Read the English version published on June 22. 2022.
この分析は、コモディティー・データ・アナリストDennis Tingとグローバル・データ・インターンのGavin Leong、Guang Qi Ong、Liz Chengが執筆しました。
背景
2022年2月24日のロシア・ウクライナ戦争が勃発して以来、各国はウクライナに軍備を提供し、継続的にロシアに経済制裁を課して抗議してきました。しかし天然ガスの不足と共に、深刻な状況に直面する国も出てくる中、液化天然ガス（LNG）は最も議論の的となる経済制裁対象コモディティーの1つとなっています。年初来、ブルームバーグ天然ガスインデックスは136％上昇しています。
Source: Bloomberg Terminal
課題
ロシアからの供給が途絶えた後、欧州の天然ガス価格は急騰し、ドイツは、ロシアが供給問題で衝突をエスカレートさせて、エネルギーを武器にしていると主張しました。昨年、欧州連合の天然ガス需要の約40％はロシアから供給され、うち約3分の1はウクライナ経由で輸送されていました。国境間の輸送経路がが戦争によって制限されたことを受け、ウクライナ経由のロシアからの輸入がさらに減少したため、欧州天然ガス価格の指標となるオランダTTF先物価格は14％上昇しました。
ガスパイプライン「ノルドストリーム2」が稼働せず、今後のロシアからの天然ガス供給に関して不透明感が高まる中、欧州は世界のLNG市場に頼らざるを得ない状況になっています。結果的に、欧州はアジアに向かうLNG貨物船を欧州に引き寄せるため、プレミアムを払う必要性に迫られることになるでしょう。
一方で世界最大のLNG輸入国中国では新型コロナウイルスの感染を防ぐため「ゼロコロナ」政策に固執しており、それがエネルギー消費の重しとなっています。中国の輸入が減っていることで、価格急騰に悩まされてきた南アジアや欧州の天然ガス輸入国も一息つくことができるでしょう。欧州諸国はロシアに依存する天然ガスパイプライン供給の削減を模索しており、今夏は冬場に備えての在庫拡充のため、LNG輸入量を最大限増加する必要に迫られるでしょう。
モルガン・スタンレーによれば、工業消費は8.4％減となり、中国全体での天然ガス需要は前年比約6％減少し、21年9月以来の最低値となりました。中国海洋石油（CNOOC）を含むバイヤー数社は、国内経済見通しの悪化を受けて余剰分を売却しようとしています。
天然ガス不足に苦しむ国がある一方で、ロシア産LNGを安く買うチャンスだと考える国もあります。 グジャラート州石油会社（GSPC）やインドガス公社（GAIL）などインドの企業は、国際社会のひんしゅくを買いつつも、市場の実勢価格を下回る価格でロシアからスポットLNGを買い取りました。これらのインド企業はロシア産燃料が他の供給国より安価である限り、更に購入を増やす可能性があります。欧州において一部の企業は、イタリアのマリオ・ドラギ首相などの首脳陣からの支持もあり、経済制裁に違反せずに、ロシア供給分の購入を継続することにより自信を深めて来ました。欧州の天然ガス輸入会社約20社はロシア産天然ガスをルーブル決済で購入するべく、ガスプロムバンクJSCに口座を開設しました。
追跡
LNGの貿易フローを追跡するには、コマンド行に「commodity flow」と入力し、「LINE – Global Commodity Flows」を選択します。最初のアンバーのボックスをクリックし、「Global LNG」を選択します。クイック入力は「LINE LNG」となっています。
「LINE LNG」はさまざまなLNG関連データセットを1カ所にまとめ、各市場の主要指標をわかりやすく表示しています。これには、グローバルベースでコモディティー輸出入の追跡が可能な「AHOY – Global Commodities Trade Flows」機能基に新たに作成された貿易フローティッカーも含まれます。矢印は目的地到着日を使い、地域間の日次フローをトン数で表示しています。ゼロは前日に到着した貨物が皆無であったことを示します。
Source: Bloomberg Terminal
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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。