORをベースとしているため、新ベンチマークへの切り替えが必要となります。これは膨大な作業となりますので、システムベンダーと緊密に連携して移行作業を可能な限り円滑なものとする必要があります。

また、新ベンチマークへの切り替えを準備するにあたって、財務担当者は既存の契約を精査する必要があります。LIBORへの参照はすぐには見つけにくい場所に隠れていることがあります。特に財務部門が関与していない契約に注意が必要です。例えば、財務システムに登録さえされていない商業契約が社内に存在しているかもしれません。

また、新ベンチマーク、特に導入を計画しているベンチマークについてはよく理解しておく方がよいでしょう。各国・地域の市場で導入が検討されている新ベンチマークについて時間をかけて調べましょう。基礎的な知識を身につけておくことは必要不可欠です。

そして最も重要なことは、この移行プロセス全体をどのように管理するかについて今から検討を開始することです。LIBORは数年後には廃止されます。LIBORを参照するすべての契約をそれぞれの新ベンチマークに移行させるには時間がかかります。極めて困難な作業になるとは思われますが、手をこまねいて何もせずにいれば後々のリスクは高くなる一方です。もしまだ何もしていないのであれば、今すぐLIBOR移行計画に着手しましょう。