グローバル暗号資産:下半期の展望

Read the English version published on July 11, 2022.

本稿はブルームバーグ・インテリジェンスのコモディティ・ストラテジストMike McGlone およびシニア・マーケット・ストラクチャー・アナリスト  Jamie Douglas Couttsが執筆し、ブルームバーグターミナルに掲載されたものです。契約者様はこちらから全文をご覧いただけます。

暗号資産(仮想通貨)に共通するテーマは、弱気筋も受け入れつつ、より良い金融システムを構築し、2000ー02年のインターネットバブル崩壊時と同様、特に制度面と長期的視点に重点を置くことにあります。行きすぎた価格上昇後の調整は1-6月(上期)にすべてのリスク資産の共通点とも言え、中でも高ベータで投機性の高い暗号資産は下落余地が最も大きかったといえます。しかし、 ブルームバーグ・ギャラクシー・クリプト指数(BGCI)が18年の下落局面と同様、底値に近づき、ビットコイン(BTC)価格の対50週、および100週移動平均線でのディスカウントもほぼ過去の基本水準であることから、ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)では下期にリスクリターン特性に敏感な機動的投機家に有利に働くだろうとみています。

ビットコインの現在価格の2万ドルは、将来振り返ってみると、2011年の2ドル、2015年の200ドル、2018年の3000ドルのような底値とみなされるでしょう。ビットコインとイーサ(イーサリアム)のリスク指標は対株式で低下、将来的な米国内規制(ルミス・ギリブランド両上院議員の暗号資産計画)の本流も暗号資産の成熟化へと向かっています。

弱気市場の受容:ドル連動暗号通貨の普及と底打ち

暗号資産は20ー21年には過剰な投機の先行指標となりましたが、2022年の大きな平均回帰が一段落すれば、再び大半のリスク資産をアウトパフォームする態勢が整うとみられます。暗号資産の時価総額は上期初めの時点で1兆ドル(約139兆円)をわずかに下回る規模でしたが、その後世界の株式市場で失われた時価総額が約25兆ドルだったことと比べるとはるかに少額です。

暗号資産はリスクアセットの急落全体で誤差のレベル

BIのデータベースでみると、対GDP比による米国株式の時価総額の下落幅が1970年以来最大となっている中で、暗号資産の時価総額は誤差の規模にとどまり、その上昇基調が今後も続く可能性は高いでしょう。暗号資産の時価総額は7月初めの時点で世界の株式時価総額の約1%に相当しますが、これはピーク時の約2%からは低下したものの、0.1%近辺だった2017年との比較では約10倍上昇したことになります。BIのチャートは、対米GDP比のウィルシャー5000トータル・マーケット・インデックスの12カ月変化率が21年に過去最高水準に急騰し、その後上期には世界金融危機以来の低水準まで急落したことを示しています。

さらに注目すべきは、暗号資産がリスク資産の舞台に登場したのがごく最近にすぎないということです。世界的なデジタル化の中、ビットコインをグローバル担保として採用する流れや、ドル連動暗号通貨(いわゆる暗号ドル、ステーブルコイン)の普及など今後のトレンドについては、BIではまだ初期の段階にあるとみています。

2022年の株式資産対GDP比率の大幅な低下

暗号ドルの普及を阻むもの

過去の例からもBGCI指数が約80%下落すると下値余地は限定的で、暗号ドルの普及度は増すと思われます。BIのチャートは、暗号資産の最も一貫した傾向、つまり「ドルのトークン化」の進行を示しています。ビットコインのデータ情報サービスを提供するコインダンスによると、コインマーケットキャップが取り扱うドルに連動するステーブルコインの時価総額の暗号資産全体に占める比率は、7月5日に20%近くで過去最高を記録しました。アルゴリズム型ステーブルコインであるテラUSD(UST)の崩壊は、行き過ぎた上昇の調整が必要となった暗号ドルの最たる例であり、BGCIにおける直近の約10%下落のきっかけとなった可能性が高いです。

18年にBGCIが90%近く下落した後に底打ちしたことは、今回の弱気相場も同様に続落する可能性を示していますが、4年前は市場全体に占める暗号ドルの比率はわずか1%に過ぎませんでした。

暗号ドルが示すテクノロジーの定着

ビットコイン、イーサリアム、暗号ドル

コインマーケットキャップが取り扱う暗号資産トップ4銘柄のうち7月5日時点で2銘柄がドルに連動するステーブルコインだったことは、弱気市場を示すと同時に、暗号ドルが台頭を続ける可能性を示唆しています。テザーとUSDコインは代表的なステーブルコインであり、コインマーケットキャップが取り扱う約1500億ドルのドル連動トークン(暗号ドル)の半分以上を占めています。これらが特にイーサリアムを通じて実現したものであることは、同テクノロジーの重要性を示しています。先物がリスクを軽減し、資産エクスポージャーを得る良い手段であるのと同様に、BIではすべての資産のトークン化を阻むものほぼないとみています。

22年の暗号資産の弱気相場は、世界株式市場の時価総額が約25兆ドル消失したことと比較すると誤差と言えるものですが、暗号資産はベータが最も高いため、下落幅は最も大きくなりました。BIではビットコイン、イーサリアム、暗号ドルは引き続きアウトパフォームすると予想しています。

暗号ドルの長期的トレンドードル連動資産の優位性

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本稿は英文で発行された記事を翻訳したものです。英語の原文と翻訳内容に相違がある場合には原文が優先します。

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