アルゴリズム登録や無料リサーチ禁止、 欧州新規制が施行へ

本記事はDick Schumacherが執筆し、ブルームバーグブリーフ・Quick Take の「第2次金融商品市場指令(MiFID II)」に初出掲載されたものです。

2008年の金融危機以降、株式と債券の相場は回復したが、一般市民の信頼はまだ戻っていない。高速取引や説明がつかないボラティリティーの上昇、バンカーの不正が発覚したスキャンダルによって、金融市場は公正さを欠き、少なくとも複雑過ぎるために普通の人間には理解できず、監督当局も監視できないという受け止め方が助長されている。その一方で、多くの政治家や監督当局は、金融危機後の後始末を道半ばと捉えている。これが最も当てはまる地域が欧州であり、欧州連合(EU)の金融・資本市場の包括的な規制、第2次金融商品市場指令(MiFID2)は透明性の要件を課し、利益相反の防止を目指す。だがバンカーらは不当だと反対している。

状況

ブローカーが情報を共有して最良の価格を探り出し、相互に支払うこれまでの手法が、18年1月3日のMiFID2施行で一変する。MiFIDというぎこちない名称を持つEUイニシアチブの下で市場を規制する試みの第2弾であり、業界団体が数年にわたり必死のロビー活動を行った後も、施行ガイダンスの策定作業が続けられている。提案にある通り、商品や債券、エネルギーの伝統的なトレーディング方法、すなわち報告義務のないブローカー間取引が制限され、規制が及ぶオープンなプラットフォームへの幅広い銘柄の取引移行を促す見通しだ。投資家は、お気に入りのアナリストが勤める投資銀行に取引手数料を支払うことで、リサーチ料の代わりとすることができなくなる。また、今では取引高全体の半分強を占める自動取引から市場を守るため、アルゴリズム取引は当局への登録と検査、うまくいかない場合に停止できる「サーキットブレーカー」を備えることが義務付けられる。新たな規制の適用範囲は、ロンドンやフランクフルトで営業する銀行だけでなく、欧州の株式や債券を取引する世界中の機関に及ぶ可能性がある。MiFID2に対応するため、金融機関はデータリポーティング・システムを懸命に構築しており、そうしたシステムの実装費用が最大7億3200万ユーロに上ると当局は見積もっている。MiFID2は技術基準とコンピューターネットワークの準備が間に合わず、16年に開始が延期された。

背景

07年にはMiFID1によって欧州の株式取引ルールが統一され、既存の証券取引所の競争拡大に道が開かれた。新たなルールの下で多くの新興企業が誕生する一方、そうした変化を巡る規制の不確実性やコンプライアンス(法令順守)費用の増加について銀行は不満を述べた。その後金融危機を経て、政策担当者は不透明、あるいは略奪的なトレーディング慣行から消費者を守るために規制をさらに強化する必要があると判断。ブローカーに対する時計の同期や通話記録保存の義務付けといったルールの多くは、万一の場合に事象を迅速に再現するために必要な情報を当局に提供する狙いがある。デリバティブ(金融派生商品)トレーディングの取引所への移行などガイドラインの一部は、米金融規制改革法(ドッド・フランク法)に基づく規制を反映しているが、米国よりも市場にばらつきがあり、流動性も低いEUが採択したルールは、対象となる有価証券の種類が多く、ブローカーの行為の対象範囲も広い。欧州では危機から9年が経過しても金融市場への不信感が残る状況が調査結果で示されている。米国でも同じような捉え方はあるが、トランプ大統領はドッド・フランク法の一部緩和を目指している。

論争

銀行と証券会社は、当局による透明性強化が行き過ぎだと主張する。1500万の金融商品を対象に約300カ所からデータ収集が行われ、作業規模も厄介だ。価格のディスクロージャー(情報開示)を強制すれば、トレーディングが阻害されて市場の流動性低下という危険を生み、銀行の利益を損ないかねないと金融業界団体は言う。ダークプールと呼ばれる私設取引システム経由の株式フローを制限するガイドラインは、役に立たないと批判を浴びている。一連のルールのおかげで、トレーダーらは匿名維持のために新たな抜け道を探さざるを得ず、コストを安く抑えるにはそれが不可欠だと話す。監督当局はこれに対し、より厳しいアプローチが競争促進と同時に独立系リサーチを奨励し、信頼回復と消費者保護の強化にもつながると指摘。過去10年の金融のトラウマを考えれば、規制強化以外に選択肢はなく、犠牲を払う価値があるとの立場だ。